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第175話

Author: 藤崎 美咲
彼女がしっかり立ったのを確認すると、ロボットは腕を引っ込め、再び彼女の背後に静かに立った。

その光景を目にした人たちは少なくなく、思わず息を呑んだ。

感情のないガラスのようなロボットの瞳の奥に、星乃は自分の顔を見た。その瞬間、まるであの年の、自分の惨めな姿を見たような気がした。

時が流れても、あの頃の星乃と今の星乃は、たいして変わっていない気がした。

背後には誰もいない。大切にしていたものを失ったまま。

同じように戸惑い、同じように傷ついている。

星乃は指先をきつく握りしめ、呼吸が浅くなる。

そのとき、遥生が舞台裏から彼女を見つめていた。記者たちに囲まれて身動きが取れずにいる星乃を見て、黙っていられず、すぐに足を踏み出した。

だが、彼が動き出すより先に、星乃は一歩前へ出た。記者の方へ歩み寄り、静かで冷たい声が会場に響いた。

「『ノーコメント』というのはね、あなたのしているつまらない私的な質問に、答える義務がないという意味です。ここはUMEの新製品発表会です。他人のプライベートを探る場ではありません。もし本当に聞くことがないなら、その時間を他の方に譲ってください」

落ち着いた声だったが、その言葉ははっきりと響き渡った。

数年前の星乃と、今の彼女は同じように見えて、まったく違う。

あの頃の彼女には支えがなく、今の彼女はもう誰かに頼る必要もない。

会場が一瞬、静まり返った。

やがて観客席のどこかから声が上がる。「いいぞ、よく言った!」

その声をきっかけに、次々と彼女を擁護する声が飛び交った。

「彼女はUMEの技術者だよ? 自分の仕事をちゃんとすればいいんだ。そんなくだらない質問、答える必要ないだろ」

「他人の恋愛事情を知りたいなら、記者じゃなくて仲人にでもなれば?」

「うちの祖母は九十超えてるけど、あんたほど口が軽くないわ。人の恋愛なんて放っときなさいよ」

「……」

さっき質問していた記者は、これほど多くの人が星乃の味方をするとは思ってもみなかったのか、顔を赤らめながらも冷静を装って言った。「私が聞いてるんじゃなくて、みんなが知りたいことを代わりに聞いてるんです」

「いやいや、私は別に知りたくないね。UMEの製品の方がよっぽど気になる」

「『みんな』とか言わないでよ。人の代表みたいに。彼女はさっき『恋愛なんてしてない』って言って
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