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第9話

Penulis: 匿名
「危ない!」

その瞬間、祐介は愛奈のそばに飛びつき、手に持っていたたいまつを燃やしてハイエナを追い払った。

若葉は、ただ呆然と立ち尽くしていた。こんなにも残酷で血なまぐさい光景は初めてで、恐怖で頭が真っ白になってしまったのだ。

狙っていた獲物を食べ損ねたハイエナは、なんと向きを変え、怪我をしていた若葉に狙いを定めた。

若葉の手のひらの血の匂いがハイエナを刺激したのだ。そいつは大きな口を開け、若葉に飛びかかってきた。

反応する間もなく、ふくらはぎに肉が引き裂かれるような激痛が走った。若葉が下を見ると、ハイエナがそのふくらはぎに食らいつき、力いっぱい肉を食いちぎっていたのだ。

「きゃああああっ!!!」

悲痛な叫び声があたりに響き渡った。若葉は痛みで意識を失いかけ、血が流れ続ける傷口が、さらに多くのハイエナを呼び寄せてしまった。遠くから、ハイエナたちがゆっくりと近づいてくるのが見えた。

「祐介……助けて……」

若葉は絶望しながら狂った獣を叩いたが、ふと振り返ると、祐介が気絶した愛奈を支え、その場を離れていくところだった。

その瞬間、若葉の心は完全に冷え切ってしまった。

激しい痛みが若葉の全身を襲い、大量の出血で顔は血の気を失っていた。

祐介は愛奈を安全な場所に降ろすと、ようやく目を赤くして引き返してきた。

パン!パン!

誰かがハイエナに数発の銃弾を撃ち込んだ。血に飢え狂っていたハイエナは、その場に倒れ込んだ。その銃声に驚き、周りにいた獣たちも逃げていった。

この時、若葉はすでに虫の息で、全身が血まみれになっていた。

「早く!早く病院に運べ!」

全身を噛まれて傷だらけになった若葉は、最寄りの病院に救急搬送された。しかし、出血がひどく、医者はみんなに適合する血液がないか尋ねた。

「血液バンクのAB型の在庫が足りません。この中にAB型の方はいらっしゃいますか?」

人混みの中から誰かが言った。「平野さん、確かO型だったよね?

誰にでも輸血できる血液型じゃない?」

献血と聞いて、愛奈は顔を真っ青にし、思わず祐介の後ろに隠れた。

「やっぱり、ダメ……

わ、私、痛いのはちょっと……」

医者は愛奈の様子を見て、焦りを隠せないようだった。

「患者さんは深刻な貧血状態で、緊急を要します。今すぐ輸血しないと命に関わります!」

医者が言い終わる前に、祐介は愛奈の前に立ちはだかった。

「彼女が痛いのは嫌だって言ってるのが聞こえないのか?」

そして、祐介は振り返って愛菜を慰めるように言った。「大丈夫だよ。君が嫌なら、誰も無理強いはできない」

医者は、人の命をここまで軽んじる人間を初めて見たようで、呆れて首を振りながら手術室へ入っていった。

結局、同行者の中にAB型の人がいてくれたおかげで、若葉はなんとか一命をとりとめた。

若葉は、長い夢を見ていた。夢の中で9年前に戻っていた。クラスで一番ひどくいじめられていた、あの頃に。

それは、初めて祐介と出会った日でもあった。

当時の若葉は病気のため、ステロイド系の薬を服用していた。その副作用でひどく太ってむくんでしまい、クラスでずっといじめられていた。

「大丈夫か?」

絶望の淵にいた若葉に手を差し伸べてくれたのは、あの少年だけだった。

「俺は佐藤祐介。君は?」

あの夏の日、若葉は祐介という男の子に、一目で心を奪われたのだ。

「いつかきっと、祐介は私に振り向いてくれる」

しかし、思い出の中のあの少年は、背を向け、どんどん遠くへ行ってしまう。

若葉は涙を浮かべたまま、ぼんやりとした意識の中で目を覚ました。うっすらと目を開けると、そこには二人が絡み合う姿があった。

「君が他の男と結婚するなんて、俺が許さない」

祐介は目を赤くしながら、愛奈を激しく、情熱的に抱きしめてキスをしていた。

「俺が許さない……」

若葉はしばらくその光景を見ていたが、静かに目を閉じた。ベッドに横たわる彼女の目尻から、一筋の涙がこぼれ落ちたことに、誰も気づかなかった。
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