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第56話

Author: 月下
「文月、それなら……」

蒼介は、不意に言葉を切った。「結婚したら、新婚旅行に行かないか?二人きりで。その時に、子供を作ってくれれば、うちの家族も、きっと君を受け入れてくれるはずだ!」

文月は二歩後ろへ下がった。「この三年間は、子供を作るつもりはないわ」

蒼介は言った。「わかった。君が産みたくないなら、養子を迎えて、君に育ててもらうのはどうだ?君のためなら、俺は一生子供がいなくてもいい」

本当に、感動的な話ね。

自分はただ、この三年間は子供が欲しくないと言っただけなのに、蒼介の口にかかれば、養子を迎えて、一生子供はいらない、ということになる。

冗談じゃないわ。

これは、萌々花の子を、自分に育てさせたいだけでしょ?

そもそも、萌々花が、本当に許すのかしら?

あの女は、なんて陰湿なの。兄に自分を轢き殺させようとして、もう少しで死ぬところだった。絶対に、自分が生きて深津夫人になるのを許すはずがないわ。

「蒼介、その話はもうやめにして。

私に行ってほしくないなら、家に帰るわ」

文月は、ひとまず諦めた。

彼女は、蒼介が彼女のスマホにGPSでも仕掛けているのではないかと疑った。さもなければ、彼が、彼女がここを離れようとしていることを、どうしてこんなに早く知ることができたのだろう。

いや、彼は、きっと準備をしていたのだ。

「文月、まだ俺に怒っているなら、この頬を二、三発殴ってくれないか?君の気が済むなら、何でもするから」

こういう時の蒼介は、実におとなしい。

文月は唇を引き結んだ。「あなたに、怒ったことなんて一度もないわ」

「じゃあ、どうして……」

文月は、不意に眉を上げた。「蒼介、あなたが私に約束したこと、一つ、覚えている?

将来、私たちが結婚する時には、あなた自身がジュエリーをデザインして、私の首にかけてくれる、そう言ったわね。約束のジュエリーは、どうなったのかしら?」

蒼介は、言葉に詰まった。

彼は、ようやく思い出したかのようだった。

文月は、蒼介のことをよく理解していた。

彼は、デザインにおいて、並外れた才能を持っている。

特に、ジュエリーのデザインに関しては。

残念ながら、深津家が彼にそんな機会を与えるはずもない。蒼介の心の奥底にある情熱を、知っているのは文月だけだった。

そして、彼が一度、ジュエリーのデザインに没頭す
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