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第7話

Author: ありもも
「患者は流産、大出血です。緊急輸血が必要です」

「血液バンクにA型の血液がありません!」

「このままでは危険です!」

ルビーは大量出血で意識が朦朧としていた。自分が誰かに運ばれ、救急隊員の声が断続的に耳に入ってくるのを感じるだけだった。

「俺の血を!俺はA型です」

澄んだ声がルビーの耳に飛び込んできた。

ルビーは最後の力を振り絞って目を開け、声の主をはっきりと見た。見覚えはあったが、すぐには名前を思い出せなかった。

思い出した......

ルビーが「ありがとう」と言おうとした瞬間、全身の力が抜け、気を失った。

次に目覚めたのは翌日だった。

ルビーは点滴をしばらく見つめてから、徐々に体温を取り戻した。体の中から何かがごっそり抜き取られたような感覚がはっきりとあった。

二人の看護師が入ってきて薬を交換した。彼女たちはルビーが目を覚ましていることに気づかず、楽しそうにゴシップを話していた。

「知ってる?上の階のVIP病室、月島社長が全部貸し切ってるんだって」

「聞いたわよ。女の子、旅行ブロガーで、すごく美人だけど、離婚歴があるらしいね」

「それが何よ。月島社長があの子に夢中なんだから。ちょっと情緒不安定になって自殺配信しただけで、手首にほんの小さな傷をつけただけで、月島社長が血相変えて駆けつけたっていうじゃない」

「じゃあ、ネットでバズってたあの動画、月島社長だったの?」

「そうだよ......彼がライブ配信の現場に駆けつけて、あの子を抱きしめたんだって。イケメンと美女で、まるで恋愛ドラマの撮影みたいだったって」

そう言うと、その看護師は声を潜めた。

「内部情報だけど、あの子、もうお腹に赤ちゃんがいるらしいよ」

もう一人の看護師が驚きの声を上げた。「どうりで今朝、月島社長が十数種類の朝食を買ってきて、彼女に選ばせてたわけだ......」

......

ルビーは自分の下腹部に手を当てた。そこにあったはずの心臓の鼓動はもうなかった。

赤ちゃんは、自分と同じように、実の父親に歓迎されていないと知って、去っていったのだろうか......

「あら、どうして泣いてるの?」

看護師がようやくルビーが目覚めたことに気づいた。彼女はルビーの目尻の涙を拭い、慰めた。

「悲しまないで。まだ若いんだから、今は体を休めることが一番よ。ご家族に連絡しましょうか?」

ルビーはゆっくりと首を振り、ただ尋ねた。「昨日、私に輸血してくれた人は?」

「ああ、彼ね。うちの病院の研修医よ。昨日あなたを助けるために、無理やり800ミリリットルも採血したの。ここ数日は家で寝てるんじゃないかしら」

もう一人の看護師も同調した。「人を助けるためにあんなに無茶する人、初めて見たわ。本当に命知らずの青二才ね!退院したら、絶対に感謝状を贈ってあげなさいよ」

ルビーが退院したのは、九日後のことだった。

この数日間、彼女は様々な人の口から、上の階のVIP病室にいる月島社長とその恋人の恋物語を耳にし続けていた。

遥斗に会うのを避けるため、ルビーは入院中、できるだけ病室から出なかった。

しかし、退院手続きだけは自分で行わなければならなかった。

「月島ルビーさん!」

「はい......」

名前を呼ばれ、ルビーはすぐに受付へ会計に向かった。

廊下で、晶と一緒にエレベーターを待っていた遥斗は、一瞬、足を止めた。

「今、ルビーの名前が聞こえたような気がしたんだが」

「まさか......」晶は彼の肩を叩いた。「ここは病院よ。ルビーは大学にいるんだから、入院なんてするわけないじゃない」

「それもそうだな」遥斗はエレベーターに乗り込んだ。

エレベーターのドアが閉まった瞬間、会計を終えたルビーが薬の袋を提げて出てきた。

エレベーターがちょうど上がっていったのを見て、彼女は待つのをやめ、階段の方へ向かった。

弁護士が階下で彼女を待っていた。手には、発行されたばかりの離婚届受理証明書と新しい身分証明書があった。

ルビーはそれを受け取ると、弁護士に数百円の宅配料をLINEで送金した。

「残りの資料は、彼に郵送してください」

彼女と遥斗の子供はいなくなった。

今、五十嵐ルビーの名に戻って、遥斗とはもう何の繋がりもない。

ルビーはただ、解放されたような気持ちだった。

アフリカ支援のリーダーは、ルビーが国内で体調を整えてから来ることを許可してくれたが、ルビーはそれを聞き入れなかった。

「私は若いし、体は丈夫です。チームの足を引っ張るわけにはいきません」

だが、出発の日、同行する仲間たちは皆、彼女を気遣い、荷物をすべて持ってくれ、さらにはお金を払って優先搭乗手続きまでしてくれた。

「これは現地のSIMカードだ。飛行機が着いたら、この番号で連絡を取り合おう」

リーダーがルビーにSIMカードを渡しながら、両方のカードを残しておいてもいいと注意しようとしたが、ルビーはすでに元のSIMカードをゴミ箱に捨てていた。

「君って子は、国内の家族や友達とは連絡取らないのかい?」

ルビーは首を横に振り、振り返って窓の外の帝都の街並みを見つめた。

月島遥斗、もう二度と会うことはない。

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