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第2話 外出

last update Last Updated: 2025-08-20 10:19:02

昼食後、専務は社長と挨拶回りに向かわれた。

私は、お留守番で良いようだ。

──やった〜!

と内心喜んでいた。

社長とご一緒なら時間がかかるだろうし、帰社されるまでは平穏な時間を過ごせる。

秘書室では、専務の話題で持ちきりだ。

当然私にだけは、専務の個人情報が渡された。

知らない他の人は、好き勝手に話しているようだ。

「寧音ちゃん、ホントにラッキーだよね」と嫌味なのか本心なのか? 分かりづらい言葉をかけられる。

「ラッキーなんですかね?」と言うと、

「何言ってるのよ! ラッキー以外の何物でも無いわよ、モノにするのよ!」

とおっしゃるのは、常務の秘書の原田さん。

「要らないなら、私が……」と笑っておられる。

原田さんは、今年31歳の誕生日を迎えられたばかりだ。

結婚はしたいが、焦っている訳ではないといつもおっしゃる。なぜなら、私は知っている。

既婚者の方と社内不倫をしているからだ。

専務の年齢は、公開されているので、口にしても良いが、私より5歳年上の29歳、今年30歳になられるようだ。

──お若い! しかも、もっとお若く見える

だから皆んな驚いている。

──どうして? そんなにお若いのに専務?

もちろん社外からの引き抜きなので、何か秀でることが、あるのかもしれない。

しかし、29歳だなんて、こんなに若い役員への大抜擢は、聞いたことがない。

この隙間時間に、専務の履歴書を見て勉強する。

私は、数ヶ月前、社長から直々に、

「五十嵐さん! 次年度は、新しい専務の秘書をお願い出来ますか?」と言われたのだ。

総務部長から言われるのなら分かるが、社長から直々になんて、とても驚いた。

「はい、分かりました! よろしくお願い致します」

と私は、その新しい専務がどなたかなど、知らされないまま、当日を迎えたのだ。

ただ、『その方は、社長の抜擢により社外から来られる!』とだけ伺っていて、詳細は今日来られてから……ということだった。

セキュリティが厚いので、よほどの方だと思ったのだ。

案の定、履歴書を見て驚いた!

──!! 三橋商事から来られたんだ

どちらも一部上場企業、トップクラス! この若さでどういうこと?

──!!

そして私は、三橋商事を検索して驚愕したのだ。

「え?」

三橋商事の社長は、櫻木 良一さくらぎ りょういち氏と書かれている。

そして、長男の櫻木 健斗さくらぎ けんと氏32歳が去年から専務になっている。

──と言うことは、ウチの専務櫻木 修斗さくらぎ しゅうとさんは次男なのかしら? でも、どうして四住商事に?

これだけでは、そこまでしか分からなかった。

──にしても、櫻木家って凄いなあ、兄弟で若くして専務。そりゃあ、イケメンなだけでなく、お家柄も素晴らしい。このことがイケメン専務に、熱い視線を送っている女性陣たちに知り渡れば、もっと大変なことになるな

当然、秘書という仕事は、口外禁止なことが多い。

ベラベラお話し好きな人には向かない。

もちろん秘書同士共有すべき案件も有るが、決して、口外してはならないことの方が多いと思う。

口が堅くなければ無理な気がする。

専務が戻られるまでに、専務のスケジュール管理表をまとめる。

去年常務の分をさせていただいたので、同じような感じで進められる。

すると、社長秘書の林さんが来られた。

「寧音ちゃん、見た?」と……履歴書のことだ。

「はい」

林さんにも知らされたようだ。

さすがトップ秘書だ。

林さんは、40歳。綺麗にされているので、お若く見えるがベテラン秘書さんだ。

「と言うわけだから、三橋商事のことは、こちらから専務には言わない方が良さそうね」と、

「はい! 分かりました」

「あっ、特に原田さんには言わないでね」とおっしゃった。

──え? なぜ? 獲物だと分かれば狙う? 林さん、もしかして原田さんの不倫のことをご存知?

と思ったが、当然こちらも別の意味で口外禁止案件だから言えない。

役員秘書がまさかの不倫だなんて……

実は私は、去年たまたま目撃してしまったのだ。

でも、絶対に言ってはいけない! と思っていたから誰にも言わずに、ずっと黙っている。

──林さんがご存知なら、もしや他にもご存知の方がいらっしゃる? え? もしかして私だけと思っていたのに、皆さんご存知なの?

それすらも確認出来ず、モヤモヤしながら、

「はい……」とだけ言った。

すると、

「もしかして、寧音ちゃん知ってるの?」と言われた。なんと答えて良いものだろう……と悩んでいると、

「見ちゃった? 原田と···とのこと」

とおっしゃったので、

──やっぱり!

と思った。

「あ、はい……」と言うと、

「そっか。なら私には話して大丈夫よ! もっとも秘書課は皆んな知ってるようだけどね」とおっしゃった。

「え?」

「ったく、どこでもイチャイチャしてるからバレるのよね」とおっしゃった。

──そうなの? どこでもイチャイチャ? 絶対ダメじゃない!

確かに私が目撃してしまったのも、去年秘書室でのことだ。

帰ろうとして、急に雨が降って来たので、折りたたみの傘を取りに秘書室へ戻ると、暗がりで抱き合ってキスしている男女を目撃してしまったのだ。

「!!」

それが、原田さんと今年本部長から常務に昇進された木山常務だ。

──嘘でしょう!

しばらく隠れていたが、早く帰りたかったし、こちらが気を遣って隠れながら傘を取ったのだ。だってそのまま待ってたら、エスカレートして····そうだったから……

──辞めてよね! こんな所で……

なので、原田さんは自ら率先して常務の秘書を申し出たのだ。

常務は、元々仕事が出来るので、本部長から昇進されたのだが、半分は原田さんの支えがあったからでは? とさえ思ってしまった。

──社長や副社長他の役員は、知らないのかなあ?

仕事に支障が出なければ良いと思って黙っているのは秘書たちだ。

しかしコレは、れっきとした不倫だ。ダメだ!

常務のご家庭のことは知らないが、明るみに出る前に離婚して再婚するなり、なんとかして欲しいものだ。

なので、それ以来私は原田さんと常務を見る目が変わってしまった。

常務を見る度に、

──この野朗! 若い女と……

と、つい鋭い目で見てしまう。原田さんに対しても、

──あんなオジさん相手にしなくても……

と、いう目で見てしまう。

しかし、その50代の常務より上の立場に、社外から来たお若い専務が……

これは、社長の策略? と言うことは、社長もご存知なのでは?

と、色々勝手に思ってしまう。

夕方、社長と専務が戻られた。

「お帰りなさいませ」

「ただいま、はあ〜〜」

とだけ言って、黙ってソファーに身を任せている専務。

「お疲れ様でした」

「うん……」

なんだか疲れているのか、機嫌が悪いようだ。

──触らぬ神に祟りなし……

黙って又お茶を淹れた。

「どうぞ」と、おしぼりと共に置くと、

「おお、サンキュー!」と言って、手を拭いてから、

湯呑みに手をやり、お茶を飲んでいる。

「はあ〜美味い!」

ニッコリして黙って会釈した。

「さっきの会社、お茶がクソ不味かった〜!」と言った。

──!! なんてことを言うんだ。出してもらっているのに……

同じ秘書の立場からは、なんとも言えないので、黙って聞いていた。

「あんなお茶飲めないわ。会社の質が問われるな」と言った。

──我が社の役員は、不貞を犯しておりますが……

「はあ〜やっぱ寧音ちゃんのお茶は美味いな! まだお茶しか知らないけど……」と言われた。

──どういう意味だ? そりゃあそうだ、まだお茶しか淹れていないのだもの

「あっ、コーヒーの方が良かったですか?」と慌てて聞くと、

「あ、いや今度で良い」と言われた。

「かしこまりました」

いつもなら役員には、お茶か珈琲か? ホットかアイスか? と聞いてから淹れるのだが、なんだか機嫌が悪そうだったから、怖くて聞けなかった。

「ハア〜やっぱ現場の方が楽しいのにな」と、ポロッとおっしゃった。

──ん? 今度は落ち込んでいる?

よほど現場がお好きなようだ。

なら、どうして役員を引き受けたのだろう?

やはり何か事情があるのかもしれない……

「なあ!」

「はい」

「寧音ちゃんも、『専務イケメンよね〜? お嫁さんにして〜!』とか言うタイプ?」と聞かれた。

──え? え? いったい何があったんだ?

『いえ』とも言いづらいな……

「私は、秘書というお仕事を全うするだけです」

と言うと、

「ハハハハッ! そりゃそうだ! 模範回答だな」

と笑われた。

──何が可笑しいんだ? 今なぜ笑われた?

正論だよね?

「寧音ちゃんは、変わってるな」と言われた。

──いやいや、貴方ほど変わってませんけど?

すると、急にソファーから立ち上がり、私に近づいて来て……至近距離で、ジッと私の顔を覗き込んで見つめている。

そして、

「ドキッとした?」と笑いながら言った。

「……」

──なんだ???

私がキョトンとしているので……

「え? 寧音ちゃん感情ある?」と失礼なことを言った。

「有ります!」

「可笑しいな、大抵の女は、こうするだけで、目を閉じてしまうんだけどな」と言った。

──どんな女と付き合って来たんだ!

つ〜か、ココは会社だ! しかも役員室!

「左様でございますか」と言うと、

「寧音ちゃん、面白れ〜!」と又笑っている。

──何も面白くないわ!

あんたの恋愛遍歴の方が気になるわ

と思っていたが、顔には出してはいけないので、無表情で居た。

すると、

「ねえ、寧音ちゃん! 彼氏居るの?」と聞かれた。

「え?」

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