INICIAR SESIÓN私、渡辺杏梨(わたなべ あんり)と桐谷旭(きりや あさひ)は、いつもバチバチに張り合っているカップルとして有名だった。 幼い頃から、私たちは何事においても競い合ってきた。 成績トップの座、奨学金、そしてディベート大会の優勝トロフィー。 恋愛でさえも、まるで勝敗を決めるゲームのようだった。 私はずっと、それが私たちなりの不器用な愛し方なのだと思っていた。 旭が私を打ち負かす「最も簡単な方法」を見つけるまでは。 彼はただ、自分のそばに別の女の子がいるのを私に見せつけるだけでよかった。 それだけで私は激しく動揺し、自ら歩み寄ってこう言ってしまうのだ。 「旭、私の負けだわ」 以前は、この手が面白いように効いた。 旭が友達との飲み会で、私の親友の肩を抱き寄せるまでは。 小林梓(こばやし あずさ)は旭のジャケットを羽織り、彼のすぐ隣に寄り添い、甘えるように愛らしく笑っていた。 周りの誰かが囃し立てるように聞いた。 「旭さん、この子誰っすか」 旭は気怠げに視線を上げ、私を見た。 その口調は面倒くさそうで、ひどく意地が悪かった。 「新しい彼女」 カラオケボックスは一瞬にして静まり返った。 誰もが、私がどんな反応をするのかと息を潜めて待っていた。 けれど今回、私は数秒間じっと旭を見つめただけだった。 そして、ふっと笑みをこぼす。 「お似合いね。末長くお幸せに」 愛という名のもとに行われたこの勝負を、私は長く続けすぎた。 もう、このゲームは終わりにする。 旭のことも、もういらない。
Ver más人混みの中にいると、自分がとてもちっぽけであると同時に、どこまでも自由なのだと実感できた。ある日、オフィスに他都市の取引先がやって来た。会議室のドアが開いた時、私は旭の姿を目にした。旭は黒いスーツに身を包み、以前よりずっと大人びて、そしてさらに寡黙になっていた。私を見た瞬間、彼は明らかに体を強張らせたが、すぐに視線を伏せ、ごく普通のビジネス相手のように名刺を差し出してきた。「渡辺さん、よろしくお願いいたします」私は名刺を受け取った。「よろしくお願いいたします、桐谷さん」会議はとてもスムーズに進んだ。彼の仕事における能力は健在だったが、終始感情を押し殺しており、私を特別に気にかける様子もなく、余計な私語も一切口にしなかった。会議が終わった後、旭はエレベーターホールで私を呼び止めた。「杏梨」振り返ると、旭は私から数歩離れた場所に立っていた。ようやく適切な距離感というものを学んだかのようだった。「明日、帰るよ」私は頷いた。「今後の案件も、順調に進むといいですね」旭はふっと微かに笑った。「……今は、うまくやってるみたいだな」私は答えた。「ええ、おかげさまで」旭の目の奥が少しだけ潤んでいたが、それ以上近づいてくることはなかった。「それなら、よかった」エレベーターが到着し、私は中へと乗り込んだ。ドアが閉まる直前、旭が不意に口を開いた。「杏梨。いつまでも、自由でいられるよう祈ってる」私は一瞬だけ虚を突かれ、そしてふわりと笑った。「ありがとう」エレベーターのドアがゆっくりと閉まり、旭の姿を向こう側へと遮った。今度は、ドアが閉まりきった後も、私の胸の内には何の未練も残っていなかった。その夜、私は一人で港へ行った。海風が髪を揺らし、対岸の夜景は眩しいほどに輝いていた。温かいコーヒーを買い、ベンチに腰を下ろす。スマホには指導教員からのメッセージが届いており、私の論文は投稿の準備を進めていいとのことだった。南からもボイスメッセージが来ていて、週末に山登りへ行こうと誘ってくれている。母からはちゃんとご飯を食べているかと気遣う連絡があり、父からは小遣いの送金通知とともに、こんなメッセージが添えられていた。【節約なんて気にしすぎず、たまには綺麗な服でも買いなさい】それらのメッセージ
飛行機が着陸に向けて高度を下げていく時、窓の外には見渡す限りの雲海が広がっていた。雲の切れ間から見えた、見知らぬ、それでいて眩しく輝くその街を見つめていると、鼓動が速くなるのを感じた。それは決して恐怖からではなく、これからの日々に期待を膨らませていたからだ。湊浜大学のキャンパスは山の上に建てられている。初めて手続きに向かった日、私はスーツケースを引きながら坂道を登り、息が切れるほど疲れ果ててしまった。隣の部屋の寮生はとても明るい女の子で、須藤南(すどう みなみ)といった。南は私のスーツケースを運ぶのを手伝いながら、笑って言った。「そのうち慣れるよ。ここで学ぶなら、まずは足腰を鍛えないとね」私は彼女の言葉に思わず吹き出してしまった。その日の夜、私たちは一緒に港へ出かけた。海風が強く吹きつけ、街の灯りが水面に揺らめいている。遠くに見える高層ビル群は、まるで夢のように眩しく輝いていた。南が私に尋ねた。「どうして湊浜大学に来ようと思ったの?」私は少し考えてから答えた。「新しい人生を始めたかったから」南は深く頷いた。「それじゃあ、その新しい人生が大成功するように祈ってるね」私は手に持っていたレモンティーを軽く掲げた。「ありがとう」新学期が始まると、私は目が回るほど忙しい日々を送ることになった。授業の負担は大きく、読むべき文献の量も膨大で、その上、講義の展開も驚くほど速かった。最初は授業についていくのがやっとで、夜に寮へ戻ってからも録音した音声を聞き直し、専門用語を調べながらノートをまとめる作業に追われていた。それでも、私はこの忙しさがとても気に入っていた。費やす一分一秒のすべてが、自分自身のためのものだと実感できたからだ。もう誰かと一番を争う必要はないし、自分が誰よりも優れていると証明する必要もない。ただ一歩一歩、確実な足取りでしっかりと前を見据えて歩いていけばいいのだ。指導教員は私の論文の方向性を高く評価してくれ、ある研究プロジェクトへ参加するよう推薦してくれた。プロジェクトのプレッシャーは相当なもので、初めてプレゼンをした時は、緊張のあまり手のひらが汗びっしょりになった。しかし、発表が終わった後、教授は私にこう言ってくれた。「渡辺さん、君はとても素晴らしい着眼点を持っているね」その瞬間、ふ
陽射しは眩しく、風はどこまでも穏やかだった。人混みの中に佇みながら、私はふと、どこか現実離れした感覚を覚えていた。大学での四年間、私はその大半の時間を旭を追いかけることに費やしてきた。まるで、私の人生の重要な瞬間すべてが彼と結びついているかのようだった。入学式では、旭は私の後ろの席に座っていた。初めて奨学金をもらった時は、私たちが同率一位だった。ディベート大会で優勝した時、彼はステージの上から私を挑発してきた。その後、付き合うようになり、喧嘩をして、仲直りして、また喧嘩をして、どちらかが折れる。私たちはこのまま、一生こうして互いに絡み合いながら生きていくのだと、本気で思っていた。けれど今、私はついに大学を卒業し、そして――旭との関係からも、ようやく卒業したのだ。集合写真を撮り終え、花束を抱えて外へ歩いていると、校門のところで旭の姿を見つけた。旭は随分と痩せていた。白いシャツを着て、手には花も持たず、ただ静かにそこに立ち尽くしていた。私の姿を捉えた瞬間、彼の瞳はわずかに輝き、そしてすぐにまた暗く沈んだ。「杏梨」私は足を止めた。旭は数歩近づいてきたが、それ以上近寄る勇気はないようだった。「卒業、おめでとう」私は頷いた。「そっちもね」旭は苦笑いを浮かべた。「俺はもう、東雲大学には行けなくなったんだ」そのことは私も耳にしていた。推薦入試に落ちた後、本来なら自大学の大学院への進学も可能だったはずだが、旭の精神状態がひどく荒れていたせいで手続きが間に合わず、結局は就職する道を選ばざるを得なくなったらしい。旭がかつて最も確信していた未来は、こうして彼自身の手によってこぼれ落ちてしまったのだ。私は言った。「これから先も、別の道があるよ」旭は私を見つめた。「でも、俺は一番歩きたかった道を失くしてしまった」その言葉が東雲大学のことだけを指しているのではないと分かっていたけれど、私はあえて何も返さなかった。旭の目元がゆっくりと赤く染まっていった。「杏梨、今日ここに来たのは、お前にやり直してほしいって無理を言うためじゃない。ただ、俺の口から直接一言だけ伝えたかったんだ。本当に、すまなかった」旭は俯き、その声はひどく掠れていた。「昔、お前に負けを認めさせるたびに、俺はそれがお前の愛情な
旭は言葉の意味が理解できないといった様子で問い返した。「意味がない?」私は言った。「あなたの謝罪で私自身の正しさを証明することも、あなたに追いかけられることで愛されていたと確かめることも、もう何の意味もないって言っているの。私には最初から愛される価値があったんだって、もう気づいたから。あなたが謝罪しようがしまいが構わないわ。私には元々、その価値があるんだもの」旭は呆然と私を見つめていた。私は彼のそばを通り過ぎた。今回、旭は私を引き留めなかった。背後から、押し殺したような泣き声が聞こえてきた。とても小さく、ひどく聞き慣れない、まるで別人の声のように感じられた。私は振り返らなかった。卒業を前にして、大学でまた騒動が起きた。梓が学内SNSに長文を投稿したのだ。そのタイトルは、あまりにも刺々しかった。【親友に大学院推薦を潰されて、私はうつ病になった】投稿の中で、梓は自分を徹底的に悲劇のヒロインに仕立て上げていた。研究計画書において不適切な引用をしてしまっただけなのに、私から色恋沙汰の腹いせで報復されたのだと。好きな人を奪われただけでなく、将来までをも潰されてしまったのだと。旭の上着を羽織っていたことや、彼の隣に座っていたことには一切触れていない。クラウドストレージにある私の没原稿を盗んだことや、学部が行った詳細な調査記録についても、もちろん書いていなかった。投稿が公開されると、それに踊らされる者も確かにいた。「女同士って怖すぎ」「男一人のためにそこまでする?」「もう処分されてるのに、まだネットで叩くわけ?」それらのコメントを眺めていたが、怒りは湧かず、ただ深い疲労感を覚えた。悪事を働いておきながら、被害者面をすることにかけては天下一品だ。人を刺しておいて、生き延びるために傷口からナイフを引き抜いた相手を指差し、「ほら、その手、血まみれじゃない! この人殺し!」と叫んでいるようなものだ。無駄な言い争いはせず、すべての証拠を整理した。学部の調査結果、クラウドストレージの不正アクセスログ、梓が「参考にした」と認めたメッセージのやり取り、そしてあの夜のカラオケボックスでの動画だ。動画にモザイク処理を施した後、学生課と学部に提出した。それと同時に、私自身も釈明の投稿をした。内容は長くなく、わずか数行だけだ。
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