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第2話

Author: 7秒
「杏梨、最後のチャンスをやる。今負けを認めるなら、まだ間に合うぞ」

私は何も言わなかった。

しかし旭は、私が折れると確信しているかのように、こう付け足した。

「女の子が夜一人で帰るのは危ないだろ。負けを認めろよ、送ってってやるから」

私は思わず声を上げて笑ってしまった。

夜道が危ないことくらい、旭も分かっていたのだ。

私が夜の道端に一人で立っているのを怖がることも、彼は知っていたのだ。

それなのに旭は、それらすべてを私に負けを認めさせるためのカードとして使ってくる。

これまでの数年間、私たちはいつもこうだった。

一番を争い、勝敗を争い、どちらがより相手を愛しているかを争ってきた。

喧嘩をするたびに、旭は決まって「新しい彼女」とやらを作った。

私が慌てふためき、涙を流し、頭を下げたところで、旭はこう言うのだ。

「杏梨、またお前の負けだな」

けれど、恋愛は戦争ではない。勝敗などつくはずもなく、ただお互いを傷だらけにするだけだ。

私はもう、本当に疲れた。張り合う気力すら残っていないほどに。

だから私はスマートフォンを握りしめ、静かに言った。

「旭、私たち別れよう」

電話の向こうは長い間静まり返り、通話が切れたのではないかと思ったその時――

鼻で笑うような冷たい声が聞こえてきた。

「いいぜ、別れよう。杏梨、今回は後で泣いてすがってきても、もう元には戻れないからな」

その言葉を聞いた瞬間、冷水を頭から浴びせられたような感覚に襲われた。

まるで底知れない氷の底へ突き落とされたかのようだった。

旭が言っているのは、前回のあの時のことだ。

あの時、私が負けを認めなかったから、旭の方から別れを切り出してきた。

私はパニックになり、泣きながら長い間旭にすがりついた。

それは私が最も惨めな思いをした瞬間であり、旭が最も得意気だった瞬間でもあった。

けれど今回は違う。

今回は、私から切り出したのだ。

私は本気だった。

私は目を閉じ、消え入るような声で言った。

「安心して、もう二度とないから」

そう言い残し、私はそのまま通話を切った。

タクシーを拾って寮に戻った頃には、もう夜の十時近くになっていた。

エントランスに入ると、梓はその腕に真っ赤なバラの大きな花束を抱えていた。

誰からの贈り物かなど、推測するまでもない。

同じ階の寮友たちが梓を取り囲み、羨ましそうな声を上げている。

「旭さん、行動早すぎない?告白してすぐに花束なんて、こんなの反則でしょ。

梓、あんた幸せ者すぎ!」

私が帰ってきたのを見て、梓の顔に浮かんでいた笑顔がふっとこわばった。

「杏梨、おかえりなさい」

彼女は立ち上がり、無意識に花束を横に置いた。

「誤解しないで、これはね……」

私はバッグを下ろし、彼女の言葉を遮った。

「説明はいらない。私と旭はもう別れたから。あなたたちのことは、私には関係ないわ」

梓はすっと顔を青ざめさせた。

彼女は何か言おうと口を開きかけたが、最後にはただ小さな声でこう言った。

「まだご飯食べてないよね?メロンパン、買ってきてあるの。低血糖なんだから、空腹はダメだよ」

彼女はくるりと背を向け、メロンパンを取りに行こうとした。

「お腹空いてない」

私はそれを受け取ることなく、ただ自分の部屋に戻り、ドアを閉めた。

ドアはすべての視線を遮ってくれるが、音まで遮ることはできなかった。

しばらくすると、談話室では寮友たちが再び梓の周りに集まっていた。

声のトーンは落とされていたが、それでも私の耳にはっきりと入り込んできた。

「あんたと旭さん、いつから付き合ってたの?あんなにプライドの高い人が、まさか公開告白するなんてね。学内掲示板でも、その話題で持ちきりだよ」

私はスマートフォンを握る手をピタリと止めた。

画面は明るく光っている。

学内掲示板のトップには、旭の告白動画が掲載されていた。

動画の中で、旭は寮の前に立ち、手にバラの花束を持っていた。

梓は白いワンピースを着て、目を赤くしながらその花を受け取っている。

周囲は冷やかす声で溢れかえっていた。

誰かが叫ぶ。

「キスしろよ!」

旭は俯いてふっと笑った。

その笑顔を、私は何度も見たことがある。

ただ以前は、それは私に向けられたものだった。

けれど私たちは三年付き合ってきて、一度も交際を公にしたことはなかった。

恋愛は二人の問題であり、他人に見せびらかす必要はないと旭は言っていた。

俺たちにそんな見栄は必要ない、と旭は言っていたのだ。

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