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あなたたちのゲームから降りた日

あなたたちのゲームから降りた日

Por:  リスボンの海Completado
Idioma: Japanese
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大学受験をすべて終えた日、四人の幼なじみに誘われて、「真実か挑戦か」ゲームをすることになった。 私の番が回ってくると、つい最近、名家の実の娘だと判明して家に戻ってきた雨宮雛乃(あまみや ひなの)が、みんなに「第一志望を公開する勇気はある?」と持ちかけた。 四人が順番に見せた志望校は、全員そろって北嶺大学だった。 榎本朔臣(えのもと さくおみ)は志望校を書いた用紙を私の前に押し出すと、笑いながら、全国でもトップクラスだった私の模試の成績を指先で軽く叩いた。「首都圏の最難関大に受かっても蹴って、俺たちと一緒に北嶺へ行けるか?あとから心変わりしたやつは負け犬な」 その夜、私は彼らが見ている前で、国立先端エネルギー研究機構の特別研究員選抜に伴う早期受入同意書に署名した。 そして朔臣も、みんなに囃し立てられるなか、私の告白を受け入れてくれた。 ところが後日、選考結果が届いた頃、私は四人に会おうと、彼らが集まっている家を訪ね、リビングのプロジェクターがつけっぱなしになっていることに気づいた。 スクリーンに映し出されていたのは、私の知らない「雛乃を守る会」というグループチャットだった。 【透花、もうサインした?】 【した。嘘の志望校を書いた紙四枚だけで、向こうから北嶺に行くって決めてくれたんだから、こっちとしては大成功だろ】 【やっぱ雛乃はすごいな。ゲーム一回で、あの金魚のフンを追い払えたんだから】 【一番犠牲が大きいのは朔臣だろ。研究所に入るまで、透花と付き合ってるふりまでしなきゃならないんだから】 私はスクリーンの前に立ち尽くした。 そのとき、背後で玄関のドアが開く音がした。 振り返ると、朔臣、楡井岳(にれい がく)、柊木理玖(ひいらぎ りく)、椎葉奏多(しいば かなた)、そして雛乃が、首都圏の難関大学への合格祝いのシャンパンを手に立っていた。 私と目が合った瞬間、五人は揃ってその場で凍りついた。

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Capítulo 1

第1話

最初に平静を取り戻したのは、朔臣だった。

「見られた以上、もう隠すつもりはない。雛乃はようやく実の家族のもとへ戻れたばかりなんだ。そんな矢先に家族と離れて、遠い北嶺で暮らすのは無理だろ。

でも、透花は昔からたくましいし、一人でもどこでだってやっていけるさ」

雛乃が目を赤くしながら、朔臣の服を引っ張った。

私は泣かなかった。ただ、スクリーンに映ったチャットの履歴を指さした。「偽物の志望校記入用紙を作ったのは誰?」

朔臣はあっさり認めた。「俺だ」

「『真実か挑戦か』ゲームをやろうって言い出したのは?」

雛乃の目がわずかに泳いだ。

すると岳がすぐに彼女の前へ出て、庇うように立った。「みんなで考えたことだ。雛乃だけを責めるなよ」

私は頷き、もう一度朔臣を見た。「昨日の夜、私と付き合うって言ったのも、計画のうちだった?」

朔臣の喉仏が小さく動いた。「お前は遠距離恋愛はしないって言ってただろ。俺が付き合うって言わなきゃ、お前は同意書にサインするわけがなかった」

その口調はあまりにも当然のようで、罪悪感などほとんど抱いていないように聞こえた。

雛乃は目を潤ませると、突然、理玖の手からスマホを奪い取った。「全部私のせいだから、今から進学先を変える。私が透花と一緒に北嶺へ行くから、みんなは白凪市に残って」

四人が同時に彼女を取り囲み、奏多がその手からスマホを取り上げた。「もう合格通知まで届いてるのに、今さら何を変えるんだよ」

「でも、透花はどうするの?」雛乃は肩を震わせながら泣いた。「一人であんな遠いところへ行ったら、きっとつらい思いをするよ」

朔臣はティッシュを取り出し、彼女の涙を拭ってやった。「透花は昔から自立してる。どこへ行ったってちゃんとやっていけるよ。お前は体も丈夫じゃないし、白凪市を離れて暮らしたこともないんだから、意地になって自分の将来を棒に振るような真似はするな」

私は数歩離れたところに立ち、四人が雛乃を慰める姿を眺めていた。

――そうか。これが答えだったんだ。

北嶺での暮らしが雛乃に向いていないからではない。

彼らは雛乃に苦労をさせるのが嫌で、その代わりに私を差し出すことなら平気だった。それだけのことだった。

理玖は眼鏡を押し上げ、いつもと変わらない冷静な口調で言った。

「透花、確かにやり方は褒められたものじゃなかった。でも結果だけを見れば、みんなにとって一番いい選択になっただろ。

君は自分に一番合った国立先端エネルギー研究機構へ行き、僕たちは雛乃と一緒に白凪市に残る。これなら誰も将来を犠牲にせずに済む」

私は笑った。「じゃあ、みんなにお礼を言わなきゃね?」

岳は私の皮肉に気づいたのか、顔を曇らせた。「お前だって北嶺に行きたかったんだろ?そうじゃなきゃ、研究機構から何度も声をかけられたときに、どうしてきっぱり断らなかったんだよ。俺たちはただ、お前が決心するのを手伝っただけだ」

確かに、私は行きたかった。

北嶺で進められているのは、幼い頃からずっと私が夢見てきた分野の研究だった。

それでも四人と離れたくなくて、私は二度も誘いを断った。夢見てきた研究分野を諦めてでも、彼らと一緒に白凪市に残ろうとさえ考えていた。

けれど、もうそんなことを話す必要はなかった。

私はテーブルの上に置かれていた選考結果を手に取った。

朔臣が反射的に私を引き止める。「どこに行くんだ?」

「家に帰る」

「じゃあ、俺たちは?」

私は彼を見た。「私たちって?」

朔臣の表情が強張った。

「透花、腹が立ってるからってそんなこと言うなよ。お前と付き合うって答えたのは、同意書にサインさせるためだった。

でも、全部が嘘だったわけじゃない。研究所に入るまでは一緒にいるし、そのあとだって時間があれば会いに行く。お前が欲しかったものは、もう手に入っただろ?」

彼にとっては、私としばらく付き合ってやることが、十分すぎるほどの見返りだったらしい。

雛乃が小さな声で取りなすように言った。「透花、朔臣は本当にあなたのことを大切に思ってるよ。昨日の夜だって、透花が寝たあと、毛布を掛けてあげてたし……」

思わず笑いそうになった。

私を騙して、簡単には撤回できない同意書にサインさせたあとで、毛布を一枚掛けてくれた。

そう考えれば、確かに得をしたのは私のほうなのかもしれない。

「じゃあ、あなたたちはずっと一緒にいればいいよ」

私は幼い頃から身につけていた水晶のお守りを外し、雛乃の前に置いた。「私たちの子供の頃の思い出が欲しかったんでしょう?これもあげる」

雛乃は受け取ろうとしなかった。

朔臣の眉間の皺がますます深くなる。「今日のお前、本当にどうしたんだよ?前はいつも、俺たち五人は一生離れないって言ってただろ?」

「昔は昔だよ」

そう言い残し、私は背を向けた。

そのとき、ポケットの中でスマホが震えた。

国立先端エネルギー研究機構の担当者からメッセージが届いていた。

【迎えの車両は48時間後に白凪市へ到着します。

冬月透花(ふゆつき とうか)さん、以下のリンクより、研究プロジェクトへの早期参加の可否をご回答ください。】

私は【参加する】を押した。

プロジェクトには厳格な守秘義務が課されている。北嶺特別研究基地に入れば、携帯電話などの通信機器はすべて預けることになり、個人的な連絡も制限される。

しばらくの間、誰も私を見つけることはできない。

私は画面を閉じ、18年間ずっと一緒に育ってきた五人で使っているグループチャットを通知オフにした。

彼らはきっと、今回も今までと同じだと思っている。

私が怒って、泣いて、それでも最後には何事もなかったように、また素直に彼らのもとへ戻ってくるのだと。

でも、今度だけは違う。

私は本当に、もう彼らなんていらないと思った。

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雨降る雪降る
雨降る雪降る
友情だろうが恋愛だろうが、人格否定された時点でアウト。
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ひとみ
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あざと女はいったいどこから現れたのか… どんなひどいこと言ってもしてもコイツは俺らから離れないと思いこんでた優秀なヒロインのまわりにいたアホどもでしたー
2026-10-06 20:44:58
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松坂 美枝
松坂 美枝
うまくやってた幼馴染五人組にサークルクラッシャーのように、ヲタサーの姫のように現れた女のせいで主人公以外性格が悪くなったので外れた話 いじめ…?と思わせるクズ行為でもう友情も壊れたよね
2026-10-05 10:15:39
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第1話
最初に平静を取り戻したのは、朔臣だった。「見られた以上、もう隠すつもりはない。雛乃はようやく実の家族のもとへ戻れたばかりなんだ。そんな矢先に家族と離れて、遠い北嶺で暮らすのは無理だろ。でも、透花は昔からたくましいし、一人でもどこでだってやっていけるさ」雛乃が目を赤くしながら、朔臣の服を引っ張った。私は泣かなかった。ただ、スクリーンに映ったチャットの履歴を指さした。「偽物の志望校記入用紙を作ったのは誰?」朔臣はあっさり認めた。「俺だ」「『真実か挑戦か』ゲームをやろうって言い出したのは?」雛乃の目がわずかに泳いだ。すると岳がすぐに彼女の前へ出て、庇うように立った。「みんなで考えたことだ。雛乃だけを責めるなよ」私は頷き、もう一度朔臣を見た。「昨日の夜、私と付き合うって言ったのも、計画のうちだった?」朔臣の喉仏が小さく動いた。「お前は遠距離恋愛はしないって言ってただろ。俺が付き合うって言わなきゃ、お前は同意書にサインするわけがなかった」その口調はあまりにも当然のようで、罪悪感などほとんど抱いていないように聞こえた。雛乃は目を潤ませると、突然、理玖の手からスマホを奪い取った。「全部私のせいだから、今から進学先を変える。私が透花と一緒に北嶺へ行くから、みんなは白凪市に残って」四人が同時に彼女を取り囲み、奏多がその手からスマホを取り上げた。「もう合格通知まで届いてるのに、今さら何を変えるんだよ」「でも、透花はどうするの?」雛乃は肩を震わせながら泣いた。「一人であんな遠いところへ行ったら、きっとつらい思いをするよ」朔臣はティッシュを取り出し、彼女の涙を拭ってやった。「透花は昔から自立してる。どこへ行ったってちゃんとやっていけるよ。お前は体も丈夫じゃないし、白凪市を離れて暮らしたこともないんだから、意地になって自分の将来を棒に振るような真似はするな」私は数歩離れたところに立ち、四人が雛乃を慰める姿を眺めていた。――そうか。これが答えだったんだ。北嶺での暮らしが雛乃に向いていないからではない。彼らは雛乃に苦労をさせるのが嫌で、その代わりに私を差し出すことなら平気だった。それだけのことだった。理玖は眼鏡を押し上げ、いつもと変わらない冷静な口調で言った。「透花、確かにやり方は褒められたものじゃなかった。でも
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第2話
出発する前に、彼らから預かっていたものを返しておこうと思った。岳が12歳のとき、初めてバスケの大会でもらったメダルを私に押しつけ、「なくしそうだから、透花が預かってて」と言った。私はそのメダルを手に、体育館へ岳を探しに行った。彼は床にしゃがみ込み、雛乃が学生寮で使うハンガーラックを組み立てていた。そばにはマットレスやデスクライト、収納ボックスが山のように積まれている。「これ、もう少し低くして」雛乃が高さを確かめながら言った。「私じゃ届かないよ」すると岳はすぐにいったん分解して、組み立て直し始めた。私に気づくと、何気ない口調で尋ねる。「何しに来たんだ?」私はメダルを差し出した。「返しに来た」岳は一瞬きょとんとした。「お前が持ってればいいだろ?なんで急に返すんだよ」「この先、返す機会がなくなるかもしれないから」彼はその意味に気づくこともなく、メダルを雑用品でいっぱいの段ボール箱へ無造作に放り込んだ。「ちょうどいいや。雛乃の寮で使うもの、まだ足りてないんだ。お前、力あるだろ。こっち来て手伝ってくれ」私は動かなかった。雛乃が慌てて口を挟む。「大丈夫だよ。透花は北嶺に行くんだし、きっと荷造りで忙しいから」岳は私をちらりと見た。「こいつ、昔から出かける準備なんて10分で終わらせるだろ。何が忙しいんだよ」私はそのまま背を向けた。彼は追いかけてもこなかったし、私がいつ出発するのかと尋ねることさえしなかった。……理玖は図書館にいた。私は彼がうちに預けていた、コンテスト用の研究原稿を数部返した。彼はそれを受け取ると、椅子の背もたれに掛けてあったカメラバッグに目を留めた。その中には私が15歳のときに1年間お小遣いを貯めて買ったカメラとメモリカードが入っていた。私たち五人の高校生活は、ほとんどすべてその中に残されている。「カメラも置いていって」理玖が言った。「雛乃が成長記録のムービーを作って、大学の新入生歓迎イベントで流したいらしい」「これは私のものだけど」「ちょっと借りるだけだよ。返さないわけじゃない」彼は雛乃を手招きした。雛乃がこちらへやって来て、物欲しそうにカメラバッグを見つめる。「透花、みんなの昔の写真を何枚か選びたいだけなの」「でも、私たちの子供時代に雛乃はいなかったよ」
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第3話
翌朝7時、私は最後に残っていた書類を受け取るため、学校へ戻った。校舎に入った途端、背後から嘲るような笑い声が聞こえてきた。「ほら、全国トップクラスの秀才様がおいでになったよ」「この子、もともとは榎本朔臣と一緒に白凪市に残るつもりだったんでしょ?なのにあの四人は全員、首都圏の難関大に進学することになって、自分だけ北嶺に行く羽目になったんだって」「行く羽目になったっていうより、必死にすがったのに相手にされなくて、自分から惨めに逃げていくだけじゃない?」数人の女子が階段の前を塞いでいた。先頭に立っているのは、雛乃がつい最近知り合ったばかりの友人だった。彼女は私を上から下まで眺め回すと、突然、首から下げていたカメラに手を伸ばして引っ張った。「これが、雛乃に貸してあげなかったやつ?」私は彼女の手を押さえた。「離して」「何ムキになってるの?」彼女はわざと声を張り上げた。「雛乃の言ったとおりじゃん。男四人と幼なじみだからって、本当に自分をお姫様か何かだと思ってるんでしょ」すぐに隣の女子が口を挟む。「残念だったわ。今じゃみんな雛乃のほうを選んでるけどね」「しかも、どこかの誰かさんは恥ずかしげもなく自分から告白して、たった1日で振られたんでしょ?ウケる」周囲には次第に野次馬が集まってきた。私は顔を上げ、廊下の向こう側を見た。そこには朔臣たちがいた。岳は雛乃の書類を抱え、理玖は彼女のために提出書類を確認し、奏多は彼女の朝食を持っている。朔臣も私に気づいた。けれど、眉をひそめただけで、こちらへ来ようとはしなかった。以前、学校で「冬月透花は四人の幼なじみを後ろ盾にして威張っている」と言った生徒がいたとき、朔臣はその生徒を放送室まで連れていき、全校生徒の前で謝罪させた。それなのに今、私は大勢に囲まれ、カメラまで掴まれているというのに、彼はまるで何も見えていないかのようだった。雛乃が小走りでやって来て、私の腕を掴んだ。「みんな、やめて。透花はただ、今ちょっと機嫌が悪いだけだから」カメラを掴んでいる女子が鼻で笑った。「雛乃は優しすぎるんだよ。この子、雛乃にみんなが付き添ってくれるのが妬ましくて、子供の頃の動画を何本か貸すことすら嫌がってるんでしょ?なのにまだ庇ってあげるの?」雛乃の目がたちまち赤くなった。
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第4話
早朝、国立先端エネルギー研究機構の黒い送迎車が、官舎街の外に停まった。両親はまだ海外の研究プロジェクトに参加していたため、ビデオ通話越しに私を見送ることしかできなかった。母は目を真っ赤にしていた。「本当に、私たちは帰らなくていいの?」「基地には家族が付き添えないから」父も隣で必死に涙を堪えていた。「向こうに着いたら、自分のことはちゃんと大事にするんだぞ。誰かに嫌なことをされたら指導員に言え。何でも一人で抱え込むんじゃない」鼻の奥がつんとした。少なくとも、私がいなくなることを寂しがってくれる人はいる。朔臣たちについては――昨夜も彼らは雛乃の家で、「白凪残留五人組」の合格祝いの飾りつけをしていた。グループチャットには、一晩中メッセージが流れ続けていた。岳は、壁一面を埋め尽くす風船の写真を送ってきた。【透花、お前が一番センスいいんだから、早く来て何とかしてくれ】その下に理玖が返信する。【まだ拗ねてるんだ。甘やかすなよ】奏多は、五人をかたどったデコレーションケーキの写真を送ってきた。【北嶺に行って2日もすれば機嫌も直るだろ。そのときに生中継で見せてやればいい】私は何も返さなかった。研究機構の担当者が、私の荷物をトランクに積んでくれた。「冬月さん、車に乗った時点から機密保持の手続きに入ります。個人の携帯電話はお預かりします。SNSを含め、外部との連絡も一時的にできなくなりますが、今のうちに連絡しておきたい人はいますか?」「いません」私は車に乗り込んだ。そのとき、スマホに突然グループチャットの通知が表示された。雛乃がグループ名を【いつもの五人】から【白凪残留五人組】に変更したのだ。続けて、彼女からスクリーンショットが送られてきた。グループ内での私の表示名は、もともと【お姫様】だった。それが今では、【北嶺のネット友達】に変えられている。雛乃は口元を押さえて笑うスタンプを送ってきた。【適当に変えちゃったんだけど、透花、怒らないよね?】岳がすぐに返信した。【怒るってんなら、北嶺から這って戻ってきて自分で直せばいい】奏多からは、笑い声のメッセージが立て続けに送られてきた。理玖は何も言わなかったが、そのメッセージに「いいね」のリアクションをつけた。最後に朔臣が返信した。【透花に似合
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第5話
車が機密管理区域へ続く道路に入ると、担当者が改めて機密保持について説明した。「ここから先、冬月さんはプロジェクトIDで管理されます。これまでの個人情報、人間関係、通信記録はすべて一時的に切り離されます」私は頷いた。「分かりました」車窓の外では、街並みが少しずつ遠ざかり、やがて見渡す限りの荒野へと変わっていった。私は座席にもたれかかった。誰かから突然メッセージが届いて、物を届けてほしい、動画を編集してほしい、面倒事を片づけてほしいと頼まれる心配をしなくていいのは、これが初めてだった。あまりにも静かで、少しだけ不思議な気分だった。――同じ頃、白凪市では雛乃の合格祝いがすでに始まっていた。岳は脚立に乗り、最後に残ったイルミネーションライトを飾っていた。理玖はプロジェクターの調整を担当し、奏多は五人をかたどったデコレーションケーキを切り分けている。朔臣は時間を確認した。午後7時5分。透花はまだ姿を見せていなかった。彼はメッセージを送った。【どこにいる?】しばらく待っても、既読はつかなかった。朔臣は眉をひそめ、もう一度送る。【透花、いつまで拗ねてるんだ。いい加減、返事しろ】それでも、既読はつかない。岳がそばへ寄ってきた。「まだ拗ねてるのか?」「既読がつかない」奏多が鼻で笑った。「子供じゃあるまいし。どうせそのうち自分から我慢できなくなって、また連絡してくるだろ」けれど理玖だけは、作業していた手を止めた。「SSDは?」雛乃がきょとんとする。「透花に持ってきてもらうんじゃなかったの?」その言葉が終わると同時に、玄関のチャイムが鳴った。朔臣はほとんど反射的に立ち上がった。だがドアを開けても、そこにいたのは配達員だけだった。「椎葉奏多さんですか?当日配送のお荷物です」段ボール箱を開けると、中にはあのポータブルSSD、そして差出人不明の四通の手紙が入っていた。奏多がSSDをパソコンにつなぐ。フォルダの中は空っぽだった。初めてキャンプへ行った日の映像もない。16歳の誕生日もない。五人で海へ行ったときの写真もない。そこにあったのは、新しく作られた文書ファイルが一つだけだった。【私がいない過去が欲しかったんでしょう。望みどおりにしてあげたよ。】リビングが突然、静まり
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第6話
朔臣は三人を連れ、国立先端エネルギー研究機構の白凪連絡室へ駆け込んだ。職員が尋ねたのは、たった一言だった。「冬月さんとは、どういったご関係ですか?」朔臣は即座に答えた。「恋人です」職員は端末で登録情報を確認した。「冬月さんの緊急連絡先に、そちらのお名前はありません」朔臣の表情が強張った。「今は俺と喧嘩して、意地になってるだけなんです。どこへ行ったのか教えてください」「申し訳ありませんが、所在地に関する情報を開示する権限はありません」岳がデスクを叩いた。「俺たちは子供の頃からずっと一緒に育ってきたんです!」職員が顔を上げた。「それほど親しいのであれば、冬月さんが今日からプロジェクトに参加することもご存じだったのでは?」四人は同時に黙り込んだ。知らなかった。昨日、透花の部屋を隅々まで勝手に探しておきながら、あの同意書だけは誰一人まともに目を通していなかった。理玖は無理やり気持ちを落ち着かせ、口を開いた。「具体的な所在地は聞きません。こちらから本人宛ての荷物を預けて、転送していただくことはできますか?」「できません」「では、いつになれば連絡を取れますか?」「第1期完全閉鎖期間の終了後、プロジェクトの進捗状況を踏まえて判断されます」朔臣は長い間、その場に立ち尽くしていた。「どうかお願いです。透花は……出発するとき、俺たちに相談しなかったんです」職員は眉をひそめた。「冬月さんは成人です。ご自身の進路について、必ずあなた方に相談しなければならない理由があるのでしょうか?」その一言に、四人は何も言い返せなかった。研究機構を出ると、朔臣は車を飛ばして高速道路の料金所へ向かった。けれど、透花を乗せた送迎車がそこを通過してから、すでに何時間も経っていた。彼らが見つけられたのは、料金所脇のコンクリート台のそばに落ちていた、ひびの入った水晶のお守りだけだった。岳が腰を屈めて拾い上げる。水晶の裏には、二文字が刻まれていた。――透花。朔臣が手を差し出した。「よこせ」岳はお守りを握り締めた。「なんでお前に渡すんだよ?これは透花のものだろ」そのそばに立っていた雛乃が、小さな声で言った。「でも透花、昨日は私にくれるって言ってたよ」三人の視線が一斉に彼女へ向いた。雛乃の顔がさっと青ざめる。「
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第7話
翌日、透花が予定を前倒しして研究プロジェクトに参加したことは、あっという間に学校中へ広まった。校長自ら、全校生徒の前で発表した。冬月透花は理系で全国トップクラスの成績を収め、国立先端エネルギー研究機構の特別選抜研究員として採用された。透花が署名した早期受入同意書は、単なる大学進学に関する書類ではなかった。彼女は特別選抜を受け、研究員として採用されていたのだ。白凪市から選ばれたのは、透花ただ一人。昨日、校舎で透花を取り囲んで嘲笑していた女子たちは、それを聞いた途端に顔色を変えた。そのうちの一人は、わざわざ朔臣のところまでやって来た。「私たち、ちょっとふざけてただけだよ。まさかあの子があんなに根に持って、本当に行っちゃうなんて思わなかったし」朔臣は彼女を一瞥した。「バケツを倒したのは誰だ?」女子の笑顔が強張った。「手が滑っただけだよ」「カメラは?」「あれも、わざとじゃなくて……」朔臣は手を伸ばし、彼女が持っていたスマホを奪うと、そのまま近くの噴水へ放り投げた。女子が悲鳴を上げる。「ちょっと、何すんのよ!頭おかしいんじゃない!?」「手が滑った」昨日の言葉を、そのまま返した。けれど、そんなことをしても朔臣の胸は少しも晴れなかった。昨日、透花があの場所に立っていたとき、彼は助けに来なかった。今さら透花の代わりに怒ったところで、傷口に絆創膏を貼ろうとするようなものだった。遅すぎた。岳は体育館に置いてある荷物を片っ端から探した。あのバスケのメダルは、彼が無造作に放り込んだ雑用品の段ボール箱の中で、雛乃のハンガーラックの部品の下敷きになっていた。縁にはぶつけた跡があり、少しへこんでいた。岳はそれを拾い上げ、長い間、何度も表面を拭いた。そしてふいに、12歳の頃を思い出した。初めて大会で優勝した日、彼は嬉しそうに私のところへ駆けてきた。「透花、これ預かってて。いつか全国大会で優勝したら、そのときの金メダルもお前にやるから」透花は不思議に思って尋ねた。「どうして私にくれるの?」岳は迷いもせず答えた。「お前が俺にとって一番大事だから」今では彼も、全国大会での実績を評価され、スポーツ推薦で大学への進学が決まっている。けれど透花はもう、彼がSNSに何を投稿しているのかさえ知ること
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第8話
北嶺特別研究基地での毎日は、想像していた以上に忙しかった。プロジェクトに参加してわずか一週間で、私は指導教官に同行し、乾燥地帯の実証試験フィールドへ入った。昼間の気温は40度。夜になれば0度近くまで下がる。吹きつける風には、細かな砂が大量に混じっていた。同じ研究チームの先輩が、私にフェイスカバーを一枚差し出した。「後悔してる?」私は首を横に振った。「してません」「家が恋しい?」少し考えてから答えた。「両親には会いたいです」「ほかの人は?」「ほかにはいません」先輩はそれ以上、何も聞かなかった。プロジェクトが始まって3か月目、私が担当していた解析モデルが初めて正常に動作した。午前3時、研究チーム全員から拍手が起こった。指導教官は、砂に埋めて冷やしてあった缶コーラを一本取り出した。「こんなものしかないが、今日はこれで乾杯だ」私は一口飲んだ。炭酸はとっくに抜けていた。それでも、雛乃の合格祝いに用意されていた本物のシャンパンより、ずっと甘く感じた。半年後、基地の専用回線を通じて、両親と連絡を取る機会が与えられた。画面に映った母は、目を真っ赤にして泣いていた。「痩せたね。ちゃんとご飯食べてる?」「うん。ちゃんと食べてるよ」隣から父が尋ねた。「誰かに嫌なことされてないか?」「されてないよ」私は笑った。「ここの人たちはみんな忙しいから、『真実か挑戦か』ゲームなんてしてる暇もないし」二人とも、その言葉の裏に何かあることには気づいたようだった。けれど、詳しく聞こうとはしなかった。ただ、朔臣たちが何度も私の家を訪ねてきたことだけを教えてくれた。「何か伝えておくことはあるか?」父に聞かれ、私は首を横に振った。「何もない」通話が終わる直前、母がためらいがちに口を開いた。「朔臣くんね、ずっと家の前で待ってるの。もう半年近くになるよ」私は頷いた。「それは朔臣の問題だから」その年の冬、プロジェクトは初めて大きな失敗に直面した。砂嵐で実証試験設備が損傷したのだ。私たちは4晩続けて夜通し作業し、計画を一から練り直した。5日目、ようやくデータが安定した。指導教官が私の肩を叩いた。「冬月、お前はプレッシャーに強いな」私は笑った。「子供の頃から鍛えられてきましたから
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第9話
5年目、プロジェクトはいよいよ最終段階に入った。私は23歳になっていた。チーム最年少の若手研究員だった私は、今ではコアモジュールの開発責任者を任されている。閉鎖研究期間の終了を前に、一度だけ外部との私的通信が許可された。外部との通信制限が解除され、スマホの電源を入れた瞬間、雪崩のように大量のメッセージが届いた。朔臣からは、2000件以上届いていた。一番古いメッセージは――【どこにいる?透花、いつまで拗ねてるんだ。いい加減、返事しろ】そして最後のメッセージは、昨日送られたものだった。【もう、許してもらえるのを待ってるわけじゃない。ただ、お前が無事だって知りたい】岳は大会でメダルを取るたびに、その写真を送ってきていた。理玖からは、復元できた昔の動画が一本ずつ送られてきていた。奏多は、五人の18年間をたどるムービーを一から作り直していた。タイトルは、『空席』。タイトル画面に使われていたのは、あの日、梨の木の下に残されていた、まだ埋め戻されていない穴の写真だった。私はすべてに目を通した。そして、すべて削除した。恨んでいるからではない。もう、残しておく必要がなかったからだ。研究成果発表会は、白凪市で開催されることになった。基地が用意した車で、私たちは白凪市へ戻った。5年ぶりに、あの高速道路の料金所が見えてきた。お守りを落としたコンクリート台は、とっくに改修されている。あの水晶のお守りも、もうそこにはなかった。同行していた先輩が尋ねた。「何か探してる?」「いえ、何も」車はそのまま白凪市へ入った。沿道の大型ビジョンでは、研究成果発表会の告知映像が流れていた。中核研究チームの主要メンバーとして、私の名前が大きく表示されていた。発表会当日、朔臣たち四人も会場へ来ていた。座っていたのは、最後列だった。5年という歳月が流れていた。岳は以前よりずっと落ち着いた雰囲気になっていた。理玖は、以前のようにいつも眼鏡をかけているわけではなくなっていた。奏多は髪を短く切っていた。そして朔臣は、ずいぶん痩せていた。私が壇上へ上がった瞬間、四人は示し合わせたわけでもないのに、揃って席から立ち上がった。司会者が発表する。「冬月透花研究員をはじめとする研
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第10話
研究成果発表会が終わった翌日、両親が私のために家族だけの食事会を開いてくれた。朔臣たちは呼ばなかった。母は長い間、私を抱きしめて離さなかった。一方、父はキッチンで三皿も料理を焦がし、結局はデリバリーを頼むことになった。食事の途中、母がふいに尋ねた。「これからは白凪市に戻ってくるの?」私は首を横に振った。「プロジェクトの第二段階も北嶺で続くから」「また5年?」「もっと長くなるかもしれない」父の箸が一瞬止まった。けれど最後には、こう言った。「やりたいなら、やってこい。家の扉はいつでも開けておくから」鼻の奥がつんとした。「うん」……北嶺へ戻る前に、私は一度だけ官舎街へ足を運んだ。梨の木はまだそこにあった。木の下にあった、タイムカプセルを埋めた穴はすでにきれいに埋め戻されている。その上には、新しい金属製の箱が一つ置かれていた。蓋には紙が貼られていた。【冬月透花へ 本人だけが開けてください】私は開けなかった。ただ、その横を通り過ぎた。すると梨の木の陰から、朔臣が姿を現した。彼は私の行く手を塞ごうとはしなかった。「箱の中には、俺たちからの謝罪が入ってる。お前が見たくないのは分かってる。だから、開けなくてもいい」私は頷いた。「うん」朔臣は私を見つめた。「雛乃は去年、海外へ行った。俺たちも、もうずっと連絡を取ってない」「私に言わなくていいよ」「分かってる」彼はどこか苦しそうに笑った。「ただ、説明したかったんだ」「朔臣」私は彼の言葉を遮った。「あなたたちが私を騙して北嶺へ行かせたのは、雛乃がそれほど大切だったからじゃない。私が絶対に離れていかないと思ってたからでしょ」朔臣の顔から血の気が引いた。「私を傷つけても平気だったのは、どうせ最後には許してくれるって信じ切ってたから。だから、そのあと雛乃を選んだかどうかなんて、もうどうでもいいの。大事なのは、私がもう二度と、いつも後回しにされる場所へ戻りたくないってこと」彼は長い間、黙っていた。「分かった」「本当に?」「ああ」「だったら、もう待たないで。前に進んで」とうとう彼の目から涙がこぼれ落ちた。「お前は?」私は官舎街の外に停まっている研究機構の送迎車へ目を向けた。「私はずっと、前に進んでるよ」
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