INICIAR SESIÓN大学受験をすべて終えた日、四人の幼なじみに誘われて、「真実か挑戦か」ゲームをすることになった。 私の番が回ってくると、つい最近、名家の実の娘だと判明して家に戻ってきた雨宮雛乃(あまみや ひなの)が、みんなに「第一志望を公開する勇気はある?」と持ちかけた。 四人が順番に見せた志望校は、全員そろって北嶺大学だった。 榎本朔臣(えのもと さくおみ)は志望校を書いた用紙を私の前に押し出すと、笑いながら、全国でもトップクラスだった私の模試の成績を指先で軽く叩いた。「首都圏の最難関大に受かっても蹴って、俺たちと一緒に北嶺へ行けるか?あとから心変わりしたやつは負け犬な」 その夜、私は彼らが見ている前で、国立先端エネルギー研究機構の特別研究員選抜に伴う早期受入同意書に署名した。 そして朔臣も、みんなに囃し立てられるなか、私の告白を受け入れてくれた。 ところが後日、選考結果が届いた頃、私は四人に会おうと、彼らが集まっている家を訪ね、リビングのプロジェクターがつけっぱなしになっていることに気づいた。 スクリーンに映し出されていたのは、私の知らない「雛乃を守る会」というグループチャットだった。 【透花、もうサインした?】 【した。嘘の志望校を書いた紙四枚だけで、向こうから北嶺に行くって決めてくれたんだから、こっちとしては大成功だろ】 【やっぱ雛乃はすごいな。ゲーム一回で、あの金魚のフンを追い払えたんだから】 【一番犠牲が大きいのは朔臣だろ。研究所に入るまで、透花と付き合ってるふりまでしなきゃならないんだから】 私はスクリーンの前に立ち尽くした。 そのとき、背後で玄関のドアが開く音がした。 振り返ると、朔臣、楡井岳(にれい がく)、柊木理玖(ひいらぎ りく)、椎葉奏多(しいば かなた)、そして雛乃が、首都圏の難関大学への合格祝いのシャンパンを手に立っていた。 私と目が合った瞬間、五人は揃ってその場で凍りついた。
Ver más研究成果発表会が終わった翌日、両親が私のために家族だけの食事会を開いてくれた。朔臣たちは呼ばなかった。母は長い間、私を抱きしめて離さなかった。一方、父はキッチンで三皿も料理を焦がし、結局はデリバリーを頼むことになった。食事の途中、母がふいに尋ねた。「これからは白凪市に戻ってくるの?」私は首を横に振った。「プロジェクトの第二段階も北嶺で続くから」「また5年?」「もっと長くなるかもしれない」父の箸が一瞬止まった。けれど最後には、こう言った。「やりたいなら、やってこい。家の扉はいつでも開けておくから」鼻の奥がつんとした。「うん」……北嶺へ戻る前に、私は一度だけ官舎街へ足を運んだ。梨の木はまだそこにあった。木の下にあった、タイムカプセルを埋めた穴はすでにきれいに埋め戻されている。その上には、新しい金属製の箱が一つ置かれていた。蓋には紙が貼られていた。【冬月透花へ 本人だけが開けてください】私は開けなかった。ただ、その横を通り過ぎた。すると梨の木の陰から、朔臣が姿を現した。彼は私の行く手を塞ごうとはしなかった。「箱の中には、俺たちからの謝罪が入ってる。お前が見たくないのは分かってる。だから、開けなくてもいい」私は頷いた。「うん」朔臣は私を見つめた。「雛乃は去年、海外へ行った。俺たちも、もうずっと連絡を取ってない」「私に言わなくていいよ」「分かってる」彼はどこか苦しそうに笑った。「ただ、説明したかったんだ」「朔臣」私は彼の言葉を遮った。「あなたたちが私を騙して北嶺へ行かせたのは、雛乃がそれほど大切だったからじゃない。私が絶対に離れていかないと思ってたからでしょ」朔臣の顔から血の気が引いた。「私を傷つけても平気だったのは、どうせ最後には許してくれるって信じ切ってたから。だから、そのあと雛乃を選んだかどうかなんて、もうどうでもいいの。大事なのは、私がもう二度と、いつも後回しにされる場所へ戻りたくないってこと」彼は長い間、黙っていた。「分かった」「本当に?」「ああ」「だったら、もう待たないで。前に進んで」とうとう彼の目から涙がこぼれ落ちた。「お前は?」私は官舎街の外に停まっている研究機構の送迎車へ目を向けた。「私はずっと、前に進んでるよ」
5年目、プロジェクトはいよいよ最終段階に入った。私は23歳になっていた。チーム最年少の若手研究員だった私は、今ではコアモジュールの開発責任者を任されている。閉鎖研究期間の終了を前に、一度だけ外部との私的通信が許可された。外部との通信制限が解除され、スマホの電源を入れた瞬間、雪崩のように大量のメッセージが届いた。朔臣からは、2000件以上届いていた。一番古いメッセージは――【どこにいる?透花、いつまで拗ねてるんだ。いい加減、返事しろ】そして最後のメッセージは、昨日送られたものだった。【もう、許してもらえるのを待ってるわけじゃない。ただ、お前が無事だって知りたい】岳は大会でメダルを取るたびに、その写真を送ってきていた。理玖からは、復元できた昔の動画が一本ずつ送られてきていた。奏多は、五人の18年間をたどるムービーを一から作り直していた。タイトルは、『空席』。タイトル画面に使われていたのは、あの日、梨の木の下に残されていた、まだ埋め戻されていない穴の写真だった。私はすべてに目を通した。そして、すべて削除した。恨んでいるからではない。もう、残しておく必要がなかったからだ。研究成果発表会は、白凪市で開催されることになった。基地が用意した車で、私たちは白凪市へ戻った。5年ぶりに、あの高速道路の料金所が見えてきた。お守りを落としたコンクリート台は、とっくに改修されている。あの水晶のお守りも、もうそこにはなかった。同行していた先輩が尋ねた。「何か探してる?」「いえ、何も」車はそのまま白凪市へ入った。沿道の大型ビジョンでは、研究成果発表会の告知映像が流れていた。中核研究チームの主要メンバーとして、私の名前が大きく表示されていた。発表会当日、朔臣たち四人も会場へ来ていた。座っていたのは、最後列だった。5年という歳月が流れていた。岳は以前よりずっと落ち着いた雰囲気になっていた。理玖は、以前のようにいつも眼鏡をかけているわけではなくなっていた。奏多は髪を短く切っていた。そして朔臣は、ずいぶん痩せていた。私が壇上へ上がった瞬間、四人は示し合わせたわけでもないのに、揃って席から立ち上がった。司会者が発表する。「冬月透花研究員をはじめとする研
北嶺特別研究基地での毎日は、想像していた以上に忙しかった。プロジェクトに参加してわずか一週間で、私は指導教官に同行し、乾燥地帯の実証試験フィールドへ入った。昼間の気温は40度。夜になれば0度近くまで下がる。吹きつける風には、細かな砂が大量に混じっていた。同じ研究チームの先輩が、私にフェイスカバーを一枚差し出した。「後悔してる?」私は首を横に振った。「してません」「家が恋しい?」少し考えてから答えた。「両親には会いたいです」「ほかの人は?」「ほかにはいません」先輩はそれ以上、何も聞かなかった。プロジェクトが始まって3か月目、私が担当していた解析モデルが初めて正常に動作した。午前3時、研究チーム全員から拍手が起こった。指導教官は、砂に埋めて冷やしてあった缶コーラを一本取り出した。「こんなものしかないが、今日はこれで乾杯だ」私は一口飲んだ。炭酸はとっくに抜けていた。それでも、雛乃の合格祝いに用意されていた本物のシャンパンより、ずっと甘く感じた。半年後、基地の専用回線を通じて、両親と連絡を取る機会が与えられた。画面に映った母は、目を真っ赤にして泣いていた。「痩せたね。ちゃんとご飯食べてる?」「うん。ちゃんと食べてるよ」隣から父が尋ねた。「誰かに嫌なことされてないか?」「されてないよ」私は笑った。「ここの人たちはみんな忙しいから、『真実か挑戦か』ゲームなんてしてる暇もないし」二人とも、その言葉の裏に何かあることには気づいたようだった。けれど、詳しく聞こうとはしなかった。ただ、朔臣たちが何度も私の家を訪ねてきたことだけを教えてくれた。「何か伝えておくことはあるか?」父に聞かれ、私は首を横に振った。「何もない」通話が終わる直前、母がためらいがちに口を開いた。「朔臣くんね、ずっと家の前で待ってるの。もう半年近くになるよ」私は頷いた。「それは朔臣の問題だから」その年の冬、プロジェクトは初めて大きな失敗に直面した。砂嵐で実証試験設備が損傷したのだ。私たちは4晩続けて夜通し作業し、計画を一から練り直した。5日目、ようやくデータが安定した。指導教官が私の肩を叩いた。「冬月、お前はプレッシャーに強いな」私は笑った。「子供の頃から鍛えられてきましたから
翌日、透花が予定を前倒しして研究プロジェクトに参加したことは、あっという間に学校中へ広まった。校長自ら、全校生徒の前で発表した。冬月透花は理系で全国トップクラスの成績を収め、国立先端エネルギー研究機構の特別選抜研究員として採用された。透花が署名した早期受入同意書は、単なる大学進学に関する書類ではなかった。彼女は特別選抜を受け、研究員として採用されていたのだ。白凪市から選ばれたのは、透花ただ一人。昨日、校舎で透花を取り囲んで嘲笑していた女子たちは、それを聞いた途端に顔色を変えた。そのうちの一人は、わざわざ朔臣のところまでやって来た。「私たち、ちょっとふざけてただけだよ。まさかあの子があんなに根に持って、本当に行っちゃうなんて思わなかったし」朔臣は彼女を一瞥した。「バケツを倒したのは誰だ?」女子の笑顔が強張った。「手が滑っただけだよ」「カメラは?」「あれも、わざとじゃなくて……」朔臣は手を伸ばし、彼女が持っていたスマホを奪うと、そのまま近くの噴水へ放り投げた。女子が悲鳴を上げる。「ちょっと、何すんのよ!頭おかしいんじゃない!?」「手が滑った」昨日の言葉を、そのまま返した。けれど、そんなことをしても朔臣の胸は少しも晴れなかった。昨日、透花があの場所に立っていたとき、彼は助けに来なかった。今さら透花の代わりに怒ったところで、傷口に絆創膏を貼ろうとするようなものだった。遅すぎた。岳は体育館に置いてある荷物を片っ端から探した。あのバスケのメダルは、彼が無造作に放り込んだ雑用品の段ボール箱の中で、雛乃のハンガーラックの部品の下敷きになっていた。縁にはぶつけた跡があり、少しへこんでいた。岳はそれを拾い上げ、長い間、何度も表面を拭いた。そしてふいに、12歳の頃を思い出した。初めて大会で優勝した日、彼は嬉しそうに私のところへ駆けてきた。「透花、これ預かってて。いつか全国大会で優勝したら、そのときの金メダルもお前にやるから」透花は不思議に思って尋ねた。「どうして私にくれるの?」岳は迷いもせず答えた。「お前が俺にとって一番大事だから」今では彼も、全国大会での実績を評価され、スポーツ推薦で大学への進学が決まっている。けれど透花はもう、彼がSNSに何を投稿しているのかさえ知ること
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