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4.目覚めたステラ

last update publish date: 2026-07-28 11:26:00

品のある白い天井に、熟練の職人が丹精込めて作り上げたに違いない芸術品のような照明がある。

目を覚ました私の眼前には、見知らぬ空間が広がっていた。

ーーーここはどこ?

こんな場所、私は知らない。

この豪華さから貴族の部屋だということは察したが、私の知っているリタの部屋はこのような場所ではなかった。

彼女の部屋はもっと贅沢で豪華だ。

こんなにも品があり、落ち着いたものではない。

今生きているということは、おそらくあの試作品の〝時間を戻す魔法薬〟が成功したのだろう。

しかし私の記憶のどこを探しても、このような場所はなかった。

ここは一体どこなのか。そもそも私は一体どこまで時間を戻すことに成功したのか。

寝ていても何もわからないので、私はゆっくりとベッドから体を起こした。

「ゔっ」

ズキッとなぜか刺された左脇腹が痛む。

時間が戻ったはずなのでは?

どうして脇腹が痛むのか。

感じた痛みに左脇腹を押さえると、それと同時に自分の体が目に入った。

私の体はとても小さく、12歳くらいのものに見えたのだ。

私は7年ほど前に戻ってきたのだろうか。

ではなぜ、戻る前の刺し傷があるのだろうか。

情報が足りない。

そう思ってベッドから降りようとした、その時。

この部屋の扉が、誰かによって開けられた。

「目を覚ましたか」

金色の切れ長の瞳が、私を冷たく見つめる。

…ユリウス・フランドルだ。

この部屋に現れたのは、フランドル公爵家の一人息子であり、次期公爵のユリウス・フランドルだった。

この男は皇太子ロイと同じく美しい。

長すぎず、短すぎない真っ直ぐな黒髪は傷みを知らず、いつも輝いており、顔も涼しげで品のある、まるで彫刻のように整った容姿をしている。

ただユリウスは美しいだけで誰に対しても無愛想で冷たい性格ゆえ、周りからはいつも距離を取られていた。

だが、本人はそのことについてあまり気にしていないようだった。

ユリウスとはそういう男なのだ。

なぜ私がここまでユリウスのことについて知っているのか。

それはユリウスがリタの学院での同級生であり、さらにはリタと犬猿の仲だったからだった。

冷たく無愛想で真面目で融通の効かないユリウスと、自由奔放でわがままなリタは、まさに水と油だ。

顔を合わせればお互いに嫌味を言い合い、いつも口論を繰り広げていた。

ならば顔を合わせないようにすればいい話なのだが、2人とも文武両道で共に優秀であったため、同じクラス、同じ実技、同じ授業等に振り分けられ、顔を合わせる機会しかなかった。

しかし、2人は犬猿の仲であると同時に、良きライバルでもあった。

周りから見れば仲は悪いが、お互いに切磋琢磨し合っている間柄にも見えていたことだろう。

勉学や剣術の授業などは私がリタの代役として受けていたので、実際ユリウスが切磋琢磨していた相手はリタではなく、私だった。

リタと同い年であるユリウスは、なぜか私の知っている18歳のユリウスのままだった。

時間が戻っているのなら、そこにいるユリウスも幼いはずなのに。

…つまり時間は戻っていない?

でも私の体は小さい…。

そこまで考えて、私の脳裏にある可能性がよぎった。

確かに時間は戻った。ただしそれは私の体の時間だけだ、と。

そう考えると、目の前のユリウスがそのままで、私だけが小さいのも、脇腹に傷があるのも頷けた。

「あの、私は一体…」

何から聞けばいいのだろうか。

ベッド横まで来て、こちらを冷たく見下ろすユリウスに、今の状況を説明してもらおうと戸惑いの視線を向ける。

するとユリウスは、冷たい表情のまま口を開いた。

「ここは帝都内にあるフランドル公爵邸の客室だ。お前は1週間前、宮殿の中庭で刺されて倒れていたんだ。それを俺が見つけてここへ連れ帰った」

「…そう、ですか」

つまりやはり時間は戻っていないのだ。

私の読みは当たっていたらしい。

まさか暗殺者ではなく、ユリウスが私を見つけて保護までしてくれていたとは、何と運が良かったのだろう。

もし暗殺者に見つかっていたら、私の命はなかったはずだ。

「ありがとうございました」

「いや当然のことをしたまでだ」

頭を下げる私に、子どもに向けているとは思えないユリウスの冷たい声が聞こえる。

だが、これが無愛想なユリウスの通常運転なので、別に気にはならなかった。

「俺の名はユリウス・フランドルだ。お前の名は?」

「私は…」

この8年、私は自分を〝リタ・ルードヴィング〟と名乗ってきた。

もう長いこと本当の名前である〝ステラ〟と名乗っていない。

一瞬だけ、言葉が出なかった。

しかしそれもほんの一瞬だけで、私はすぐに言い慣れない、懐かしい名前を口にした。

「ステラです」

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  • 悪女の代役ですが、殺される前に逃げようと思います!〜皇太子と次期公爵様がなぜか離してくれません!〜   72.専属執事と専属メイド

    「おはようございます、ステラ様」寝間着である私たちとは違い、きっちりと執事服に身を包むセスがこちらに微笑む。そしていつものように私にだけ挨拶をすると、私の言葉など待たずに、布団をガバッと勢いよく剥いだ。それにより、朝の肌寒い空気に急に晒される状態となる。さすがにこれにはユリウスも目を覚ますだろう。「ユリウス様、俺のお嬢様であるステラ様が困っております。早急にその手をお離しください」「…」「ステラ様には朝食へ向けての準備もございます」「…」「ユリウス様、そんな目で見られても無駄です。俺の主はステラ様のみ。ステラ様の命令しか聞き入れるつもりはございません」私に向ける微笑みとは違い、何の感情もない表情で、セスはユリウスに私を離すように言い続ける。だが、ユリウスはそんなセスに答えず、ただただ無言の圧力をかけていた。この帝国中の誰もが震え上がるのではないのかと思えるほど、恐ろしく冷たいユリウスの圧。しかし、セスは何故か屈さず、ただ淡々としている。一体、どんな心臓をしているのか。毛でも生えているのか。変わらぬセスの様子に、感心していると、ユリウスはようやく名残惜しそうに私を離した。ユリウスから解放されたことによって、私はやっと体を起こす。そんな私にセスは「お手をどうぞ」と自然な流れで手を差し伸べてきた。その手をいつも通り取ったーーーその時。「ちょっと!セス様!」突然、扉の方から愛らしい声の持ち主の不満げな声が聞こえてきた。「ステラ様専属メイドである私を差し置いて何ステラ様のお世話を焼こうとしているんですか!私がステラ様のお世話をするんです!」愛らしい声の持ち主、メアリーが頬を膨らませ、力強い足取りで、ず

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