Semua Bab 悪女の代役ですが、殺される前に逃げようと思います!〜皇太子と次期公爵様がなぜか離してくれません!〜: Bab 1 - Bab 10

16 Bab

1.始まりと終わりの夜

三日月が浮かぶ夜空の下。宮殿の立派な中庭を走り続ける私にとって、頼れる光はその欠けている月と、宮殿の窓からほんの僅かに漏れる光のみ。だが、今の私にとって、この暗闇は好都合だった。誰にも見つかることなく、私はここから逃げなければならない。そうしなければ私の命はないからだ。ほんの数時間前までこの宮殿内で誰よりも輝きを放っていた存在だったというのに、何がどうなって命を狙われてしまっているのだろうか。いや、考えなくても答えはわかっている。私はルードヴィング伯爵に裏切られたのだ。「…っ」左脇腹の傷が疼き、一度その場に立ち止まる。先程暗殺者に短剣で刺された傷だ。逃げることを最優先にしていた為、傷の手当てなどもちろんしていない。傷口からゆっくりと血が流れ出ている。ーーー止血しなければ。この大きな中庭について、私は知り尽くしていた。その為、少しだけ辺りを見渡し、見つかりづらそうな木の影を見つけると、そこに身を隠した。「…はぁ、はぁ」木の幹にぐったりと体重を預けながら、自分が着ている上等な絹の寝巻きのワンピースの裾をビリッと破る。何とかそれで傷口を抑え止血を試みるが、すぐにじわりと血が滲み、布はあっという間に血で染め上げられた。血を流しすぎたのかもしれない。何故、私は今、このような状況に陥っているのか。朦朧としてきた意識の中で、先ほどまでの出来事が走馬灯のように脳裏を駆け巡り始めた。*****遡ること、数時間前。今日の主役であった私は、宮殿内に用意された部屋で、婚約式へ向けての準備を進めていた。「リタ様、大変お美しゅうございます」「さすがですわ。磨けば磨くほど輝く、リタ様以上に美しい方はこの世には存在しないでしょう」「まさに我がミラディア帝国の美の女神ですわね」大きな鏡に映された〝リタ〟を大絶賛する周りのメイドたちに、私は形の良い口をふっと緩める。ただ機嫌よく笑っただけでも、美しく魅力的なのだからメイドたちの〝リタ〟に対する大絶賛は正しいのだ。鏡に映る美女の名前はリタ・ルードヴィング。歳は18歳で、メイドたちが言うようにとんでもない美女であり、スタイルも抜群だ。アメジスト色の猫目からは意志の強さを感じ、腰まである絹のように細いシルバーのふわふわの髪からは常に甘い花のような香りを漂わせている。このミラディア帝国内で〝リ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-22
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2.契約満了

ロイと共に宮殿の謁見の間へと向かう。そこで私たちはこれから皇帝陛下のもと、婚約式を執り行うのだ。そう、私は今日、やっと正式にロイの婚約者となる。つまりこのとんでも悪女、リタの代役生活を終え、一生を保証される楽しい生活を手に入れることに成功したのだ!「なんだか嬉しそうだね、リタ。やっぱり僕の婚約者になれたことが嬉しいのかな」「そうです、その通りです…!」「…違う意味なんだろうね」優しく微笑むロイに嬉しそうに笑えば、ロイはどこか面白そうに瞳を細めた。「君は僕なんて愛していない。どうして僕を愛しているフリをするのかな?」「愛している時だってあるでしょう?」「そうだね、まるで人が変わったみたいに僕に愛を囁く君は確かにいるね」相変わらず鋭いロイの指摘に、私は心の中で、さすがだな、と感心する。ロイは私…リタの代役を務めるステラが、自身を愛していないことに気づいていた。一方、本物のリタはロイを愛していたため、彼にとってはおかしな状況だったのだ。ある時は自分を愛し、ある時は自分を愛さない。2人とも確かに同じリタなはずなのに、どこか違う。そして、その違うどこかを、ロイは見つけた。ーーー自分を愛しているか、いないか、だ。ロイはまさか別人がリタを演じているとは思っていなかったようだが、どこか変化するリタを面白がっているようだった。「やっぱり君は面白いね。これから楽しくなりそうだよ」「それはよかったですわ」まるで新しいおもちゃを見つけた子どものように、どこか無邪気にロイが微笑む。私はそんなロイに、慣れた調子で静かに頷いた。この8年間、私は契約を果たすために、あらゆる手を使ってロイに近づいた。そして気がついた。この男は完璧であるがゆえに、変化や異端を好み、普通ではないもの、自分にはないものを常に求めているのだ、と。だから私は普通ではない令嬢を彼の前で演じた。あんなにも人前で好き好きオーラを出していたのに、ロイの前では出さないようにしたり、剣術を磨いて誰よりも強くなってみたり。ロイには理解できない謎の存在になってやろうと決めた。こうして私の努力はついに実り、彼の婚約者としての座を得たのだ。…ちょっと特殊な形になってしまったけれど。「リタ、婚約条件の再確認をしよう。僕は君に僕を退屈させない最高の隠れ蓑になって欲しい、君は僕に公共の場
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-23
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3.裏切り

「…はぁ」私はこの状況に、大きくため息を吐き出した。ここは4階だ。目の前には、3人のプロの殺し屋が立ちはだかり、逃げ場はどこにもない。「伯爵が言っていた。お前は賢い、と。流石に3人で行けば、観念するだろうともな」暗殺者の1人が淡々とそう言い、私にゆっくりと近づく。伯爵様はよくわかっていらっしゃる。伊達に8年間、私を見てきたわけではないですね。ふ、と自嘲気味に笑うと、私は観念したように両手を上げた。そして一思いに私を刺そうと飛び込んできた暗殺者の首に、思いっきり手刀をお見舞いした。「ぐあっ」手刀を食らった1人が苦しそうに声を上げ、その場に倒れる。「なっ!」「貴様っ!」すると先ほどまで落ち着き払っていた暗殺者たちは、一気に臨戦態勢に入った。プロのくせにルードヴィング伯爵の言葉だけを信じて油断するからこうなるのだ。「これで2人だね。3人だと降参したかもだけど、2人だとどうかな?」私はニヤリと口の端をあげる。余裕そうに見せているが、実はそうでもない。プロの暗殺者に丸腰の私ができることなど実際、少ない。倒すことよりも、逃げることに集中した方がいい。どうにか隙が生まれないものかと、暗殺者の様子を伺う。…が、もう彼らにはその隙がなかった。次の手を思案している私を彼らは当然だが、待たなかった。2人は、一斉に私に飛びかかってきたのだ。これは一発食らって、逃げるしかなさそうだ。彼らの方へと走り出した私の左脇腹に、1人の暗殺者が手に持っていた短剣を刺そうとする。私はそれをわざと受け、距離の縮まった暗殺者を思いっきり蹴飛ばした。「…っ」暗殺者が刺した短剣を手放さなかったため、傷口から勢いよくそれが抜ける。再び走った痛みに表情を歪めた私の目の前に、赤が舞った。そして、ドンッ!と暗殺者は勢いよく壁に叩きつけられた。「…ぐぅ!」苦しそうな呻き声をあげ、また1人その場に倒れる。ーーーあと、1人。「もう1人になっちゃったね?」私は最後に残った暗殺者にそう言って不敵に笑うと、暗殺者の横をすり抜け、宮殿の外へと向かって走り出した。*****どうせ最期に見るのなら、こんな最悪な走馬灯なんて見たくなかった。木の影に隠れ続ける私は先ほどまでのことを思い出し、最悪な気持ちになっていた。「…はぁ…はぁ」呼吸がどんどん浅くなっていく。こ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-23
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4.目覚めたステラ

品のある白い天井に、熟練の職人が丹精込めて作り上げたに違いない芸術品のような照明がある。目を覚ました私の眼前には、見知らぬ空間が広がっていた。ーーーここはどこ?こんな場所、私は知らない。この豪華さから貴族の部屋だということは察したが、私の知っているリタの部屋はこのような場所ではなかった。彼女の部屋はもっと贅沢で豪華だ。こんなにも品があり、落ち着いたものではない。今生きているということは、おそらくあの試作品の〝時間を戻す魔法薬〟が成功したのだろう。しかし私の記憶のどこを探しても、このような場所はなかった。ここは一体どこなのか。そもそも私は一体どこまで時間を戻すことに成功したのか。寝ていても何もわからないので、私はゆっくりとベッドから体を起こした。「ゔっ」ズキッとなぜか刺された左脇腹が痛む。時間が戻ったはずなのでは?どうして脇腹が痛むのか。感じた痛みに左脇腹を押さえると、それと同時に自分の体が目に入った。私の体はとても小さく、12歳くらいのものに見えたのだ。私は7年ほど前に戻ってきたのだろうか。ではなぜ、戻る前の刺し傷があるのだろうか。情報が足りない。そう思ってベッドから降りようとした、その時。この部屋の扉が、誰かによって開けられた。「目を覚ましたか」金色の切れ長の瞳が、私を冷たく見つめる。…ユリウス・フランドルだ。この部屋に現れたのは、フランドル公爵家の一人息子であり、次期公爵のユリウス・フランドルだった。この男は皇太子ロイと同じく美しい。長すぎず、短すぎない真っ直ぐな黒髪は傷みを知らず、いつも輝いており、顔も涼しげで品のある、まるで彫刻のように整った容姿をしている。ただユリウスは美しいだけで誰に対して
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-28
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5.ユリウスとの晩ごはん

意識が戻って1週間。傷はまだ痛むが、随分元気になった私は、鏡の前で1人、幼い自分を見つめていた。特にこれといった特徴のない少女が、疲れた顔でこちらを見ている。緑色の瞳も、肩より少し長いストレートの栗色の髪も、誰かの印象に残りそうにもない。街に行けばどこにでもいる普通の少女だ。だが、ルードヴィング伯爵は私の本当の姿を知っている。暗殺者から私の暗殺失敗を伝えられ、今頃伯爵は私を血眼になって探しているだろう。最初は19歳の私を探すはずだ。しかし、何かの拍子で私を見たとしたら。きっと私だと気づくに違いない。たとえ、12歳の子どもになっていたとしても。そうなればせっかく逃げ切れたというのに、全て台無しだ。また命を狙われ、最悪殺される。ここに長居するわけにはいかない。今は社交界シーズンなので、帝都にほとんどの貴族が滞在している。つまり伯爵もまだ帝都にいるのだ。フランドル公爵もルードヴィング伯爵も同じ貴族であり、きっと繋がりもある。伯爵に見つけられるのも、時間の問題だ。私はどうにかして早くここから…いや、せめて帝都から出なければならない。「ステラ様、お着替えは終わりましたか?難しいようでしたら今からでも私がお手伝いに…」いろいろと考え事をしていると、扉の向こうからメイドのメアリーの心配そうな声が聞こえてきた。メアリーは私の専属メイドだ。ユリウスが私に気を使ったのか、なぜか素性もよくわからない私に、初日からつけてくれたのがメアリーだった。全くあの男は本当に何を考えているのかわからない。私がリタの代役を務め、ユリウスとよく口論していた時も「美しいくせに表情がないから何を考えているのかわかりませんわ!この鉄仮面!」と言っていたが、あれは本心からだった。鉄仮面とはユリウスのためにある言葉だろう。「失礼
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-29
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6.身元のない少女

ここで生活するようになってわかったことがある。それは、ユリウスは無表情だが、案外喜怒哀楽を目で語ってくるというものだ。これに気づいた私は、よく見ればだが、ユリウスの感情がなんとなくわかるようになっていた。そう、ポイントは目だ。目を見ればわかるのだ。「今日は午前中は騎士団の仕事をしていた。その後、学院に顔を出し、必要な授業を受け、放課後に時間があったから剣術の鍛錬をした」「へぇ。相変わらず大変そうだね」「問題ない」淡々と本日のスケジュール内容を口にしたユリウスに心から感心する。普通の人だと今頃疲労でヘロヘロになってしまいそうなものだが、目の前にいるユリウスは涼しい顔をしている。話の通り、ユリウスはとても忙しい身だった。学院の優秀な生徒でありながら、帝国屈指の天才騎士でもあるからだ。学院では、テストで良い成績さえ残せば、学院での授業や実技がある程度免除される。その免除で空いた時間を利用して、ユリウスは騎士としても活動しているのだ。この免除制度を使う優秀な者は、ユリウスのように稀に現れ、最近だとロイとリタもその対象であった。免除制度利用によって空いた時間をロイは皇太子としての活動に費やし、リタはそれはそれはもう遊びまくっていた。免除制度を使う者で空き時間を遊びに使う者など、後にも先にもリタくらいだろう。普通の免除制度利用者は優秀なので、どこかしらにすでに所属しており、忙しくしていたり、またさらなる勉学や研究にその時間を費やしたりしているものなのだ。そんな二刀流で忙しい毎日を送るユリウスだが、それでも家族との時間は大切らしい。ここ1週間のことしか知らないが、基本ユリウスは忙しい合間を縫ってでも、晩だけは家族全員で食事を取れるように予定を調整しているようだった。そしてそこになぜか私も自然に組み込まれていた。あんなにも無愛想で冷たい鉄仮面にも、こんな人間らしい一面があったとは。
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-07-30
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7.厄介なご令嬢 sideユリウス

午前の騎士団勤務を終え、午後からの学院での授業を受けるために、宮殿内の廊下を1人移動する。ステラは今、何をしているのだろうか。宮殿の窓から見える美しい中庭の景色に、俺はふとあの場所で保護した少女のことを思い浮かべた。ステラを保護したのは約2週間前、リタ伯爵令嬢とロイ皇太子殿下の婚約式が行われた夜のことだった。初めて俺が目にしたステラは、中庭内の木の下で身を隠すようにぐったりと倒れていた。三日月の明かりさえも彼女には当たらず、最初は何かがそこにいることしかわからなかった。だが、近づいてみるとそれは、かなり多くの血を流している12歳くらいの少女だった。少女は不自然なほどサイズの大きな上等な絹のワンピースを着ていた。隠れるように倒れていたこと、サイズの合っていない上等なワンピースを着ていたこと、この2つから俺は少女が何か不穏なことに巻き込まれている、と判断した。結果、内密に保護し、とりあえず様子を見ることにしたのだ。ステラを保護し、もう2週間が経つが、順調に彼女は回復していた。最初はただの保護だった。だが、ステラのことを俺はどこか放っておけず、今も時間さえあれば、無意識にステラとの時間を作っていた。自分にもし歳の離れた妹がいたのなら、こんな感じだったのだろうか。しかし、そんなステラがつい先週、うちから出ていくと言った。ステラが望むなら、さっさとステラの言う〝家〟へと帰すべきだ。頭では十分わかっている。それなのになぜか俺は、あの時、それを許せなかった。「やぁ、ユリウス」ステラについて思考を巡らせていると、ロイ殿下が後ろから柔らかく俺を呼んだ。「ロイ殿下。ユリウス・フランドルがここにご挨拶申し上げます」足を止め後ろを振り向き、右胸に手を当て会釈をする。それから視線を上げた先には、ロイ殿下ともう1人、リタ嬢もいた。
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-02
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8.気になる変化 sideユリウス

「ふふ、2人は本当に仲がいいね。リタのこんな姿、ユリウスの前でしか見られない。さすが学院一のライバル同士だ」険悪な俺たちの間に、にこやかなロイ殿下が入る。ロイ殿下はいつも通り穏やかな笑顔を浮かべているが、その本心をこちらに見せることは決してない。「しかし、ユリウス。リタとの口論は楽しいのかもしれないが、あまり私の可愛い婚約者をいじめないでくれ。せめて手加減を頼むよ」「はい、ロイ殿下」表面上は友好的な笑みを浮かべるロイ殿下に、俺は軽く頭を下げた。あの女に手加減などいらないと思うが、ロイ殿下のことを無視するわけにはいかない。とりあえずこちらも表向きだけは従うフリをしておこう。「ロイ様ぁ、私、傷つきましたぁ」「…謝罪もいいかな?ユリウス」うるうるとその紫色の瞳を潤ませ、リタ嬢がロイ殿下に俺の非を訴える。するとロイ殿下は困ったように眉を下げ、こちらに柔らかく微笑んだ。「…申し訳ございませんでした、リタ皇太子妃様」ロイ殿下に言われてしまっては仕方ない。俺は不本意だが、リタ嬢に深々と礼儀正しく頭を下げる。それからさっさと顔をあげると、そんな俺をリタ嬢は満足げに見ていた。自分の力では何もできないくせに。いや、本来なら自分の力で何でもできるはずなのに、なぜ今はこうなのか。「ユリウス、今、少し時間はあるかな」「はい」ロイ殿下にそう尋ねられ、俺はすぐに返事をする。午後からは学院へ行かねばならないが、まだ宮殿にいても大丈夫だろう。「よかった。じゃあ、ユリウス。あそこの部屋で少し話そう」ロイ殿下は俺の返事を聞くなり、近くの部屋を指差した。するとその行動に、
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-03
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9.公爵一家はそれを許さない

sideステラユリウスに保護されて約2ヶ月が経った。最初こそ起きることさえも辛かった左脇腹の刺し傷は、2ヶ月もするとさすがに完治していた。つまり当初の予定通り、ここから離れるタイミングが来たということだ。「今までお世話になりました」どうせ別れを告げるなら、全員が揃うであろう夕食時がいいと考え、私はフランドル公爵夫妻とユリウスに食事中に頭を下げた。「ど、ど、どうしたの?急に?」机を挟んで私の目の前に座っている40代くらいの女性、フランドル夫人が手を止め、こちらに視線を向ける。美しい水色の腰まである長い髪から覗く、ユリウスと同じ金色の瞳は困惑でいっぱいになっていた。フランドル夫人はユリウスと違い、とても表情豊かで優しさが表に滲み出ている人だ。「そうだぞ。ステラ」そんな夫人の横でユリウスによく似たこちらも40代くらいの男性、フランドル公爵が冷たいながらも驚いた表情を浮かべてこちらを見ていた。公爵とユリウスの違いは、瞳の色と年齢くらいで、公爵の瞳の色は銀色だ。「ユリウスと話していたんです。傷が完治するまで、ここでお世話になる、と。でももうそれも完治したので、そろそろここを出ようかと思いまして」約2ヶ月前、まだユリウスに保護されて間もない頃のことを思い出す。その時もここからすぐに出ようとしたが、その時はユリウスが「傷が完治するまでは」と言ったのでそれに従った。だが、その傷ももう完治しているのでここを出る頃合いだ。「まあユリウス!ステラとそんな話をしていたの?聞いていないわ!」「説明をしてくれ、ユリウス」私の言葉によって、話の中心が私からユリウスへと変わる。私の隣で優雅に夕食を口にしていたユリウスは、その手を止めて自身の父
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-04
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10.逃走を試みた結果

ここから出る許可が降りない。それならば、もういっそのこと、勝手に逃げ出してしまえばいい。完治した私ならここから逃げ出すことも、不可能ではないだろう。そう考えた私は早速動いた。机の上に今までの感謝の気持ちをしたためた手紙を置き、必要最低限の荷物をまとめると、さっさと今まで生活していた部屋を後にした。窓の向こうに広がる空には、真昼の太陽が燦々と輝き、世界を明るく照らしている。私はあえてこの時間を選んだ。たくさんの人々が活動しているこの時間帯の方が、とても自然だからだ。私の思惑通り、まるでいつものように廊下を歩く私に、すれ違う人々は何事もないように「ステラ様、こんにちは」「いいお天気ですね」などと声をかけてきた。まさか私が今まさにここから出ようとしているとは、誰も夢にも思っていないようだった。ここから脱出後、最初に目指す場所は、帝都の隣街、ユランだ。ユランにある小さな銀行に、こっそりステラとして作っておいた資産があるからだ。そこまで行けば当面の生活を支える300万ほどが手に入る。それだけあれば、遠くへ移動することも、必需品を買うことも、とりあえず生活もできるだろう。これからの計画を一つ一つ頭の中で整理しながらも、私は公爵邸をぐるりと囲む立派な塀のところまで辿り着いた。あとは誰にもバレずに、この塀をよじ登って外に出れば、まずは公爵邸からの脱出完了だ。「…うゔっ」レンガでできた壁のほんのわずかな段差に、指と足を入れ、一段一段上へと登っていく。小さくなった体で、自分よりも何倍も高い塀を、荷物を持ったまま登ることは、決して簡単なことではなかった。だが、それでも私は諦めることなく、唸りながらも必死に塀をよじ登り続けた。その結果、ものの数分で、何とか塀の頂まで辿り着いた。「やったぁ!」達成感と嬉しさのあまり塀の頂上に立ち、両手を突き上げ
last updateTerakhir Diperbarui : 2026-08-05
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