LOGIN☆★あらすじ☆★ 閉鎖的な田舎町に転校してきた明るく人懐っこい少年・律と孤高の静けさを好む神社の跡取り・優斗。性格も境遇も正反対な2人が出会い、やがて許されざる運命に翻弄されながらも絆を深めていく。 影に蠢く異形の者たち――人の世を侵す“闇”との戦いを通じ、次第に惹かれ合う2人。お互いを生きる意味とし、深淵へと踏み込んでいく。 その果てに待つのは悲劇か、救いか。 町の穏やかな日常を背景に浮かび上がる2人の心、そしてすべてを飲み込む哀しき運命――。 日常の中に潜む異形の恐怖と儚くも美しい少年たちの絆を描いたダークファンタジー×BL。生きること、戦うこと、そして愛することの意味を問いかける、切なくも力強い物語。
View More闇より出し者共よ。
影に潜みし二人はお互いの温もりを感じあい、抱きしめあう。それは至福の時だった。共に生き、共に死ぬ。言葉にせずとも伝わる不思議な感覚。 思わず抱きしめてしまった事に、今更羞恥を覚えた優斗は口を尖らせ、少しの非難を込める。「あ、それと! 連絡くらい寄越せよ。心配、したんだからな……」 頬を染めながらお強請りとも取れる事を言う。そんな優斗を可愛らしく思う律は頭を撫で頬を寄せる。「うん、ごめんね。俺、優斗みたいに大事な人、今までいなかったから気が回らなかった。今度からはちゃんと連絡するよ」 幸せな時間はゆったりと流れた。お互いの体温を求め合いひとつに重なる。 だが、そんな一時も腹に感じた違和感で優斗は現実に引き戻される。何やら硬い物が当たっていた。それを確認すると途端に青ざめる。「おい! お前何考えて……!」 離れようと踠くが律の力は強くて抜け出せない。そのまま顔が近づいてきた。「優斗……大好き」 優斗の脳内で警鐘が鳴り響きヤバいと思うも律は止まってくれない。自業自得とも取れるが優斗はあくまで友情として言ったつもりだったのに律に火をつけてしまった。そのまま壁に押し付けられ逃げ場を失う。「律! おい、まっ」 慌てふためくも功を成さず唇を塞がれてしまった。胸を叩いて抗議するが律は意に介さない。必死に抗いなんとか食いしばるも耳を触られ嬌声が漏れた。その隙に舌を捩じ込まれ絡められる。「ん……ふっ、ぅ」 キスなど初めての優斗は律に翻弄されるがままだ。息継ぎもままならず足に力が入らない。何度も舌を吸われ下腹部が熱を持つ。頭の中はグズグズに蕩け何も考えられない。だが、ベルトに手にがかかりカチャリと鳴る音に我に返った優斗は一層の危機を感じ思いっきり頭を殴りつけた。それでやっと解放され素早く距離を取ると唇を拭う。「お、お前なぁ、調子に乗るなよ! 友達だって言ってるだろうが! それを、な、なん……」 顔を真っ赤に染めて文句を言うが律はだらしなく笑っている。「えへへ~。キスしちゃった。は~幸せ。もっ
武術訓練は散々な結果に終わった。既に菖蒲と全力でぶつかった後だ。それでも後堂は手加減しなかった。何度も模擬刀で打たれ打撲だらけだ。その体を引きずって家路についた。エレベーターを呼び、待っているのも辛い。壁にもたれかかって待つ間、律の事を考える。スマホを見ても未だに連絡は入っていなかった。 せめて無事かどうかだけでも知りたいのに、誰も教えてくれない。情報部の小路も忙しいらしく捕まらなかった。父達も、別の仕事で留守にしている。他にあての無い優斗は、ただ待つ事しかできなかった。降りてきたエレベーターに乗り込むと、切れかかった電灯がちらつく。ワイヤーを登る音だけが鳴るエレベーター内は不気味だ。部屋のある十二階が、酷く遠くに感じられた。 やっと到着したエレベーターは、電子音と共に開くと暗い廊下が伸びている。優斗達の居室は一番奥だ。角部屋は日当たりが良いが、今の体では億劫で、誰にとも無く悪態をつく。 ――くそっ。遠いんだよ。誰だこの部屋を宛がった奴。 ぶつくさと文句を言いながら、辿り着いた居室の扉に鍵を差し込んだ。しかし、回しても手応えが無い。 ――開いてる……? そう思った時には勢いよく扉を開けていた。そこには電気が灯り人の気配がある。急いで靴を脱ぎ、リビングへ入ると律がキッチンに立っていた。呆然と佇む優斗に気付いた律が、振り返り満面の笑みを浮かべ腕を広げて走りよってきた。だがその勢いは優斗の一歩手前で止まり、気まずげに俯く。「優斗、あの、おかえりなさい。ご飯、食べるよね。今日はね、買い物もしてきたからご馳走だよ。ステーキとシチューでしょ。サラダもちゃんと作ったんだ。それからご飯もガーリックライスで……」 そう言う律の体は包帯だらけだ。痛ましいその姿に優斗の胸が締め付けられる。傷のひとつひとつが愛しくて、恋しくて、気が付けば律を抱きしめていた。「ごめん……ごめんな。僕がもっと強ければ、お前を傷付けたりしなかったのに。喧嘩別れしたまま会えなくて辛かった。こんなの初めてでどうしていいか分からなくて……僕はお前のためにもっと強くなって共切も使いこなすから、だから……頼む。傍にいさせてく
何度も打ち合っていたのだ。握力も限界だったのだろう。 愕然とする菖蒲に、更に追い打ちをかけようと一歩踏み出すも、優斗の体力も尽きていた。ふらりとよろけると、その場にへたりむ。だが、その目はまだ闘争心でギラついている。その目に菖蒲は怖気付いた。今まで妖魔の存在さえ知らず、安穏と暮らしていたはずの子供がこんな目をするのか。 菖蒲は継承候補者と言っても実戦に出た事は無かった。ただ共切を継承するためにその時間の全てを注いできたのだ。隊員と手合わせした事もある。だがここまで勝ちに執着する者は初めてだった。 今思えば本家という肩書きに手を抜かれていたのかもしれない。それは菖蒲を侮辱するものだ。そんな事に気付きもせずに慢心していた自身にも腹が立った。 満身創痍でも戦意を失わない優斗をじっと見つめる。それが羨ましいと思った。自分に課せられた使命を全うするため共切に固執していたが力だけではダメなのか。共切が何故優斗を選んだのか少し分かった気がした。 菖蒲の体力も尽き膝をつく。二人は睨み合ったまま動けなくなってしまう。 結果は相打ち。 それに衝撃を受けたのは連れ立ってやってきた蓮と茉莉花だ。まさか相打ちなんて中途半端な終わり方をするとは思っていなかったのだろう。最初の態度を見ても余程自信があったようだがそれがぽっと出のチビにやられたのだ。信じられるはずも無い。菖蒲の元に駆け寄ると心配そうに声をかけている。「菖蒲! 大丈夫か? まさかこんな……てめぇ、調子に乗るなよ」 そう言って菖蒲の模擬刀を奪い取り蓮が向かってこようとした。優斗も身構えたが後堂が割って入る。「そこまで。もういいでしょう。小堺君の力は十分に分かったはずです。以前から申していましたが、あなた方は血筋に頼りすぎている。その驕り高ぶった根性を叩き直しなさい。共切に拘らず妖刀を手に現場を体験するべきです。そうしていれば結果も違っていたでしょう。これはそれをしなかったあな方の失態だ。この事は勿論本家にも報告させていただきます」 後堂の言い方で菖蒲達に実戦経験が無い事を悟った優斗は溜息を吐く。継承候補者と言うからには実
肘打ちを食らった右足が痺れ上手く力が入らない。それに気付いているのだろう菖蒲が不敵に笑う。「今度はこちらから行くぞ」 面の横に刀を掲げる霞の構えで踏み込んでくると鋭い突きが優斗を襲う。喉、心臓、鳩尾。急所を的確に突いてくる攻撃を優斗は全て払い落とした。だが足に力が入らないのもあり追いつくのも必死だ。継承候補者と言うだけの事はある。 優斗も妖魔相手の経験こそ塚封じの時に対峙した三回だけだが喧嘩慣れしている。ガキ大将相手に幾度も取っ組み合いの喧嘩をしてきたのだ。例え刀が無くともそれなりに戦える。それはまだ喧嘩の域を出ないが妖魔との戦いを想定して鍛えてきたであろう菖蒲となんとか渡り合っていた。 菖蒲の猛攻はなおも続く。斬り、払い、時には殴られあちこちに青痣が増えていく。優斗も負けじと果敢に攻める。上下左右死角を狙いフェイントも絡め隙を突く。菖蒲からも徐々に余裕が消え真剣味を帯びていった。その目にぞくりと快感が走る。優斗は知らず笑っていた。 ――楽しい! 楽しい! 楽しい! 辺りは優斗と菖蒲の荒い息と模擬刀の打ち合う音だけが鳴り響いている。そこには二人だけの世界ができあがっていた。祖父との手合わせでは得られなかった高揚感に優斗の下腹部は疼く。 その時、菖蒲の足がもつれ一瞬気が逸れた。優斗は踏み込み眼球めがけて突きを放つ。間一髪避けた顬に一筋の血が舞った。その鮮やかさに優斗は目を奪われる。 ――ああ、綺麗だ。 優斗は恍惚に頬を染める。 だがそれが隙に繋がった。顔面めがけて振り下ろされた模擬刀を受けると鍔迫り合いに持ち込まれてしまう。体格も小さく体力も削られている優斗にとっては圧倒的不利な状況だ。その機を逃さず菖蒲は足払いをかけた。敢え無く転倒し尻もちをついた優斗を菖蒲が睥睨する。「ふっ。これで……」 勝ちを確信するも勝負はまだ決まっていない。それは菖蒲の油断だった。 優斗は菖蒲の脛に足を絡め回転を利用して力技で床に叩きつける。強かに体を打ち付けた菖蒲は呻き声が漏れた。 優斗は素早く立ち上がり菖蒲の顔面を踏み潰そうと足を叩き