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想いを月に託す
想いを月に託す
Auteur: 開運招福

第1話

Auteur: 開運招福
藤原優実(ふじはら ゆうみ)は、京北市一の天才外科医として名を馳せていた。

彼女の手の価値は、保守的に見積もっても、二億円を超えており、非常に貴重だ!

しかし今、彼女の手は誰かに地面に押さえつけられ、力強く踏みつけられている。

その元凶は、彼女の夫であり、京北市のピラミッドの頂点に立つ北村雨彦(きたむら あめひこ)である。

雨彦は静かに椅子に座り、完璧に整った服装で、表情もいつも通りだ。

そして、彼の背後にある大スクリーンには、優実の妹である藤原日奈(ふじはら ひな)が数人の大男に引きずられて暗い部屋に連れ込まれる様子が映し出されている。

日奈の痛々しく絶望的な声が絶え間なく響き渡り、その声は優実の心を激しく引き裂いた。

「優実、心安の母の手術をしなければ、明日、この動画を京北市中に流してやる!」

優実は歯を食いしばり、目を血走らせながら雨彦を見つめた。

「雨彦、どうしてこんなことをするの?

あなただって、神原が母さんを轢き殺したことを知っているでしょう!

今、神原の母親が脳腫瘍になったのは天罰よ。それなのに、仇のために手術を執刀しろって言うの?」

一ヶ月前、優実の母親は早朝に買い物に出かけた際、酒酔い運転の神原心安(かんばら ここあ)に轢かれて亡くなった。

優実はすぐに心安を裁判所に訴えた。

しかし、三日も経たないうちに、誰かが身代わりになって罪を認めた。

そして、真の犯人が無罪放免で自由の身となった。

この結果を受け入れられなかった優実は、再度訴訟を起こしたが、何度も却下された。さらには教授職を解任され、無期限の停職処分を受けた。

優実が絶望的な状況に追い込まれたその時、心安の母親が病気になった。

その腫瘍の位置が非常に危険で、京北市では優実以外に誰もその手術を引き受けることができなかった。

優実がその知らせを受け取った時、最初に思ったのは拒否することだった。自分の母親を殺した犯人の母親に手術をするなんて、死んだほうがましだと思った。

しかし、次の瞬間、彼女は地下室に監禁されてしまった。

雨彦と対面した瞬間、優実は初めて理解した。表面上は自分を愛しているように見える夫が、実は心から別の人物を愛していたのだ。

「優実、時間はもうない!」

雨彦の声が優実の思考を引き戻した。

「あと三分だけ。もし心安の母の手術を拒否し続けるなら、このライブ配信ボタンを押して、京北市に、いや、全国に日奈の下品な動画を流してやる!」

日奈の悲痛な助けを求める声は、まるで鋭い矢のように優実の体を貫き、彼女を生き地獄へと追いやった。

優実はぎゅっと拳を握りしめ、口の中に血の味が広がってきた。「雨彦、結婚の時に誓ったことを忘れたの?」

結婚式の日、雨彦は優実の前で膝をついて真剣に誓った。「優実、今日からお前の家族は俺の家族だ。俺は彼らを永遠に守り続ける」

雨彦は優実のかすれた声を無視したかのように、冷たい目で彼女を見つめていた。

「優実、あと一分、日奈の運命はお前次第だ!」

優実の目の中の光が一瞬で消え失せ、絶望だけが残った。彼女は歯を食いしばり、死んだような心で、雨彦を満足させる言葉を吐き出した。

「分かった。その手術、私がやるわ」

優実の返事を聞くと、雨彦は満足そうに優実の頭を撫でた。

「やっと素直になったな!手術が終わったら、見返りとして別荘を一軒プレゼントしてやるよ!」

雨彦の顔に浮かぶ笑みを見て、優実はただただそのことがひどく皮肉に感じられた。

優実はすぐに手術室に向かった。腫瘍の切除手術は十二時間にも及んでようやく完了した。

優実は疲れ切った様子で手術室から歩き出し、まだ一息つく暇もなく、スマホが鳴り響いた。

それは彼女の友人からの電話だ。

「優実、大変なことが起きたの。妹さんがレイプされて、その動画がライブ配信されたわ。妹さんはショックで、飛び降り自殺を図ろうとしている」

「パタッ」と音がして、優実のスマホが床に落ちた。彼女は足元がふらつきながら外に駆け出し、声も震えていた。

「どうしてこんなことに?雨彦、あなたは約束したじゃない!手術をすれば、日奈を許してくれるって!」

優実は屋上に到着すると、消防隊がすでに現場に到着していた。日奈は静かに屋上の端に座り、儚げで痛々しい様子を見せている。

優実は恐怖の眼差しで日奈を見つめた。「日奈、お願いだから、バカなことしないで!すべては大丈夫になるから、姉さんを信じて!」

日奈はゆっくりと顔を向け、優実を見た瞬間、ようやくほんの少しだけ笑みを浮かべた。「姉さん、来てくれたんだ!」

優実はゆっくりと一歩ずつ前に進んだ。

「日奈、降りて来て!お願いだから!あなたを失いたくないの!」

日奈の目は虚ろで、顔にはもはや生きる意志が見当たらなかった。

「姉さん、ごめんなさい。でも、私はもう生きる勇気がないの」

そう言うと、日奈はゆっくりと立ち上がり、優実に向かって微笑みながら言った。

「姉さん、私、母さんのところへ行くね」

その言葉が終わると、日奈は躊躇うことなく飛び降りた。

優実は狂ったように駆け寄ったが、何も触れることはできなかった。

「やめて!日奈、やめて!」

その瞬間、すべての消防隊員たちが一斉に駆け寄り、優実を強く引き止めた。

優実は必死にもがきながら叫んだ。

「放して!何もかも失ったの!家族はもういないの!」

優実は心臓が引き裂かれるような痛みを感じ、次の瞬間、口から鮮血が噴き出すと、目の前は瞬時に暗闇に沈んだ。

再び目を覚ました時、消毒液の匂いが鼻に漂っていた。優実はまるで生ける屍のように座り込み、動くこともできなかった。

そして、彼女は五年間放置されていた電話番号にかけた。

「あなたの条件は受け入れる。私の要求はただ一つ、北村雨彦と神原心安に相応の代償を払わせること!」

電話の向こうでしばらくの沈黙が続いた後、低い声が聞こえてきた。

「問題ない。一ヶ月後、俺が直接迎えに行く」

電話を切った優実は、弁護士にメッセージを送った。

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