Share

ローランドの怒り

Author: Kaya
last update Last Updated: 2025-06-28 12:30:00

 図書室でアデリナは国法が載った本を開いていた。

 彼女は本気で離婚を考えてる。その為の現実的な計画を立てている。

 それが嫌でも目に見えてしまった。

 また、チリっと胸の奥に怒りが湧く。

 でも今度は違う。もっと大きな怒り。

 何に対して私は怒ってるんだ?

 ……分からない。

 「ほお。………私に自ら罰金を払うと?

 それで私と離婚をすると?」

 ついに耐え切れなくなった私は、アデリナの座る椅子の隣に立っていた。

 先に私の存在に気づいたホイットニーは、無言でランドルフの横に並び、子ウサギの様に震えていた。

 肝心のアデリナは、血相を変えて私を見上げている。

 仮病を使い、全く私の前に現れなくなった性悪妻。

 始めは私の怒りを察したかのように取り繕ってくる。だが。

 「陛下、私たち、離婚しましょうか?」

 ………まだ言うのか!

 具合が悪いと引きこもっても、一度も看病に訪れない私を責める事もせず。

 あれ以降、何かが欲しいと強請る事も、私の体にベタベタ触ってくる事もなく。

 貴方にはもう全く興味ありませんと言った顔で、爽やかに別れを提案してくるアデリナ。

 しかも離婚しても加護を継続するよう交渉するから心配するな、だって?

 考えれば何とも良い条件だった。

 性悪妻との縁も切れ、彼女の我儘に振り回される事もなくなる。

 冷静に考えれば何とも有難い申し入れ。

 なのに、私の頭を支配したのは全く別の考え。

 何でそんな風に簡単に言える………!

 あの日結婚式で永遠の誓いを立てたのは、私だけではなかったはずだ……!

 一生お互いを慈しみ大切にすると言う誓いを破棄するのか……!

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   私、殺される?ローランドに追われている謎!

     何でクブルクの兵がこんな所に……? 穏やかないつもの午後。 休日だというホイットニーにヴァレンティンを預けて、私は夕食の材料を買いに町に来ていた。 そこでこの騒動。 中には王宮で何度か顔を合わせたクブルクの兵もいる。咄嗟に壁際に隠れてやり過ごした。 王宮の兵という事は、私達を探してるのは間違いなくローランドだ。 何で今さらローランドが私を探してるの? 私達はもう離婚したのよ? あの後ローランドは、リジーと幸せになったはずでしょ? なのに私とヴァレンティンを探してるって事は………やはり物語の強制力というやつで!? 本来なら私もヴァレンティンも死ぬはずだから、その未来通りに! ……逃げなきゃ! ヴァレンティンを守らなきゃ!! 何とか兵達に見つからずに無事に家までたどり着く。 ホイットニーに状況をうまく説明する間もなく、私は荷物をまとめ始めた。 「ホイットニー、悪いんだけど、今すぐ家を出る準備をして!」 「え?一体どうされたのですか? アデリナ様!?」 「ローランドが……私とヴァレンティンを探し回っているみたい。」 「え……ローランド様が?なぜ今さら? もうお二人は離婚なされたはずでは……」 「分からないけど…… もしかしてヴァレンティンの王位継承とかの問題をめぐって、殺すためかもしれない。」 下手したらリジーに子ができた可能性もある。 その為に邪魔なヴァレンティンを狙っているのかも。 「そんな……果たして本当にそうなのでしょうか?」 「分からないけど、今は確認してる暇はないの! とにかく必要な物だけまとめてくれる?」

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   ローランドの執念

     初めは怒りに震えた。 けれどアオイの消息が不明のまま、時間だけが虚く過ぎていった。 後から後から、アオイにちゃんと説明した上で、愛してると伝えればよかったと後悔ばかりが募った。 言葉足らずだった自分を何度も悔いた。 私がリジーを愛するはずがないと。 あんな風に私のアオイを罠に嵌めた女など、誰が愛すると言うんだ。 あんなに性格の腐っている女を、私が愛することは一生ない。 私が生涯愛するのはアオイ。お前だけだ。 私を懸命に愛してくれて、私の子を身籠ってくれたお前だけなんだ。 幼い頃、体の弱かった私は両親に愛されず、寂しい思いをしながら過ごしてきた。 だが病気で寝込んだ私を何だかんだ言いながらも世話を焼く、アオイに何度も癒された。 人から優しくされるということを、人の温かさというものを、そして不器用ながらも愛というものを、アオイ。お前に教えて貰ったんだ。 やっと愛を知ったのに。 人を愛する事ができたのに…… アオイは実家にも戻ってないという。マレハユガ大帝国の皇帝に、娘を見つけなければ殺すと脅された。 あんなにアデリナを嫌っていた母上までも。 何やらアオイの素直さが気に入ったらしい。 しかもサディークのあの王太子までもが彼女の失踪の噂を聞きつけて、文句を言ってくる。 「我が国が和平条約を結んだのは王妃陛下です。 王妃が無事に戻らなければ……条約は破棄させて貰いますよ。」 うるさい。お前に言われなくても、必ず見つける。 だが、一体どこに消えてしまったんだ……  クブルクの大規模な軍を使い、アオイ達の捜索を開始してはいるが、一カ月経っても何の手掛かりも掴めなかった。 そこで神殿にも協力を依頼した。 「陛下。貴方がしっかり王妃陛下を捕まえておかないから」 呆れたようにイグナイトが溜息を吐いた。 「分かっ

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   ローランドの執念

     そうして私は心を鬼にし、アオイを北棟に閉じ込める様に言った。 アオイ……今は我慢してくれ。 お前に不便がないよう、部屋では快適に過ごせる様言っておくから…… 今その事をアオイに説明できない。 この状況だと、誰がアオイに危害を加えるか分からないからだ。 むしろ私がリジーに大人しく従ってると周囲に思わせておく方が、まだアオイは安全なはずだ。 悪いとは思ったが私を呼び止めるアオイを振り切り、毒に倒れたというリジーの元へ…… 彼女の自作自演の証拠を見つけに向かった。 一週間後、毒から回復したリジーが目を覚ました。 だがリジーが目覚めると同時に、私の方が疲労と熱で倒れてしまった。 早くリジーから自白を引き出し、アオイの無実を証明したいのに。 だからランドルフ達に頼み、容疑者としてリジーを招集するようにと命令しておいたのだ。 私の部屋ならあの女は必ず逃げずにやってくるだろう。 今回の件でアオイが犯人扱いされる決め手となった、アオイの髪飾り。 あれについてはリジーが私の部屋に来たあの夜に盗んだと思われる。 それにはやはりリジーの手垢が残っていた。 着色をつけた手形と、髪飾りに付いていた手垢が一致した。 それからリジーの部屋に用意されていた解毒薬の残った瓶。すでに使用されているのは、操られた侍医がリジーに飲ませたのだろう。 初めからリジーは死ぬ気などなかったのだ。 これらを叩きつけ、後はアオイから無実だと言わせれば…… だが、あの時どうやらリジーは部屋に入る直前にアオイに何かを吹き込んだらしい。 その場にアオイが来ていた事を知らないまま私達はリジーを徹底的に問い詰め、やっと自白させた。 それから仕事とリジーの件に忙殺されている間に、アオイがいなくなってしまったのだ。 離婚届と手紙を残して。 ……どうして

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   ローランドの執念

     アオイを守るため、リジーが本性を現し、悪事を働いている決定的証拠を掴むまでわざと泳がせる事にしたのだが。 「ローランド様っ!」 看護師とは程遠い服を着たリジーは懲りずにアオイの目の前で私に抱き付き、しかもアオイに何かされたかの様に振る舞い始めた。 周囲は騒ぎ、衛兵や官僚達はリジーの弱々しい演技にコロッと騙されて、私の目の前でアオイの悪口を吐いた。 ランドルフは事の成り行きを、今は我慢の時ですと目で訴えて首を横に振った。 調査続行のために。 だがついに私の怒りは頂点に達し、アオイの前で悪口を言った奴らを叱り付けた。 すぐにでもリジーを城から追放したいほど怒りに震えていたが、アオイがリジーを罰する事は嫌がるだろうと思い、それ以上追及しなかった。 だが内心、私は荒れに荒れていた。 ……私のアオイに。私の妻を貶めようとするとはいい度胸だ。 リジー。お前の悪事の証拠を掴んだら、徹底的に追い詰め、このクブルク王宮に来た事を後悔させてやろう……!! そうして遂にあの事件が起きた————。 「陛下……!王妃陛下がリジー様に毒を… リジー様を暗殺しようとなさったと…!!」 ————やられた!!! 急いで駆けつけると、タウゼントフュースラー伯爵が勝手に兵を率いて、アオイを拘束していたのだ。 ————誰が勝手にアオイに触れてもいいと言った? 大臣と兵どもを切り刻んでやりたかったが、やはり彼らの目には生気がなく、どこか虚だった。 しかもその目はアオイに集中し、怒りに満ちていた。 このままでは本当にアオイと子供が危ない。 兵の側にいても危険なだけだ。 そうだ……被疑者という扱いにしておいてあの北棟に閉じ

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   ローランドと危険なヒロイン

     王宮ではリジー擁護派が、これまで以上に過剰に彼女を擁護するようになった。  まるで彼女を崇拝する信者のように。  あの、傲慢で平民などには目もくれなかったセイディまでが、彼女を崇めるようになった。 何も知らない兵やこれまでどちらの派閥でもなかった官僚達までも…… リジーを見る目つきが皆、歪で妙だ。  あの者は一体………? 「陛下。この度、この私がリジーの後見人となりました。  つきましてはリジーをぜひ、陛下の側室にして頂きたく……」 ついにタウゼントフュースラー伯爵までもがおかしな発言をする様になった。  この国の法律は一夫一妻制で、いくら王族と言えど側室を持つ事は禁止されている。  もし妃が子を持つ事ができない場合は、妃と離婚して新しい妃を迎えるか、血族から養子を迎えるか。そう決まっている。 それを分かっていながら何故……? やはりこの者も目がおかしい。  虚で、まるで操られているかの様な…… その夜、なぜか私の部屋にリジーが勝手に入っていた。 「……リジー!?一体ここで何を!?」 「あ、ローランド様。  お聞きになりました?  私が側室候補になった事を……  そこで侍医《せんせい》からローランド様の脈を見るようにと言われました。  侍従長様からお部屋の鍵をお預かりして、こうして待たせて頂いていたのです。  体調が悪かったとお聞きしまたが、大丈夫ですか?」 ベラベラと喋りながら私に近づいて触ろうとするリジーの手を、思いっきり振り払う。 「私に触れるな……!それに私に許可もなく勝手に部屋に入ってきて、覚悟はできてるんだろうな?  侍医も侍従長も厳しい罰が必要だな……!」 「ローランド様っ……」 「それに、私をローランドと呼べるのはアデリナだけだ…!」 そこで固まっているリジーをギロっと睨みつける。  確かに最近この女のせいで多忙が続き、体調が悪かった。が、そんな大事なことまで筒抜けとは。 

  • 愛のために我が子を失った悲劇の王妃に憑依したみたいです。推しの息子と二人で幸せに暮らすため、夫はヒロインに差しあげます!   ローランドと危険なヒロイン

     リジーとかいう女はやけに馴れ馴れしい。 「陛下……触診いたしますね。」 「なぜだ?なぜお前が触診を?」 そう言って侍医を見るが、彼はなぜかぼんやりしながらこの異常な事態を眺めている。 普通なら王の体をたかが一介の看護師ごときに触らせはしないはず。 妙だな……… しかもリジーは私の脈を見ながら、まるで誘惑するかのような目線を向けてくる。 体を触る手つきもどこか、男に手慣れた女のようで…… 「もういい。…私の体調に変わりはない。」 「あっ……!そんな、どうしてっ……」 彼女の手を振り解く。 それからすぐにシャツのボタンを止め、リジーと侍医に下がるように言った。 あの女の視線や仕草は一体何なのだ? ……気持ち悪い。あんな風に、知らない女に触られたくはなかった。 アオイ以外の女に……… ◇ 「どうやら元々、王妃陛下をよく思っていなかった大臣をはじめとした、数人の官僚らが噂を流しているようです。 その中でも特に、王妃陛下の侍女であるセイディ様が悪質な噂を流していると。 一方で、王妃陛下の功績を認めた者達、王妃陛下に携わるメイド達が主に王妃陛下の擁護をしているようです。 逆に大臣や官僚、ホイットニー以外の王妃陛下の侍女達が、なぜかリジー擁護派に回っています。 つまり今の宮廷は、王妃陛下派とリジー派で完全に二分されている状態です。」 調査を終えたランドルフが私の前に立ち、複雑な表情で結果報告をする。 「なるほど。 大臣や官僚となると、さしずめあの、タウゼントフュースラー伯爵辺りが首謀者だろうな。 奴は昔から金にがめつく、アデリナが財務庁の帳簿を厳しくチェックしてるのが気に食わなかったようだし&hell

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status