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私!山賊退治に行って参ります!

Author: Kaya
last update Last Updated: 2025-07-23 14:15:00
 ◇◇◇

 「ローランド!!私!山賊退治に行って参ります!」

 「なぜだ。急にどうした?アデリナ。」

 「どうした……?どうしたですって?」

 性悪妻役だったアデリナと交換憑依し、本当にこの世界の住人となってしまった私は、最近非常に怒っていた。

 また血圧が高いのかな?

 この世界に血圧計とかないから、自分の健康のバロメーターが分からない。

 なぜか自分のステータスだけは出ないのだ。

 執務室で仕事をする夫、ローランド。

 そこに乱入してきた性悪妻《あくやく》の私は、全力で止めにきたランドルフを無視し、詰め寄った。

 「理由を聞きたいですか?

 ローランド。……毎晩毎晩……

 毎晩毎晩……思わせぶりな態度を取っておいて、毎回毎回熱を出す……そして寝る。

 その貴方を(義理だから)看病する…

 その私の気持ちが分かりますか…!?」

 こっちはせっかく、ヴァレンティンを産もうって覚悟を決めたのに。

 毎晩人を求めるような思わせぶりな態度をしてくるクセに、ローランドは肝心な時に熱を出す。

 つまり全然ヤれないのだ……!!

 そこでステータスを確認したところ。

 [ローランド王の熱の原因▷

 多忙な仕事による極度の疲労

 アドバイス▷仕事量を減らす

 今特に頭を悩ませている、東部地方のレーヴェン一味のことを解決するべき]

 謎の親密度のおかげか、ステータス機能がだいぶ詳しくなってきて、ローランドが熱を出す原因があっさりと判明したんだけど。

 レーヴェンというと、あの日馬車を襲った彼らの一派。

 思い出したのだ。

 ローランドの頭を悩ます厄介な山賊、レーヴェン一味の事を。

 あの人達の頭領《ボス》の事を!

 なぜなら私は、この小説を読んでいた読者だからね。

 いい解決策を思いついたんだよね。これこそ憑依者の特権でしょ?

 本来の小説の内容なら、たしかローランドが解決したはずだけど。

 だけどこれなら私でも、きっとできる。

 とにかくレーヴェン一味が原因で、ローランドがゆっくりできないのなら、妻である私が解決すればいい……!

 そうして早くヴァレンティンを。

 私の推しを!

 国宝級アイドルを誕生させたい!
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     ふうん。何だ。じゃあやっぱり今だけ? なら別に愛されてるわけじゃないのね?  だったらいずれはローランド王も、あのランドルフとかいう補佐官も私の魅力に落ちるはずよ。 それから体調不良を理由に診察に行かず、アデリナ王妃にいじめられているという噂だけを流し続けた。 だけど何人かの城仕えのメイドや官僚達は、なぜかあの王妃の味方で、噂を信じてないようだった。 「アデリナ様が……?」 「そんなはずないわ。あんなにお優しい人だもの。その噂こそおかしいわよね。」 「あんなに素晴らしい大義を達成された方だぞ。絶対ありえない。」 ……何なの?こいつら。  私の力が全く効かないわ。何であの王妃に味方がいるわけ?  ちっとも面白くないわ………!! それにあれからローランド王に何度か接触したけれど、当の本人は私を見ても知らんぷり。 「陛下……あの、今夜一緒に」 「何だ?私には愛する妻がいるのに、王である私を誘うつもりか?  残念だが、お前の相手をする気は微塵もないぞ。リジー。」 まるで氷みたいに冷たい瞳で、ローランド王は私をギロっと睨んでくる。  あのランドルフもやっぱり同じだった。 「なん……で?あの性悪の王妃が愛されてるなんて、おかしいでしょう?  あの女、よくも……私のローランド王を!」 気に食わないことはまだある。  それはアデリナ王妃がローランド王との子を妊娠していることだ。  それもまた面白くない!まさか、そのせい? 本当にムカつく女だわ………!!   そんな時にタイミングよく、あの女の方からお声がかかったの。私ってばやっぱり世界に愛されてるわね。 そして迎えたお茶会。 アデリナ王妃はなぜか懸命に私に笑いかけ、友達に接するみたいに優しくする。 イライラするわ。悪役として振る舞えばいいのに、何で良い人ぶるわけ……? あんたがいい人だと私が困るのよ!! もっと悪役らしく、

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