OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~

OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~

last updateLast Updated : 2026-01-17
By:  KAZUDONAUpdated just now
Language: Japanese
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 元気になって生まれ変われるなら即答だ!  病や世界の因果に翻弄された彼は、 自分を「探していた」と言う女神に神格を貰い転生する。 異世界で目にした容姿は女神の趣味全開。 でも本当に異世界転生? どこか懐かしさを感じる。 封印された記憶の奥底に眠る運命の人。 自分が選ばれた理由とは? 「どんなに迷っても前へ、ただ護りたいもののために俺は剣を抜く!」  巻き込まれ体質主人公の異世界?ファンタジー、開幕です!

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Chapter 1

第一章 00  Prologue・今と始まりの物語①

夜九時、桑原秋帆(くわはらあきほ)は暴漢に路地裏へと引きずり込まれていた。

その時、庄司海青(しょうじかいせい)は愛人と共にドローンショーを眺めていた。

九時十分、秋帆は暴漢により暴行されていた。

海青は愛人に情熱的な告白をしていた。

十時、秋帆は滅多刺しにされ、ドブに投げ捨てられた。

海青は愛人と肉体を重ねていた。

深夜十二時、魂となった秋帆は自宅に戻り、風呂上がりの海青と鉢合わせた。

二人の視線が交わる。

海青は眉をひそめた。

「なんだその格好は」

そのときの秋帆は髪は乱れ、服は破け、全身に傷があり、目元は赤く、顔色はまるで死人のように青白かった。

秋帆は彼をじっと見つめ、しばらくして口を開いた。

「海青、離婚しましょう」

海青の美しい眉が深くしかめられた。

「こんな小さなことで離婚だなんて、大げさすぎないか?」

秋帆は虚ろな表情で目を伏せ、もう一度繰り返した。

海青は冷たい目で彼女を見つめ、沈黙した。

しばらくして彼は溜息をつき、彼女を抱きしめた。

「わかったよ、アキ。途中で君を車から降ろしたのは俺が悪かった。でもさ、それはアキが頑固過ぎたから悪いんだよ?俺と詩緒は遊びみたいなもんだ。庄司奥様の座は君だけのもの、誰にも奪えないよ」

すでに風呂は済ませていたが、海青の体からはまだ他の女の香水の匂いが微かに残っていた。

それはまるで棘のように、秋帆の心に突き刺さった。

前夜、彼女は海青の浮気を知った。

そして、笑えることに相手は、彼女が七年間支援していた貧困学生だった。

車内で二人は口論になり、海青は怒りにまかせ、わざわざ人通りの少ない場所まで車を走らせて、彼女を置き去りにした。

その後、事件が起きた。

死後、秋帆の魂は冥府に赴き、閻魔大王は彼女の生前の善行を見て、七日間の還魂を特別に許可した。

いま、彼女の唯一の願いは、海青との離婚だった。

秋帆の心は痛みで麻痺していた。

気づけば涙が頬を濡らしていた。

彼女は海青を押しのけた。

「17歳、私たちが付き合い始めたときに言ったよね。もしいつか海青が私を裏切ったら、私は迷わず去るって。あんたもあのとき、絶対に裏切らないって約束してくれた。この約束は絶対よ」

殺されたとき、暴漢は彼女を十七回も刺した。

その傷が、彼女の17歳の純粋さを嘲笑っているようだった。

海青は一気に忍耐を失い、鋭い目に冷たい光を宿した。

「約束?学生のときに言ったことを本気にしてるのか?」

「いいか?名家の子息なんて、みんな愛人くらいいるもんだ。俺はまだマシな方だぜ?これまでずっと君だけを守ってきた。俺が一番愛してるのは君だ。それは間違いない。でもたまには目新しさも欲しいんだよ。一度くらい、体の浮気くらい許してくれたっていいだろ?」

秋帆は絶望のまなざしで彼を見つめた。

冷えきった指が白くなるほど強く拳を握る。

「もし私がもう死んでるって言ったら、信じる?」

「今の私の願いはただひとつ。海青と離婚すること」

海青は怒りで笑い声をあげた。

「そんなを嘘く必要がどこにあるんだ?」

「私は......」

秋帆が何か言おうとしたそのとき、寝室のドアが突然開き、有川詩緒(あきかわしお)が出てきた。

彼女はセクシーなキャミソールワンピースを着ていて、露出した肌には無数のキスマークがあった。

秋帆がじっと見つめると、詩緒は慌てて海青の背後に隠れ、怯えた声で言った。

「秋帆さん、海青さんと付き合ってしまったことに謝ります。ごめんなさい。でも海青さんみたいに実力のある人が愛人を持つのは普通のことですよ......?」

「安心してください、海青さんが一番好きなのはあなたです!それは絶対に間違いありません!私、庄司奥様の座を狙うつもりもありません!」

秋帆は何も言わず、ただ視線を寝室に向けた。

昨日の朝、彼女が自分の手で整えたベッドは、いまではぐちゃぐちゃになっていた。

秋帆は思わず苦笑した。

「恩を仇で返すなんて、面白い女」

彼女のお金で、彼女の夫と彼女のベッドで寝ている。

その上、着ている寝間着すら彼女のものだった。

詩緒の目が赤くなった。

「秋帆さん......」

「もういい」海青は苛立ったように眉間を揉んだ。

「頭冷やせ」

そう言い捨てると、海青は詩緒の手を引いてその場を去っていった。

バタンという扉の音が響き、秋帆はまるで全身の力が抜けたように、その場にへたり込んだ。

目の前の壁には、彼女と海青の結婚写真が飾られていた。

写真の中の二人は、まるで世界で一番幸せそうに笑っていた。

その笑顔を見つめていると、秋帆の心はふと遠のいていく。

かつて、あれほど自分を愛していた海青が、どうしてこんな風に変わってしまったのか、彼女にはもうわからなかった。

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第一章 00  Prologue・今と始まりの物語①
「あれ?」 転移で降り立った場所は目的の街からまだ数㎞以上離れた草原。どういうことだ?「おい、カーズ、なんかえらく離れた場所じゃないか?」 不思議そうな顔をして俺、カーズに尋ねてきたこいつはエリック。この世界ニルヴァーナで最初に仲良くなった冒険者の友人だ。「変だな……」「何が? 転移に失敗したの?」 俺にそう訊いて来たハーフエルフの女性はユズリハ。エリックとは幼馴染で腐れ縁の冒険者だ。「いや……、何かの干渉を受けたみたいだ。俺はギルド前に転移したはずなのに……」 無理矢理転移先を捻じ曲げられた様な、奇妙な感覚が残っている。どう考えても他者の介入があった。魔力の波長を変えられた様な感じだ。「そのようですね……。それにもうそこまで来ているようです。姿を見せなさい!」 女神アリアが離れた空間に向けて叫ぶと、その虚空に黒い歪が広がる。まるで異次元倉庫を開いたときの様な光景だ。なるほど…、あんな風に亜空間の中を移動しているのか……。 この女神アリアから血と神格を受け継いだ俺は、彼女とは弟のような関係になっている。「ククク……、さすがは腐っても神。よく気付いたものだ」「テメーか、ナギストリア……。何の用だ?」 傷は癒えているが、やはり封印術の影響で大幅に力は落ちているな……。コイツは俺の過去の数千年に及ぶ心の中に存在し続けていた闇の部分の様な存在だ。「アレが、過去のカーズ?! ……確かに前の姿に似てなくもない、かもだけど……」 彼女、アヤは以前の俺を知っている。でもあんなに陰険な見た目じゃなかったけどな。「過去のお姿も素敵ですが……。禍々しすぎますね、あのオーラは……。やっぱり今の美女の様な美しいお姿の方が、わたくしは素敵だと思います!」 俺が新名を与えたエルフのディードが口を開く。しかしこいつは何を言ってるんだろうか? そして俺の見た目には触れないで欲しい。 ヤツが既に背から抜いている黒い大剣も元通りに修復されているし、漆黒の甲冑も同様だ。どうせあの三神のやったことだろう。「力の大半を大神に奪われたのだ。それを補うため、貴様の神格を奪いに来てやったのだ。カーズ、俺の半身よ。他の奴らに用などない」 コイツ……、マジで舐めてるんだな……。天界での俺は儀式で弱っていた。実力など全く発揮できなかったとはいえ、そこ
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第一章 0  Prologue・今と始まりの物語②
「はぁ……」 面白くない、しんどい。なぜ毎日こんなに空虚なんだ。俺もう頑張ったよ、もう十分頑張って生きた。このクソゲーな世の中で、何とか惰性でも生活を送っている俺、一色 和士。 余りにも濃い、波瀾万丈過ぎる人生。最愛の人とは結ばれなかった、夢だったスポーツ選手も大怪我で断念した。女性関係はトラウマものばかり、忙し過ぎる生活や家族、親しい人達の死など不幸が幾重にも重なり、心身と精神のバランスが崩れ、鬱病を突然発症、そこからは毎日が地獄だ。教職に外国語が得意ってだけで就き、生活のため辞めるわけにもいかず何とか続けている、生徒は慕ってくれているが、とにかくしんどい。何がしんどいかって、全てがしんどいんだ。 心のバランスを保たなくてならないために安定剤を服用し、常に手放せない。他者ともある程度の距離を取って過ごしている。残りの人生を無気力に消化していく何とも言えない虚無感。何をやっても楽しくない、力が出ない。休んでもHPが回復しないようなもんだ。寝てもしっかり食べても全く回復しないんだ、むしろマイナス、所謂常時バッドステータス状態だ。 もう戻れないのに過去に常に後悔を感じ、悔しくて仕方ない。寝ても魘されるから自発的に寝れない。寝るのは睡眠薬を使って無理矢理だ。寝起きも最悪だ、悪夢に加え感情が不安定で体が重すぎて暫く動けないんだ。それでも日々は無常に過ぎていく、心身が常に重い、出口など何処にも見えない毎日。こんな風になってしまった弱者に世界は試練、いや地獄でしかない。それに中々理解もされない。 こんなはずじゃなかったのにな……。明るく、無邪気でスポーツも勉強も出来た。友人も沢山いていつも中心に自分がいた。どこからおかしくなってしまったのか……。わからない、だが何でもそつなくこなせていたそれなりのスペックがあった過去の自分と、今をどうしても比較してしまう。これも全部病気のせいだ。俺が何をしたって言うんだよ……。くそっ! 苦しい……。何で苦しい状態がずっと続くんだ、呼吸するのさえしんどいんだよ、どうやったら治るんだよ……。誰か助けてくれよ。神様なんざどんだけ祈ったって無駄だ。勝手に涙が滲む。「あーあ、もし生まれ変われるなら、以前の元気な自分に戻りたい。それなら今出来ないことがたくさんできるのに……。それに過去に戻れたら、やり直したいこともたくさ
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第一章 1   美しき転生者
 目が覚める。大の字に寝ていたようだ。見たことのない木々の間から真っ青な空が見える。森かな? マジかよ……どうやら本当に転生したみたいだ。大きく深呼吸をすると、田舎に帰ったときよりも美味しい空気だった。都会の喧騒で汚染されたものと違い、沁みわたるような感覚を覚えた。とりあえず起きよう、上半身を起こしたとき頭の中で声が響く。【あっ、おはようございますー。私でーす、私ー】 ん? このはっちゃけたときの井上麻里奈さんみたいな声は……、どうやら女神アストラリアの様だな。(えーと、私私詐欺ですか?) 心が軽く体も力が漲るようで、憑き物がおちたように思考もクリアだ。【切れっ切れの返しですねー。そうです私ですよー、あなたの素敵な女神アストラリアですー。色々と設定し忘れたことがあるので、これから決めていきましょう。それと冒険や戦闘の指南です。所謂チュートリアルってやつですねー】 なんか抜けてる女神様だな。でもとっつきやすくて気安い感じだ。(何でしょうか? 決めてないこと?) うーん、と頭を捻る。【ほらー、まずは名前ですよー名前! 日本人ネームのままだとここでは違和感があるでしょうから、現在の名前から多少いじって作りましょう】 そういうもんか。ナギトでもいいけどそのまんまだしなあ。違和感ないとは言い切れないし、新しい人生だ。この際変えるのもアリだな。(じゃあ、和士の和のところを別読みで、カズ、ファンタジーぽいなら『カーズ』でいいですか?) ぶっちゃけ名前とかどうでもいいんだが、折角だしな。乗っておこう。ゲームでもたまに使う名前だし。因みによく間違われるが、呪いはカース、curseだ。(名字はどうしましょうか? アストラリア様、センスのある変換お願いします) 丸投げでも女神様のがセンスは良いだろう。ぶっちゃけそういうのめんどくさいんだよね。【あらー、いいんですかー? では一色をもじって……今のカーズさんはご希望通り赤髪に毛先に金のメッシュが入ったような色合いですから、まあ赤色ってことで『ロットカラー』なんてどうでしょうかー?】 流石の女神様。カッコイイ。ロットとかロッソってラテン語で赤だよな。てかそんな色になってるんだな。長めの前髪を引っ張って見てみる。うん、近すぎてよくわからんな。(カーズ・ロットカラーか、いいですね! もうそれでOKで
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第一章 2   初期ステータスは?
【それでは『ステータス・オープン』と声に出すか、心の中で念じてみて下さい】 周囲には誰もいないので、アリアに言われた通り口にしてみる。するとゲームのステータス画面のようなものが表示される。★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★<カーズ(・ロットカラー)∞歳(18~20歳相当)男 魔法剣士>称号  :女神の戦士Lv   :1 (+50/装備補正)HP   :1200(+500/装備補正)MP   :2400(+500/装備補正)筋力  :100 (+250/装備補正)敏捷  :150 (+150/装備補正)魔力  :1200(+350/装備補正)物理耐性:150 (+2650/装備補正)魔法耐性:150 (+2650/装備補正)幸運値 :50  (+100/装備補正)<装備><アストラリアソード(S:カーズ専用)>物理攻撃力:1250魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)<女神刀(S:カーズ専用)>物理攻撃力:1250魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)<アストラリアナイフ(S:カーズ専用)>物理攻撃力:1250魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)<バトルドレス(S:カーズ専用)>物理耐性:1200魔法耐性:1200(込めた魔力量により最大値増加)付与効果:自動回復(S:100/秒でHP・MPを回復する)    :状態異常耐性(S)    :魔力ヴェール(S:物理/魔法防護膜を自動展開/            込めた魔力量で範囲/効果上昇)    :HP+500    :MP+500    :筋力+150    :敏捷+150    :魔力+150    :物理耐性+150    :魔法耐性+150<ドラゴングローブ(S:カーズ専用)>物理攻撃力:1250魔法攻撃力:∞(込めた魔力量により最大値増加)物理耐性:550魔法耐性:550付与効果:衝撃追加(S:竜の息吹            :込めた魔力属性のブレスが発動)<ペガサスブーツ(S:カーズ専用)>物理耐性:350魔法耐性:350付与効果:飛翔(魔力を込めると発動)<グリ
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第一章 3   初期装備は?
(アリア、どの装備もSランクなんだけど……。しかも補正値えげつないし。どんなもので出来てんの? とりあえずこのバトルドレス。ドレスって、俺男だよ) トンデモ素材が使われているのは間違いないだろう。でもそこはちゃんと把握しないといけない。先ずはこの服の見た目だ。黒のロングコートにもワンピースのようにも見えるが腰から上は体にフィットした服になっている。大きな襟が左右に2枚ずつ胸の下あたりで止めてある。インナーに白と黒のシャツの様なものがあり、首の半ばまでの長さだ。左右の肩にはショルダーガード、肩から下はまるでメイド服。肩回りが膨らんだデザインに、袖は長く肘の辺りからフレアーなデザインで袖先にはレースのフリルがご丁寧に付いている。それは腰から下の部分のコートのようなスカートみたいな部分も同じで裾にはこう、メイドさんのひらひらでギザギザなフリルだ。 どう形容したらいいのか、ぶっちゃけ俺のファッションに関する語彙力では無理だなあ。腰から下の前方は開いており、身に着けているのはズボンだ、良かった。腰から下のコート部分にはこれまたショルダーガードの素材と同じようなプレートがこう、鱗のように重ねて装着してあり、防御力も高そうだ、イメージ的にステイナイトな剣使いぽい。そして膝下くらいの茶色のブーツ、踵部分に羽がデザインしてある。これはぶっちゃけカッコイイ。 全体的に黒を基調としているが、縁取りは赤、レース部分は白だ。胸の上部には硬い金色のプレートが付いている。そして手には指先だけ出ているグローブ。ナックルの部分に超硬い金属のようなものが付けられている、これで殴られたら痛いだろう。見たらわかる、絶対死ぬやつやん普通に。でもね、なんと言っても軽い。凄く伸縮して動き易そうなのだ。【まあ結構中性的なデザインで作りましたしねー。レースやフリルは私の趣味でーす! もしMPが枯渇しかけたら女性側に肉体が引っ張られてしまいますからー、そんなときでも違和感なく着られますよー!】 言い切りやがったよ……、ものすげー潔いな……。(やっぱ自分の趣味じゃないか。でもそこまで自信満々で言われちゃあ、いっそ清々しいよ。で、何で出来てるの? てかどうしても女にさせたいのかよ?)【ふふーん、地上で最も硬いと言われるような鉱石素材、オリハルコンやアダマンタイト、ガマニオンに|星
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第一章 4   First Battle
 さて、流れ的にバトルする羽目になってしまった。でもね、ぶっちゃけ俺結構ビビりだよ、他人にはバレないように強がってきたけどね。前世でもなるべく諍いは避けてきたしなあ。 でも売られたら買ってしまうスタンスだったし、根本的には短気なんだよ。喧嘩くらいは学生時分まではよくしてたから。相手がこっちよりビビってたら怖くないんだよね。もうそういうときってアドレナリン出まくってるし、スポーツでもゴール近辺だと気持ちが昂って仕方なかった。まあ冷静じゃないよね、本能のままにぶっぱするみたいなもんだし。 でもどれも対人間。魔物とか、RPGの中でしか戦ったことないから。子どものときに近所の狂暴な犬と死闘を繰り広げたくらいなだけだ。 冷静に考えて、平和な世界に生きてきた人間がそんなの相手に戦えるかい? 野生動物とか、家畜の牛やら馬、多分羊にも負けると思うよ、だって角生えてるし。早速ビビりが発動しながらアリアに尋ねる。(モンスター? 魔物? ってそんなのどこにいるのさ? 結構長話ししてたと思うんだけど、それらしきものは全く見なかったぞ。森の中だってのに)【えーと、それはですねー私が結界を張ってたんですよー。目覚めた瞬間に襲われるとか嫌じゃないですかー。カーズさんぐっすり眠ってましたし。それに私と話す時間も必要でしたしねー】 けらけらと笑いながら話すアリア。なるほど、結界ときたか、サラッとすごいこと言ったな。もうずっと張っておいて欲しい。(ほほうー、ならそれを解除したら?)【普通にこちらの存在が周囲に認識されますねー。魔物の方が人間よりも感覚器官が優れていますから。攻撃的な魔物だとすぐやって来るでしょうねー(笑)】(何それ、怖い。ごめん、胃が痛い気がする。持病の仮病が発病したみたいだわ)【気のせいです。しかも自分で仮病って言っちゃってますよー。小粋なトークで誤魔化さないでく下さーい。そんな小ネタ言える余裕があるなら大丈夫ですよー。この辺りの敵はぶっちゃけ弱いですから。スタート地点にここを選んだのも、しっかりと経験を積むためって理由がありますからねー。さあさあ、起きて準備して、結界を解きますよー】 止める間もなくアリアが結界を解く。パリーン、と何か薄いものが割れるような感覚がした。結界解除の音だろう。うーむ、弱い敵ねー。古代竜や
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第一章 5   女神との語らい
 魔物の群れに向けて魔法を放つ、サンダー・ジャベリン。文字通り雷の槍だ。スキル弱点看破で目に映るのは相手の眉間だ。そこに標的化して狙いを定めて魔法をコントロールする。もう敵の数に合わせて発動できるくらいにはなった。超成長の恩恵だね。 ズドン! バチバチッ! バリバリバリィ!! 眉間を射抜かれながら追撃で電流が敵の全身を駆け巡る。今相手にしているのはビッグ・ボア、所謂でっかい猪だ。食べると美味いらしい。10頭程の群れだが、3頭急所を外してしまったのでまだまだコントロールが足りないな。仕方ない、残りは武器で対応しよう、鞘から抜き取ったのは女神刀。さすがに和名の日本刀には横文字は使わなかったみたいだ(笑) アリアさん、分かってらっしゃる。 まだ『抜刀術』は難しい、鞘の中で摩擦を起こし剣閃スピードを上昇させるということだが、刀剣を鞘から抜き放ち、さらに納刀に至るまでをも含めた動作が、高度な技術を有する武芸として成立しているくらいだ、一朝一夕で出来るものではない、普通に振り回すのがまだ精一杯だ。 残りの猪に向かって加速する。丁度3頭魔法で痺れて眼前に並んでくれている、「アストラリア流刀スキル」 弱点の眉間に向けてほぼ同時に瞬速の3連撃を1頭に1撃ずつ放つ、虎のツメの如き三連撃。「虎爪閃!」 ザザシュッ! ザヴァァーン!!! 全て的確にヒットした。断末魔とともに巨体が崩れ落ちる。<レベルアップしました、スキルの更新を行います> お、レベルも上がったな。「ふう、結構頑張ったな、ちょっと休憩しよう」 自身に新しく習得した気配遮断と物理結界に魔法結界を張る。俺の存在が認識されにくくなる。透明人間みたいなもんだ。とりあえず狩ったビッグ・ボアを片っ端から異次元収納庫に突っ込む。アリア曰く、【狩った魔物は体の部分が素材になったり、食材になったりしますからー、街のギルドで売って路銀に代えましょう。その時についでに冒険者登録をしておくといいでしょうねー】 ということらしい。なので最初に倒したクマさんから全部そこに突っ込んである。ちなみにこの中に入れている間は時間の制限がないらしい。新鮮なままお届け可能なのだ。クール便のようなものだということにした。そしてどのくらいものが入るのか聞くと、
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第一章 6   世界<ニルヴァーナ>の真実
(……大虐殺? 物騒だな、でも虐殺ってことはそれを行った奴らが居たってことだよな? 狂った奴らが核兵器みたいなもので世界が崩壊して人類が滅ぶくらいの爆撃とかしたのか?) 虐殺だから誰かが行ったというのが妥当だろう。自然破壊で滅ぶってのも、巨大隕石が落ちたってのもなんか違う気がする。【そうですね、人間を絶滅させるくらいの兵器とかはあったでしょう。それでも一人も残さず絶滅させるとなると、不可能ですね。シェルターのようなものに避難したり、運良く助かる者もいるでしょうから】 ダメだ、俺の頭じゃそんな芸当が出来そうな人間はいるわけがない、としか考えられない。ん、待てよ。確信がないがそれが出来そうな存在なら居るのは居る。でも……、まさかだけど。【カーズさんの推測は当たっていますよ。そんな芸当が出来るのは人間以上の存在】(ならやっぱり……)【……神です】(マジかよ……。何となく察しはついてたけど、神様直々に手を下すとか普通にない気がする。でも俺の勝手な見識だし、地球で神の存在なんて感じたこともないしな)【地球の神々は基本的に無干渉ですね。気が向いた時だけ歴史を修正する程度ですから、決して人前に姿を現しませんし、宗教なんて人間が勝手に創ったものですよ。中には人に紛れて遊んで暮らしてる神も居たりしますが。ですがこの世界ではもうすでに2回も神による大きな変革が行われています】(てことは2回もその大虐殺が行われたってことだよな? ……どうしてそんなことが?)【1度目は約1万年前。そのとき私はまだ生まれていませんでした。2度目は5000年ほど前で、それがニルヴァーナというこの世界の成り立ちです。でも人間たちはそのときの歴史に関することを知りません。そしてニルヴァーナという意味すら知らずにこの世界をそう呼んでいるに過ぎません。誰がそう名付けたのさえ知らないのです】(2回も世界を変革したのはなぜなんだ……? 人間は何をしたんだよ?!) 滅ぼされるなんてよっぽどだ。地球でも同じことが起こる可能性もあるけど、最早俺には関係のない話だ。地球なんざ1回滅んだ方がいいと思う。アリアはふう、と溜め息を漏らしながら、また話し続ける。神様が溜め息を吐くほどのことなんだろうか?【1度目は今の地球と酷似していると言った方が分かり易いですね。人間は互いに互いの利益の為に争いを続けました。
last updateLast Updated : 2025-12-03
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第一章 7   Not Predicted The Attack
 目が覚める。穏やかな陽気に日の光が眩しい。結構長く、それもかなりぐっすりと寝ていたようだ。太陽が既に高く昇っている。「昨日は転生初日から結構飛ばしたもんなー……」 思ったよりも疲れていたのかもしれないな、夜もアリアと話してたし。と独り言ちてからふわああーっと欠伸をして上体を起こし、両手を上にして伸びをしてから、両肩をぐるぐると動かした。「でも気持ちいいなー。こんな気持ちのいい寝起きは久しぶりな気がする」 大自然の中で心地良い朝を迎えるなんて思わなかった。頭の中もスッキリしていて力が漲るようだ。この感覚、もう長らく忘れていた。夢見が悪くて魘されることもない、寝起きに心が不安定で薬を飲むこともない。素晴らしく気持ちがいい。「超気持ちいい! 何も言えねえー!」 思わず某アスリートの発言が出る。やっぱ鬱なんて拗らせたらダメだね、意味なくしんどいんだし。かかった本人にしか分からないだろうけどさ。シスコンやらブラコンやらロリコンやらを拗らせる方がまだマシだ、元気なんだし。生暖かい目で見られるだけだしな(笑) さて、まだ街までは数キロってとこだけど、のんびりと行くか。横に伸ばした腕をもう一方の腕の肘で支え、上半身を捻じる。軽いストレッチだ。だが何かにつっかえて腕が捻じりにくい。 ムニュリ……。自分の胸部に何かある。スライムか? いや、結界も張ってるし、気配遮断で気配は消している。うん、幻覚だな。もう一方の腕も同様にストレッチがてらにぐっと捻じる。 ムニュリ……。まただ、胸というか服の中になんかいる。仕方なく胸元を見ながら手でまさぐる。転生したら胸部がスライムだった件、とかで済まないものかな……。いや、余計にアカンわ! ムニュリ×2。うん、知ってた。引っ張らなくてもいいよって思ったろ? いーや引っ張るね! 認めたくないんだからな! とりあえず立ち上がろう、まあまだ焦る時間じゃない。視線を落とし、落とせない……。だって足元が見えないんだよ? それに視線も少し縮んでいるような高さだ。  ふっふっふ、おっぱいだよ、うぇーい! とでも言うと思ったかコノヤロー! 何なんだこのご立派様は? 我ながらけしからん! 仕方ない、下も確認しよう、お約束ってやつだ、手を伸ばす。……ない。グッバイ・マイサン。今までありがとう……とか言ってる場合じゃない! もう焦ってもい
last updateLast Updated : 2025-12-04
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第一章 8   陰謀? そして始まりの街へ
「終わったよ。怖かったでしょ? もう大丈夫だからね」 馬車を覗き込みながら言う。王女様は極限の緊張状態からは抜けたようだが、まだはっきりと喋れるほどはショックから回復はしていないようだ。【カーズさん、恐らく彼女は恐慌状態にありますね。他の乗員も含めて。護衛の2人はカーズさんの戦いを見て実力差に驚愕して自失茫然してます】 そんなすごいことはしてないが……、自失するほどか?(そうなのか? どうしたらいい?)【状態異常を解除する聖魔法『キュア』がありますが、全員を一気に治療できる上位の『キュアラ』が適していると思われますねー】(わかった、やってみよう) 王女様を含む一行に聖属性の魔力を練る。そして両手をかざした。「キュアラ」 優しく暖かい光が一帯を包む。その場の全員がはっと自我を取り戻し、心を落ち着かせることが出来たようだ。今度は喋りかけても大丈夫だろう。「もう大丈夫だよ。心も落ち着いたはずだけど。他の皆さんも、大丈夫ですか?」 王女様と思しき方が立ち上がり、侍女達を連れて馬車を降りる。護衛騎士二人に執事と御者のオッサンも姫の周りにぞろぞろと集まる。 お姫様はドレスの裾を上げて一礼すると、俺の前に跪く。そうすると他の従者達も同じように跪く。彼女が話し始めるのを待っているようだった。「あ、あのー? 頭を上げて下さい。そんな跪かれるような大したことはしてませんから……」 こう跪かれて言葉を待つなど、何とも居心地が悪い。しかも今は女性体だ、さっさと出来れば逃げたい。【あはー、カーズさん。慣れてませんねー? こういうことに(笑)】(当たり前だ! こんなのどこぞの独裁者か魔王、昔の天皇か江戸の将軍だぞ? 慣れてるわけがないだろ) などと念話で話していると、王女様が口を開く。「此度は危ないところを助けて頂き、誠にありがとうございます。何とお礼を申し上げたらよいか分かりません。私は隣国クラーチ王国の王都から参りました、クラーチ王国第二王女、アーヤ・クラーチと申します。勇敢な貴女のお名前を伺っても構いませんでしょうか?」 やっぱ王女様だったのか。どうりでオサレな服装のはずだ。しかし、王女様含め全員が跪いているこの状況は何とも居心地が悪い。まるで印籠をかざしたじいさんだ。「その前に皆さん顔を上げて下さい。偶然近くに
last updateLast Updated : 2025-12-05
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