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第14話

Author: こいのはな
知佳は改めて気づいた。

ずっと、拓海がマンションを購入したのは、自分の足が不自由であることを考慮してのことだと思っていた。だが、そうではなかった。

これは拓海と結衣の理想の家だったのだ。

大型マンション、ヨーロッパ風の照明、大きな出窓、モロッコ風のカーペット、ファブリックソファ、ヨーロッパ風のダイニングテーブル……

その全てが、結衣の好みだった。

外からは、まだ結衣の弾んだ声が聞こえてくる。

「すごい、拓海、あなたの家にこんなにたくさんのヴェネツィア人形があるなんて!全種類揃えてあるの?どうやって集めたの?」

文男の声が続いた。「拓海はずっと君が好きなのを覚えてるんだ。自分が出張に行くときでも、友人や取引先がヴェネツィアに行くときでも、必ず買ってくるんだよ」

部屋でそれを聞いていた知佳の手は、ドアノブを握りしめたまま微かに震えていた。

耳にこだまするのは、別の会話の記憶だった。

「拓海、こんなにたくさん人形を買ってどうするの?」

「君が一人で家にいて退屈しないようにと思って。人形は喋らないけど、家に並べれば寂しくなく見えるから」

……はあ。

……ははは。

そうね。この家が寂しくなんて、あるわけがなかった。

新婚の家だというのに、そこにはいつも結衣が一緒に住んでいた。どうして寂しいなどと思うだろう。

ダイニング、リビング、窓際……

どこを見ても結衣の思い出が散らばり、存在そのものが染みついている。どうして寂しいなどと思うだろう。

知佳は疑ったことさえあった。拓海がベッドでいつも遠くに離れて寝るのは、彼の妄想の中で、拓海と知佳の間に結衣が横たわっているからではないかと。

ついに、知佳はもう我慢できなかった。

ドアを開けた。

見てやりたかった。彼らがそんなに遠慮なく自分たちの深い感情に浸っているのを、この家に女主人がいることを知っているのかどうか。

たとえ知佳が離婚するつもりでいても、まだ離婚は成立していないのに。

ドアを開ける音が大きすぎたのか、全員の視線が一斉に知佳に向けられた。

結衣はヴェネツィア人形を手に取り、愛おしそうに抱きながら知佳に向かって言った。「知佳、あなたが羨ましいわ。こんなにたくさんの人形があって。これ、私にくれる?」

「いいわよ」知佳は入口に立ったまま、ためらいなく答えた。

その言葉を聞いた拓海の
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