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第4話

Author: 無名
宗道の言っていた通りだ。人の心ほど、推し量るのが難しいものはない。

涼太がどうしても「あの人」を忘れられないのなら、自分は身を引くつもりだ。泣きわめいたりもしないし、騒ぐこともしない。

彼女にとって彼が自分を愛していないことも、あの女を愛していることも受け入れることはできる。でも、自分に深い情があるふりをしながら、裏であの女とつながっているのだけは許せなかった。

彼は本当に好きな人がいるくせに、自分には心にもない甘い言葉を囁いた。そんな態度に、自分は心を動かされてしまった。

だけど、涼太はこの関係からいつでも綺麗さっぱり抜け出せるだろう。一方で残された自分は、底なし沼にはまったように動けなくなってしまうのだ。

手術を終えた明日香が、ふらふらの体を引きずって家に帰ると、信じられない光景が待っていた。自分の居場所はすでに奪われていたのだ。

そこには、涼太の後ろにおどおどと隠れる霞がいた。けれど彼女のその目から、はっきりとした挑発が見て取れた。

そして、涼太は冷たく言い放った。「霞は帰国したばかりで、泊まるところがないんだ。だから主寝室を彼女に明け渡して、君は一旦ゲストルームへ移ってくれ」

それを聞いて、使用人の北条恵(ほうじょう めぐみ)は小声で独り言をつぶやいた。「お客さんが主寝室を使って、主人がゲストルームだなんて、そんなのおかしいわよ」

一方で、霞がこちらに向ける視線には、隠しきれない軽蔑の色が混じっていた。

彼女は涼太の頬を痛ましげに撫でてみせた。「涼太、愛してもいない人と一緒に暮らすなんて、きっと辛かったでしょ?

もし最初におじさんが反対しなかったら、私たちは世界一幸せなカップルになれたのにね!」

明日香は中絶手術を受けたばかりだったから、壁に手をついていなければ、まともに立っていられないほど弱っていた。

涼太の言葉に彼女はまるで笑いものになったかのようにただ呆然と立ち尽くしていた。

そして深夜にふと目を覚ますと、隣の部屋から物音が聞こえてきた。

そこでは、霞はしなやかな体で、涼太にぴたりと抱きついて、まるで熱愛をしているカップルかのように絡み合い、口づけを交わしていた。

そして二人は久しぶりの再会に酔いしれながら、お互いの愛を確かめ合っているのだった。

「誰にも邪魔されたくないの」霞が涼太の胸にもたれかかり、甘ったるい声でおねだりしていた。「ねえ、彼女を追い出してよ」

そんな彼女に涼太は甘い声で答えた。「先生も君には静養が必要だと言っていたし、明日あいつには出て行ってもらうよ」

その一連を明日香はドアの前で長い間立ち尽くして聞いていたが、彼女はあふれそうな負の感情をなんとか飲み込んだ。

そして彼女が部屋に戻った後しばらく経ってから、突然ドアが開いて涼太が入ってきた。

さっきまで霞といちゃついて甘い言葉を交わしていた彼が今度は、すごい剣幕で明日香を問い詰めに来たのだ。

「おい、どうして妊娠したことを黙ってたんだ?」

明日香の顔は青白かったが、目は鋭かった。「妊娠したのは私なんだから、産むか産まないか決める権利も私にあるわ」

それを聞いて、涼太は手に持っていた数珠ブレスレットを引きちぎった。「あれは青木家の大切な跡継ぎなんだぞ!なのによくも俺に黙って、勝手に堕したな!」

そう言う彼の瞳には激しい怒りが宿っていた。「ひと言くらい相談すべきだっただろう!」

それを聞いて、明日香は震える唇を噛みしめた。「私が毎日飲まされていたミルクから、避妊薬の成分が出たの。もし産んでも、五体満足で育つ可能性は低かったわ」

避妊薬を長期間飲み続けることには副作用がある。女性の体に、取り返しのつかないダメージを与えることだってあるのだ。

医師にも言われた。卵巣機能が衰えていて、今回妊娠できたこと自体が奇跡だったと。

そして、今回おろしてしまった以上、もう二度と子供を望むことはできないだろう。

それを聞いて涼太の目に、わずかな罪悪感の色が浮かんだ。「とりあえず体を休めろよ。子供なら、また作ればいいさ」

だけど、明日香は魂が抜けたように、うわ言を漏らした。「もうできないから」
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