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第14話

Auteur: 浮々
横生は自らの心の闇に押し潰され、夜な夜な眠れぬ日々が続いていた。

ある夜、酒に酔って家の近くをふらついていると、玄関前で長い髪の女性がしゃがみ込み、猫に餌をやっている姿が見えた。

その仕草が――あまりにも晴子に似ていた。

この界隈で猫を飼っていたのは、晴子だけ。猫に餌をやる習慣も、彼女だけのものだった。

横生は目をこすり、よろめく足で近づくと、ためらいなく彼女を抱きしめた。

「……晴子?君だろ?やっと帰ってきてくれた!」

涙ながらに、彼はその女性を離そうとしない。

「一緒に帰ろう。もう一度やり直そう。二度と離れない。また子どもも授かろう」

すでに理性を失い、眼前の人物が誰かもわからなくなっていた。ただその姿に晴子を重ね、掴んだ手を放せない。

横生は相手を抱きしめたまま、夢中で唇を重ねた。女性も抵抗せず、むしろ横生を受け入れている。

酔いに支配された横生は違和感にも気づかず、さらに深く求めていく。

そして、二人の身体はベッドへと沈んだ。

横生の指が、無意識に相手の右腕をたどる。そこには、かつての傷跡があるはずだった。

だが、指先に触れたのは、なめらかで無傷の肌だ。

――ない。あの傷が、どこにも。

その瞬間、横生の意識が一気に覚めた。彼は激しく相手を押しのけた。

「お前は……誰だ!」

叫ぶと、女性は再びすがりつこうとした。横生は怒りを爆発させ、乱暴に振りほどいた。

カーテンを引き開けると、差し込む光の中に――奈々がいた。

さっき、彼女は晴子の服を着て、玄関で待ち構えていた。

横生は顔を強張らせ、服をつかんで立ち上がった。だが奈々が腰にすがりつく。

「横生、あなたも私を愛してるでしょ?だって、あんなに優しくしてくれた……!」

彼女は横生の手を離さぬよう必死に握る。

「あなたもわかってるはず。本当に愛し合ってるのは、私たちなの!」

横生は冷たく言い放った。

「お前に触れたのは――お前が晴子を真似たからだ。お前なんか、彼女と比べることすらできない。俺が愛しているのは、晴子だけだ」

そう言うと、横生は顔を背け、もう一瞥すら与えなかった。

「二日だけ猶予をやる。その間に消えろ」

言い終えると、部屋を出た。

だが玄関では、宗一郎と亜由美が立ちふさがっていた。

「うちの娘を弄んで逃げるつもりか!」

「娘があんたと同じベッド
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