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第4話

Author: ふなみ
そのときの私は、彼が言った「後悔」の意味を知らなかった。

ようやく情けをかけ、私を本当に解放してくれたのだと思っていた。

だが大学へ戻ると、行き交う人たちが皆、嘲りと軽蔑の目を向けてきた。

そこで初めて、何かがおかしいと気づいた。

私のあられもない姿を写した写真が、大学の匿名掲示板に投稿され、瞬く間に拡散されていた。

頭が真っ白になり、目の前が大きく揺れた。

震える手では暗証番号を何度も間違え、なかなかスマホを開けなかった。

【衝撃!4年生のS、神宮寺グループ社長の秘密の愛人。学生生活の裏で長年囲われていた!】

投稿された写真にはぼかしが入っていたが、それでも私だと分かるものだった。

写っていたのは、昨夜、恭弥といたあのベッドだった。

あのとき彼がスマホで撮影していなかったことは確かだった。

だとすれば、部屋にカメラが仕掛けられていたとしか考えられなかった。

胃の中が激しく込み上げ、花壇の陰へ駆け込んで吐き続けた。

その間も多くの学生が通り過ぎ、写真を撮る者や動画を回す者、聞こえよがしに罵る者までいた。

「清楚そうな顔して、裏ではずいぶん派手に遊んでたんだな」

「一晩いくら?俺にも相手させてよ」

逃げるように寮へ戻ったときには、惨めなほど身なりが乱れ、服も何か所か破れていた。

ところがドアを開けると、仲のよかったルームメイトたちは荷物をまとめ、別の部屋へ移ろうとしていた。

私を見るなり距離を取り、よそよそしい顔をした。

「栞がそんなことする人だったなんて、思わなかった」

私は何度も首を振った。

「違う。私、不倫なんてしてない」

だが、誰も信じてくれなかった。

恭弥に婚約者がいたのに、3年も付き合って何も知らなかったはずがない。それが皆の言い分だった。

午後、学生課の担当者から電話がかかってきた。

品位を著しく損なう行為があったとして、大学院への推薦資格を取り消すという。

私は騙されたこと、自分こそ被害者であることを必死に説明した。

しかし担当者は、困り果てたようにため息をついただけだった。

「学内の研究棟2棟と設備は、神宮寺グループから寄贈されたものです。仮にあなたが被害者だとしても、大学にはどうすることもできません」

電話が切れ、ようやく恭弥の言葉の意味を理解した。

彼は私を屈服させようとしていた。

逆らい続ければどうなるか、思い知らせるつもりだったのだ。

がらんとした部屋には、私一人だけが残った。

嫌がらせのメッセージや電話は、ひっきりなしに届き続けた。

愛人、尻軽、恥知らず――目を背けたくなる言葉が、画面を埋め尽くした。

その夜は雨だった。

私は恭弥の屋敷の前に立ち、彼に電話をかけた。

呼び出し音が鳴る間もなくつながり、すべて予想していたかのような、見下ろす声が聞こえてきた。

「栞、自分が悪かったと分かったか?」

スマホを強く握り締めた。羞恥が無数の虫のように、全身を這い回った。

それでも口から出たのは、くぐもった一言だけだった。

「ごめんなさい」

受話口から、からかうような笑い声がした。

「栞、お前は賢くて、純粋だ。こうして謝るのも、その場をしのぐためだけだろ?」

息をのみ、拳を強く握った。

私が黙っていると、恭弥は得意げに鼻を鳴らした。

「やっぱり当たってたな。栞、この世でお前を一番分かってるのは俺だけだ。だから、罰はまだ終わってない。今度こそ、本当に自分が悪かったと分からせる。栞、俺を失望させるなよ」

電話は切れた。

雨の中で立ち尽くしていると、暗がりから大柄な男たちが現れた。

全身の血が凍り、心のどこかに残っていたわずかな望みも、音を立てて砕けた。

どうやって人気のない路地へ引きずり込まれたのかは覚えていなかった。

拳と平手が雨のように降り注ぎ、視界は赤くかすんだ。

意識が遠のくなか、男の一人が電話を取る姿が見えた。

「……何をしてもいいんですか?でも、何かあったら……はい、はい。分かりました!」

その電話を境に、状況が変わった。

ベルトを外す男、ズボンを脱ぐ男。

私の服を引き裂く者も、スカートを引きずり下ろそうとする者もいた。

必死にもがき、どうにかスマホを手にして110番にかけた。

だが、この端末は恭弥に持たされた専用機で、緊急通報まで制限されていた。

ほかに手段はなく、緊急連絡先に発信した。

電話はつながったが、出たのは真奈だった。

「栞、恭弥はお風呂に入ってるの。用があるなら、出てからにしてくれる?」

その瞬間、すべてを悟った。

この男たちが、誰の命令で動いているのか。

けれど、分かったところで何になるのだろう。

その後の20分間、私の世界には絶望しか残っていなかった。

バスルームから出てきた恭弥は、スマホに残った着信履歴を見つけた。

「さっき、栞から何の電話だった?」

真奈は脚を組んだまま答えた。

「知らない。あなたはお風呂だって言って切ったわ」

恭弥は眉をひそめ、その場でかけ直した。

呼び出し音は何度も鳴ったが、誰も出なかった。

彼は困ったように息を吐いた。

「まだ意地を張ってるのか」

だが次の瞬間、一件の速報が画面に表示された。

【女性が複数の男から性的暴行を受けたのち、川へ身を投げた可能性。警察が捜索中】

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