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第4話

ผู้เขียน: やまいま
スマホの画面が、また光る。

若樹からのボイスメッセージだった。

【清。マイクロカプセルのことは、そんなに気にしなくていい】

【尚美は見た目のことをすごく気にしてるんだ。もともと肌がきれいだから、胃の治療に使うより、美容目的で使ったほうが効果も分かりやすい】

【お前はお姉ちゃんなんだから、少しぐらい譲ってあげよう?】

【その代わり、別の体にいいものを買ってあげる。同じことだから】

その声は、どこまでも優しい。

まるで、私がわがままを言っているだけみたいに。

私は最後まで聞き終えると、静かにスマホの電源を落とした。

そしてクローゼットの一番奥、隠し収納から二つの書類を取り出す。

一つは、保有株式の譲渡放棄届。もう一つは、何も書かれていない離婚届。

私は床に座り込み、一文字ずつ、ゆっくりと必要事項を書き込んでいく。

上場記念パーティーは、市内でも最高級のホテルで開かれる。

ステージの中央には尚美が立っていた。

首元には、代々わが家に受け継がれてきたネックレスが輝いている。

私は黒いスーツを身につけ、会場の裏口から静かに入る。

壇上では若樹がマイクを握り、集まった招待客を見渡していた。

その視線が私のいる場所でほんの半秒だけ止まる。そして彼は口を開く。

「本日は、会社の上場という節目に加えて、もう一つ皆さんへご報告があります」

彼は体を少し横へ向け、尚美を見つめる。その眼差しは、とても優しい。

「俺が最も苦しい時期を支えてくれたのは、尚美です。

感謝の気持ちを込めて、当社株式の30%を贈与することをここで発表します」

会場は割れんばかりの拍手に包まれる。

最前列では、両親と兄は、誰よりも力いっぱい拍手を送っていた。

まるでこの場にいる私は、最初から存在しない人間みたいだった。

七年前も、同じだった。

あの頃、私はようやくこの家へ迎えられたばかりだった。

田舎で育った私は、ナイフとフォークの使い方さえ知らない。

初めての家族との食事会で、スプーンを逆向きに持ってしまった。和子は眉をひそめて顔を背け、真人は遠慮もなく笑った。

そんな中で、若樹だけは何も言わず、自分のスプーンをそっと持ち替えて見せた。

こう持てばいい。

言葉はなくても、その仕草だけで十分伝わった。

食事が終わったあと、彼は私を呼び止めた。しゃがみ込むと、新しいフラットシューズを私の足元へ置いた。

「履いてみて。サイズは合うはずだから」

23.5センチ。

それは、私の足にぴったりのサイズだった。

あの一足の靴がきっかけで、私は若樹を、どうしようもないほど好きになった。

そして、その恋に縛られたまま、七年間、一歩も前へ進めなかった。

だけど今、私は自分で買った靴を履き、書類の入った封筒をしっかり握り締め、一歩ずつ若樹の前まで歩いていく。

若樹はわずかに眉を寄せ、周囲に聞こえないよう声を落とした。「清。いい子だから、今は下がってくれ。帰ったらちゃんと埋め合わせを……」

私は何も答えない。

封筒から書類の束を取り出すと、そのまま彼の顔へ向かって投げつけた。

紙が宙を舞い、一枚が彼の足元へ落ちる。

それは胃切除手術の同意書だった。

若樹の表情が、一瞬で凍りつく。「清……」

私はまっすぐ彼を見つめる。その声は、自分でも驚くほど静かだった。

「若樹。覚えてる?私に借りがある。この命に代えてでも、一生かけて恩を返すって言ったこと」

若樹は眉をひそめる。まるで私が責め立てていると思ったのだろう。

「もちろん覚えてる。だから何度も言わなくても分かってる。清、今日は会社にとって大切な日なんだ。話ならあとで……」

「違う」

私は彼の言葉を遮る。

そして封筒から離婚届を取り出す。

それを見た瞬間、若樹の顔から血の気が引く。震える手で私の手首をつかもうとする。

私は一歩下がり、その手をかわした。

「言いたかったのは、借りはもう返した。だから今日で終わり。これから先、私たちは生きていても死んでも、二度と会うことはない」

そう言い残し、私は振り返ることなくステージを降りる。

背後では若樹が必死に私の名前を叫んでいる。それでも私は、一度も振り返らなかった。

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