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第23話

Auteur: 小雨さま
午後、看護師がいつものように病室の巡回をしていた。

午前中に入院したばかりの患者のベッドは、すでに空になっている。

新年の雰囲気に包まれた街を、男が酒瓶を片手にふらつきながら歩いていた。その姿は、賑やかな景色の中でひときわ寂しげに浮いて見える。

昴はぼんやりとした目を開け、手にした酒を一口あおった。

「憂いを癒やすものは……」

話の途中で、彼は突然口を閉じ、よろめきながら壁際まで走り、「うっ」と吐き出した。

吐いても吐いても止まらないようで、息も絶え絶えになる。

彼は壁に手をつき、口元をぬぐうと、そのまま壁を伝って座り込んだ。

ふと視線を向けると、向かい側では若い男女の群れが煙草の煙に包まれていた。

男の手が女の肩に置かれ、二人は笑いながら互いの煙草を口元に運び合っていた。

突然、昴が何かを見つけたように立ち上がり、その方向へ駆け出した。

「千秋!」

彼は煙草を差し出す男を押しのけ、女を強く抱きしめ、口の中で千秋の名を叫んだ。

「千秋、俺を探しに来てくれたのか?」

抱きしめられた女は突然の行動に驚き、罵りながら必死に彼を突き放そうとした。

だが、昴はまるで
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