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第226話

作者: 歩々花咲
「知らん!」

照平はすぐに首を振った。

そして付け加えた。

「それに電源も切れてる」

大ネタが暴露されてから苑は照平にとっては一方的に連絡が取れなくなった。

照平が苑に電話をかけても話し中か通話中。

照平はブロックされたのだ。

たった今誰かが蒼真の奥様がなぜ迎えに来ないのかと尋ねた時、照平はまた苑に電話をかけた。

結果は電源オフだった。

蒼真は照平を一瞥した。

「見つからなかったら後で話そう」

え?

これは照平を脅しているのか?!

俺に何の関係が?

蒼真の沈んだ顔を見て照平は口元まで出かかった言葉を飲み込み尋ねた。

「どこへ行く」

「お前は今俺がどこへ行くべきだと思う」

蒼真の声は陰鬱だった。

照平は蒼真の体中の傷を一瞥しそして心の中で自業自得だと嘆いた。

運転手に命じた。

「病院へ」

「この程度の傷で俺の命は取れん。嫁さんを探しに行く」

蒼真の言葉に照平の口元がわずかに引きつった。

「彼女は電源を切ってると言っただろう……」

照平はそこまで言うと口を噤み、そして歯ぎしりした。

「俺がお前らに借りがあるんだ」

照平は電話をかけた。

「次男坊の奥様がどこにいるか調べてくれ。三分以内だ。遅れたら……」

照平は蒼真を一瞥した。

「お前の次男坊様がお前に人の血のを付けたパンを食わせてやる」

電話の向こうはすぐに言った。

「食えませんよ。他の人に取っておいてください。奥様は飛行機に乗られました。三十分前に見ました。今飛行機はちょうど離陸したところです。高度は……」

電話の声がはっきりと聞こえてきた。

照平は蒼真を見た。

蒼真の固く結ばれた眉は蒼真の祖母の言葉を借りればロバ一頭を繋げるほどだった。

「高度が重要か!重要なのはどこへ行くか調べることだ。三分だ、お前には三分しかない」

照平は相手の無駄口を遮った。

「次男坊。お前の嫁さん、お前が出てきてやられるのを恐れて逃げたんじゃねえか」

照平はすでに確認済みだった。

すべての情報は苑が流したものだ。

これが照平がブロックされた理由でもある。

苑はおそらく照平が面倒をかけるのを恐れたのだろう。

それなりに自覚はあるらしい。

蒼真は車の外を見た。

「佳奈の方はどうなってる」

「あまり良くない。メディアが彼女のところに押しかけてる」

照平はそう
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