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愛想を尽かした妻は二度と振り返らない
愛想を尽かした妻は二度と振り返らない
Autor: ネズミマン

第1話

Autor: ネズミマン
息子の六歳の誕生日に、夫の綾瀬厚司(あやせ あつし)は弟の妻を一晩中看病し、帰ってこなかった。

その義妹から足を捻挫したという電話があった、ただそれだけの理由で。

私は厚司に何十回も電話をかけたが、すべて着信拒否された。

ふとSNSを開くと、義妹のSNSが目に飛び込んできた。

【お義兄さんってばマジ神!電話一本ですぐ飛んで来てくれたの】

添付された写真には、彼女の細い足首を握る厚司の手が写っていた。

私は絶望で胸が張り裂けそうになりながら、彼と綾瀬梨奈(あやせ りな)がこの一晩何をやっていたのかを問い詰めた。

だが、彼はただ冷ややかな目で私を一瞥しただけだった。「まともな考え方ができないのか?お前、俺にヒスる以外に脳がないのか?」

息子まで理解できないといった顔をした。「パパは叔母さんを一晩看病してあげただけじゃん。ママ、なんでそんな意地悪言うの?」

この父子二人の冷たさにまたしても深く傷つけられ、私はついに未練を断ち切った。

システムを呼び出し、この世界から去ることを決意した。

「宿主、承知いたしました。すぐに脱出ルートを準備します。ご家族にお別れを告げるための猶予は七日間です」

システムの穏やかな声を聞き、私は少し呆然とした。

しばらくして、無理に笑顔を作り、「ありがとう」と答えた。

家族との別れか。もし私が消えると知ったら、厚司と息子はきっと大喜びするんだろうな。

五年前、任務を達成した後、私はこの世界に残って厚司と共に余生を過ごすことを選んだ。あの時、システムは忠告してくれたのに、私は耳を貸さず、「彼は一生私を愛してくれる」と断言したのだ。

まさか、たった数年で私がシステムを呼び出し、元の世界に帰りたいとお願いするようになるとは思わなかった。

リビングでどれくらい座っていただろうか。ようやく厚司が帰ってきた。

彼は私に歩み寄り、申し訳なさそうな表情を作った。「梨奈の捻挫が思ったより酷くて、帰りが遅くなっちゃったよ。もし体調が悪いなら、明日にでも源人(みなと)の誕生祝いを延期しようか?」

そう言って、彼は私の肩に手を伸ばしてきた。

私はその手をそっと払い除け、首を横に振った。「大丈夫よ。ただ、あなたが帰ってきたのに気づかなかっただけ」

厚司は私の顔色をうかがいながら、探るように言った。「入ってきた時、何度も呼んだのに返事がないから、まだ怒ってるのかと思ったよ」

彼はいつもそうやって探ってくる。でも、私は彼が怒るかどうかなんてどうでもよかった。私が少しでも感情をぶつければ、彼は「聞き分けがない」と嫌がるのだから。

一緒にいて七年、私はいつまで経っても彼の本心が読めない。

昔は、何度もわざと私をからかい、私が甘えると嬉しそうに笑った。私を抱きしめて「その甘える姿が一番好きだ」と言ってくれたものだ。

でも、いつからだろう。彼は梨奈のことしか見えなくなっていた。

私は自分の耳を指差し、冗談めかして彼に告げた。「よく聞こえなかったの。たぶん、そのうち耳が聞こえなくなるわ」

実は、この症状はずっと前から現れていた。ただ最近になってどんどん悪化している。

かつて任務を達成した時、私は「この世界に残る」と選んだ。

システムは、攻略で得た感情は長続きしないと忠告した。

それでも私は、私と厚司だけは例外だと固く信じていた。

システムは私に言った。「もしターゲットのあなたへの愛が薄れれば、あなたの五感もそれに伴って一つずつ奪われていきます」

厚司は眉をひそめ、私の耳元に顔を近づけた。「帆波(ほなみ)、まだ怒ってるのか?分かってるだろ、梨奈だって本当に困っていなきゃ俺に頼ったりしないって。そんなにカリカリすることないだろ?」

彼の声が耳元で大きくなり、ようやくはっきりと聞き取れた。

私は彼を見つめ、静かに尋ねた。「困ってたって?家にお手伝いさんもいればお抱えの運転手だっているじゃない。誰に病院へ送ってもらっても同じでしょ?どうしても義理の兄であるあなたが行かなきゃならないの?」

厚司はがっかりしたような顔で私を見た。「帆波、お前昔はそんな女じゃなかっただろ?梨奈は俺たちの義妹だぞ。弟が死んで、俺が少し面倒を見てやって何が悪いんだ?そんなに大げさに騒ぎ立てるなよ」
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