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第261話

Author: ラクオン
来依があんなに真剣な顔を見せるのは、本当に珍しいことだった。

その瞬間、胸の奥に、なんとも言えない不安がせり上がってくる。

まるで、なにかが音を立てて壊れてしまう前触れのように。

私は彼女の目をじっと見つめ、そっと唇を噛んだ。

「覚悟はできてる。話して」

「実は……」

来依は言いにくそうに口をつぐみ、歯を食いしばってから、ようやく意を決したように続けた。

「大学のときに、保健室に連れて行ってくれたり、お弁当を届けてくれたりしてた人……あれ、江川じゃなかったんだよ」

……え?

頭の中が、ぶわっと真っ白になる。

一瞬、思考が全部止まった。

どれくらい経っただろう。ようやく意識が戻ってきたとき、胸の奥に大きな石が落ちたみたいに苦しくて、声が震えた。

「本当……なの?」

わかってた。

来依がここまで言うってことは、もうそれが事実なんだって、心のどこかで理解してた。

彼女は、このことが私にとってどれほど大きな意味を持つかを一番よく知っている。

確信がなければ、こんなふうに口に出すはずがない。

でも……

じゃあ、私がこの何年も抱えてきた気持ちは、一体何だったの?
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