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第999話

Author: 楽恩
「薬、塗ってもらわないと」

南は来依の様子を見て、しばし黙ってから言った。

「看護師を呼びましょう」

鷹は人を遣わし、間もなく日本人の看護師がやってきた。

彼女は多くを語らず、ほとんど無言だった。

だが、手際よく丁寧に来依の傷口を処置していった。

最後に、来依の手を触れながら言った。

「ずっと濡れた服を着ていちゃダメですよ。肌が熱くなってる。熱出す前に着替えた方がいいです」

鷹は小さく頷いた。

南も、もちろんその言葉を聞いていた。

「隣で着替えられるから」

「君も着替えて」

南は石川への出張に行く際、着替えを持ってきていた。

来依が誘拐されたと聞き、そのまま飛んできたので、スーツケースごと持ってきていた。

体格もほぼ同じなので、服のサイズも問題ない。

ただ、この状況では来依が着替える気になるかは分からない。

「あなたが倒れたらダメよ。これから海人のそばにいたいんでしょう?」

来依は南を一瞥し、泣き声交じりに言った。

「でも、私が着替えてる間に、もし何かあったら……」

「大丈夫、何も起きない。俺が保証する」

鷹が言った。

南は、なだめるように半ば押しながら、来依を連れて着替えに向かった。

服を脱がせると、来依の身体には無数の小さな水疱ができていて、中には破れて衣服に張り付いているものもあった。

それでも、来依はまるで痛みを感じていないかのように、黙って新しい服を手にしていた。

「動くなってば!」

南が珍しく罵声をあげた。

心の中で、青城のことを何度も八つ裂きにしていた。

あのライブ配信を、彼女は目にしていた。

あのとき来依が叫んだ瞬間、心が張り裂けそうだった。

画面には湯気が立ち込めていた。あの水がどれだけ熱かったか、想像に難くない。

だが、先ほどは混乱していて、来依が泣き続けていたため、ひたすら慰めることに集中していた。

彼女が壊れてしまうのが怖かった。

「薬を塗らないとダメ。感染して熱が出たら、もっと辛くなるわ」

南は病室の扉を少しだけ開け、鷹に声をかけた。

鷹はすぐに先ほどの看護師を呼び戻した。

看護師は薬を塗りながら言った。

「病院のパジャマに着替えてください。点滴をしますので」

南は来依にパジャマを着せ、看護師は点滴を準備した。

「終わったら、呼んでくださいね」

「はい、ありがとう
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