로그인私は歩みながら、さりげなく彼らの表情を窺った。
この中にも、私を裏切った人がいるんだろうか? 誰もが、私の容姿に目を奪われた顔をする私が朔夜に近づいたのは、決して無駄ではなかった。いよいよ、あなたが“凛音”について語るのね――かすかに体が震えたが、朔夜には気づかれないように努力した。「高遠凛音――それが俺の元婚約者だ。彼女は、馬鹿なことをして死んだ。」どくんと、心臓がうるさいくらいに音を立てた。本人を前にして、よくも……!一瞬で、私の脳裏にあの日の記憶が蘇ってきた。それでも私は真剣に話を聞くふりをして、憎しみに耐えた。耐えなければ、真相に辿り着くことができないからだ。「凛音は、会社の信頼を失墜させ、横領事件を起こして――事故に巻き込まれて死んだ。それまで俺は彼女を――心の底から信頼していたのに。裏切られた……あの日から、俺は余計に誰も信じられなくなった。」え……?それは衝撃の言葉で、私は一瞬耳を疑った。朔夜が……私を、信じていた?いいえ、違う。きっとなにかの間違い。そう言って、自分の犯した罪を、都合よく無かったことにするつもりだろう。だってそうじゃないと、辻褄が合わない……「その婚約者さんは、なぜ横領事件を起こしたんでしょうか?動機はわかったんですか?」私は声が震えないよう最新の注意を払いながら、朔夜に尋ねた。あくまで穏やかに。ちょっとした好奇心を装って。「わからない……ただ、周りが言うには、鷹司グループの持つ財力に目がくらんで、犯行に及んだのではないかと。」……私がそんなこと、思うわけないでしょう!私はただ、あなたの隣にいられるだけで幸せだった。あなたの働いている横顔が好きだった。好きな人を裏切ってお金を
オフィスの外まで朔夜が追いかけてきて、腕を掴んだ。他の部下たちが何事かと慌てている。 「月島光咲、待てと言っているだろう。」その顔つきは明らかに怒りを表し、今にも私をその場で殴りそうな勢いだった。手を上げられたことは一度もなかったのに。 「婚約者はいいんですか?」私は抵抗をし、朔夜から逃れようと試みる。周囲が本格的にざわつき始めたところで、朔夜は我に返ったように、私の腕を離した。痛い……。腕も、心臓も。青いケシの花びらがまた疼くように。「はあ。ここで揉めても仕方ない。 月島さん。よければ会社のカフェカウンターで待っていていただけませんか? 仕事の話があります。 用を済ませたら、すぐ行きますので。」なんで……いつもみたいにすぐ解放してくれないの?朔夜の真剣な眼差しから逃れるには容易ではなく、仕方なく私は頷いた。ここは人目もあるし、あまり目立ちたくない。 「……わかりました。」仕事の要件だけ聞こう。それ以外は受け入れずに……ふと朔夜のオフィスの方を見ると――開け放たれたドアの付近から、工藤という女性が私を憎らしげに見つめていた。 朔夜はすぐに私を迎えに来て、『一緒に食事をしよう』と言い出した。一体、何を考えているのだろう?ますます、朔夜のことがわからない。さっき、キスされそうになったことも、まだ理解できていないのに……! 珍しく朔夜は運転手なしで、自分で車を運転するという。助手席に座らされ、シートベルトを閉めるように促された。「どこに行くんですか?私的なことならお断りです。」「仕事の話だと言っているだろう。」仕事の話――ずっとその一点張り。 「あの、婚約者さんは……?」思わずそう尋ねると、一瞬、朔夜の表情が険しくなった。
朔夜専用のオフィスに入り、ひとまず愛想良く挨拶をした。「お待たせしました。朔夜さん。」だが、呼び出した本人、朔夜の方は相変わらず無愛想に私を一瞥しただけ。そんな態度をとるなら、一体なんのために呼んだのだろう。私がいつものように呆れた瞬間――「よくきたな。体は平気か?」「え……?」「事故にあったそうじゃないか。それもアパートが半壊するほどの。その姿を見れば無事だったのは分かるが、他に怪我はなかったか?」朔夜が――私を心配して――「月島さん?」「あ、いえ。ちょっと意外で。はい、大丈夫です。この通り無事でした。」「……もはや、あなたの“大丈夫”は口癖だな。たまには、大丈夫じゃないと言ってみたらどうなんだ?」「え……?」朔夜は私に近づき、眉尻を上げた。もしかして、怒っている……?「どうして、俺じゃなく、新に頼ったんだ?運転手があなたを送った直後の事故だろう。頼るのは、新じゃなくて俺だったんじゃないのか?」彼はむっとしたように顔を近づけ、私に迫った。なにが起きているのだろう。私の目的は朔夜に接近し、真実を暴くことだったが、こんなふうに近づかれるためじゃない。それが、なぜ、こんなことに――「今自分がどんな状況にあるのか、分かっているのか?」彼が怒っている理由を見つけないと。私は後ずさりしながら、朔夜を見つめた。「命を……狙われています。」「そうだ。あなたは、鷹司家の家族オフィスで狙われ、俺が招待したレセプションで狙われた。そして――爆発事故に巻き込まれた。爆発事故の詳細はわからないが……確かに
朔夜からの電話はひつこく続いた。「はあ。だから、なんだって言うんだ。光咲さんは俺が見てるから大丈夫だって言ってるのに。」新はようやく電話を切ったが、苛立っているようだった。「どうしたんですか?朔夜さんはなんて?」「なんか……光咲さんのことは自分にも責任があるから、迎えに行くだのなんだの。ちょっと怖いくらいひつこかったな。」「そう……なんですね。」 まさか、家族オフィスでの調査のことで、朔夜が罪悪感を?あの冷酷な朔夜が……?新が座っていたソファから立ち上がった。「とにかく、朔夜から何を言われても従う必要なんてないからね。光咲さんは、ここにいればいいんだから。」「ありがとう……ございます。」私の幼馴染は、本気で光咲を心配してくれている。それが嬉しかった。自然と笑みが溢れるほどに。「……その笑った顔。……にてるなあ。」「え?」「ううん、なんでもない。さて、そろそろ俺は行かないと。」名残惜しそうに新は振り返り、やがて部屋から立ち去って行った。一人になった私は、ベッドに仰向けに寝転がった。ここ数日色々なことがありすぎて、なんだか疲れた。命を狙われてるのも分かってる。凛音の事件を追う限り、こういったことはくり返されるだろう。でも私は、知らなければいけない。あの日の真相に辿り着くまで――復讐のために。だから歩みを止めることはできない。「どのみち、やるしかない。花びらが消えていく事実は変わらないんだから……」顔を塞ぎ、目を閉じる。背中のケシが脳裏に浮かんだ。あと一人、アザを持つ人は誰なんだろう?私に死んでほしくなかったのは―
新が連れてきてくれたのは、超高層のホテルだった。ここも、深瀬リゾートの所有する豪華ホテルの一つで、政府の要人や、政治家がよく利用するという。分厚いコンクリートに囲まれた部屋に入ると、ようやく張り詰めていた緊張が解けた。「ここなら、セキリュティもばっちりだし、警備もいる。狙われることもないと思うよ。」新は私の荷物を運び終わって、振り向いた。彼は、ここにくるまでに、生活に必要なものを買い揃えてくれた。爆発で、何もかもめちゃくちゃになってしまったから。 「何から何まで、ありがとう。新さん。」そう言うと、新は優しく微笑んだ。「気にしなくていいよ、光咲さん。」「そうは言っても、本当に急に電話して迎えに来てほしいだなんて……。 あなたを困らせてごめんなさい。」私は心の底から謝った。巻き込んでごめんね――と。「本当に気にしないで。前にも言ったじゃないか。あなたを放っておけないと。 光咲さんの力になりたいんだ。」彼は本当に何も気にしてないように、爽やかに笑った。相変わらず優しい人。罪悪感で胸が痛くなるくらい。とにかく、ここのホテルは自由に使っていいと言われた。部屋の中にはシャワールームもあるし、飲み物も完備されている。もしなにか必要なものがあれば、フロントに連絡すれば準備してくれるらしい。警察から事情を聞いた新は、私のことを本当に心配してくれているようだった。彼はそっと私に近づき、労るような視線を向けた。 「それにしても大変だったね。立て続けに誰かに襲われた上に、まさか家が爆発するなんて……。爆発の原因はまだ分からないんだろ?」新に、どこまで本当のことを話していいんだろう。 ただ、彼を信頼したいという気持ちと、巻き込みたくないという思いが同時に浮かんでしまう。でも、復讐に必要なら――「もしかすると、鷹司家の家族オフィスで、贋作を見つけたことが原因かもしれません。」
朔夜に説教をされ、燈は焦っていた。「兄さん?」彼女は頼りなげに朔夜の名前を呼び、そっと腕に触れた。あの時みたいに。「とにかく、これ以上凛音のことに触れるな。」「兄さん――」ついには朔夜が燈を黙らせた。燈は言葉を詰まらせたように、それ以上反論しようとはしなかった。まさか、朔夜が燈に怒鳴るなんて。珍しいこともあるのね。絶対的な信頼を築いていたはずの二人。その絆が壊れていく様子は、悪くない。「兄さん、怒らないで。私は兄さんのためを思って言ってるのに。」燈は必死で朔夜の機嫌を取ろうとした。だが、その一方で――私は見逃さなかった。燈が唇を強く噛み締めたのを。あれは燈のくせだ。苛立った時に出てしまう。以前から燈は、表向きは穏やかでも、裏ではなにを考えているのか分からないところがあった。まさに腹の底に、黒い感情を隠しているかのように。燈にとって、本当に朔夜は尊敬できる兄なのだろうか?あなたは、本当に兄想いの妹なの?この違和感はなんだろう。光咲になってから、これまで見えなかったなにかが、徐々に見えてくる。真実。そして、真相――事件の鍵は、案外身近にあるのかもしれない。朔夜が相手をしなくなると、燈は諦めたように去っていった。『とにかく、これ以上兄さんに近づかないでよね!』最後まで私には悪態をついていたけれど。朔夜の母親といい、燈といい、人間の裏の顔は本当に分からないものだ。「すまない。燈は甘やかされて育ったから。」朔夜がぼそっと呟いた。この人が謝るなんて。「いえ……気にしてませんよ。」「悪い人間じゃないんだ。ただ……」なにかを言いかけて、朔夜は口を閉ざした。







