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第4話

Author: 苺ヨーグルト
動画の中、潤一と深雪は研究室で激しく抱き合い、貪り合うように口づけを交わしていた。

後半になるほど、目を覆いたくなるような内容だった。

その衝撃からまだ立ち直れずにいると、潤一が勢いよくドアを開け、険しい顔で私を職員室から連れ出すと、自分の研究室へ引きずるように連れて行った。

ドアを閉めるなり、思いきり頬を打たれた。

怒鳴り声が飛ぶ。

「お前、そこまで俺たちが憎いのか!

俺たちを破滅させないと気が済まないのか!」

深雪は潤一の椅子に座り、涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。

私を見る目には、はっきりとした憎しみがにじんでいる。それでも彼女は涙を拭い、潤一の腕にしがみつき、いかにも傷ついたような声で言う。

「もういいでしょ。麻耶の仕業だって決まったわけじゃないのに、そんなに怒らないで。

それに、彼女に協力してもらわなきゃいけないこともあるし」

何かがおかしいと感じ、私は言った。

「協力って何のこと?絶対にお断りよ」

けれど深雪は憐れっぽく涙を浮かべたまま、スマホでさっきのあの動画を再び流し始めた。

ただし今度は、映っているのが潤一と深雪ではなく、私と警備室の警備員に変わっていた。

スマホを奪い取ると、その動画はすでにネットに流出していた。

おまけに匿名の告発まで出回っている。【あのハレンチ動画の主は御影準教授とあの女子学生じゃない。このおじさんとおばさんだ!】

コメント欄には、次々と書き込みが並んでいた。

【このおばさん、御影準教授に片思いしてたのに振られて、腹いせに嘘の告発をしたらしいよ】

【やり口が気持ち悪すぎる。最低】

【このふたりも相当あくどい。人の職場で不倫したあげく、濡れ衣まで着せるとか】

【御影準教授、本当にお気の毒】

目を背けたくなるような罵倒のコメントを見つめながら、信じられない思いで潤一を見た。

少し間を置いてから、私は言った。

「……私を悪者にして、自分たちの罪を私になすりつけるつもりなのね。

潤一、あなた最低よ!

少しは良心が痛まないの?」

潤一は眼鏡を直しながら、まるで平然としていた。

「これが一番、被害を最小限に抑えられる方法なんだよ、麻耶。

お前は清掃の仕事を失ったところで、俺が生活の面倒を見れば済む。でも俺は、もうすぐ教授になれる。深雪だって、これから博士課程に進むんだ。

お前ひとりが犠牲になるだけで、俺たちふたりの将来が守れるなら、そのほうがずっとましだろ」

そう言い終えたところで、突然研究室のドアが開いた。記者たちがどっと押し寄せ、野次馬まで巻き込んで私を取り囲む。

矢継ぎ早に質問が飛んでくる。

「そちらの女性、どうしてこんなに悪質な手段で御影準教授を貶めようとしたんですか?」

「三文芝居の見過ぎじゃないですか?30歳で何の取り柄もない清掃員に、教授が惚れるとでも?」

「失礼ですが、ご家族に精神疾患の病歴などはありませんか?」

どの質問も棘だらけで、逃げ場がなかった。

最後には涙をこらえながら、努めて静かに言った。

「私が潤一の妻だと言ったら……皆さん、信じますか?」

一瞬、その場がしんと静まり返った。

けれど次の瞬間、どっと笑い声が湧き起こった。そこには、隠そうともしない嘲りと軽蔑が混じっていた。

いたたまれなくなった私は、人だかりをかき分け、とにかくその場を離れようとした。

そのときだった。

少し離れた場所から、刃物を手にした男が怒鳴り声を上げながら、こちらへ突進してきた。

「あのアバズレの栗坂はどこだ、出てこい!」

得意げだった深雪の顔が、一瞬で凍りついた。

その男は他でもない、彼女の前夫だった。

彼女は慌てて潤一の胸に逃げ込み、こっそり私を突き飛ばした。

男の刃先は、そのまま私へと向けられ、一瞬のためらいもなく振り下ろされた。

飛び散った血を浴びた記者が、恐怖のあまりマイクを放り出して逃げ出す。

辺りは大混乱に陥り、男もすぐに取り押さえられ、身動きが取れなくなった。

それまで深雪を守ることしか頭になかった潤一は、倒れた私を見た瞬間、目を見開いた。狂ったように駆け寄ってくる。

「麻耶!」

絶叫が耳に届くより早く、私はすでに大量の出血で意識を手放した。

次に目を開けたのは、病院のベッドの上だった。

潤一はベッドの傍らに座り込み、その唇は乾ききってひび割れていた。

私がようやく目を覚ましたのを見て、彼の顔に安堵の色が広がった。そして優しい声で言った。

「何か飲みたいものはある?買ってくるよ」

首を横に振ろうとした。

でも少し考えて、牛乳が飲みたいと答えた。

潤一が嬉しそうに病室を出て行くのを見送り、傷の痛みに耐えながら、私はベッドを抜け出し、ひとりで退院の手続きを済ませた。

近所の人に荷物を送る手配を頼んだあと、まだ本調子でない体を引きずるようにして、一番早いA市行きの便を予約した。

そして潤一が、温かいミルクをふたつ抱えて病室に急いで戻ってきたとき。

嬉しそうに「2種類買ってきたんだ。どっちが飲みたい?」と語りかけたそのとき。

そこにあったのは、風にはためくカーテンと、誰もいないベッドだけ。

私の姿は、もうどこにもなかった。

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