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第7話

Author: 9月の風
ほどなくして、陽葵は蒼真が言い放った「のうのうと生きていられると思うな」という言葉の真意を痛感することとなった。

彼は陽葵の収入源を徹底的に断ち、クレジットカードを凍結したばかりか、孤児院への資金援助まで全て撤回した。そのうえ、もし少しでも援助の手を差し伸べる企業があれば、この結城家を敵に回すものとみなす、とまで公言した。

離婚にはすでに同意したというのに、なぜここまで残酷に追い詰められなければならないのか、陽葵には理解できなかった。

だが、蒼真が突きつけてきたのはたった一言だった。「栞奈に謝れ」

「どうして私が彼女に謝らなければならないの?」

「お前のせいで、栞奈の手はまた傷を負ったんだ。医者からは、向こう1年は絵を描けないと言われた。謝って当然だろうが!」

これ以上心が傷つくことなどないと思っていた陽葵だったが、蒼真の言葉を聞いた瞬間、心臓を無数の針で刺し貫かれたような鋭い痛みが走った。

――じゃあ、私はどうなるの?夫婦として過ごしたこの3年間、蒼真はほんのわずかでも私の痛みを気遣ってくれたことがあっただろうか。

「……分かったわ。彼女に謝る」

再び結城家のリビングに立ち、陽葵が栞奈に向かって深く腰を折って謝罪した時、床に一滴の涙がポツリと落ちた。

「これで満足?」陽葵は蒼真に問いかけた。

蒼真はなぜか、陽葵のその強がるような顔を見ると、言い知れぬ苛立ちが胸の奥で渦巻くのを感じた。

彼は不機嫌そうに冷たく鼻を鳴らし、何も答えなかった。

代わりに執拗に食い下がってきたのは美香だった。愛娘が再び怪我をしたと聞くやいなや、彼女は胸を痛めて一日中栞奈のそばに付きっきりになっていた。

美香は激昂し、陽葵に何度も容赦なく平手を叩きつけた。「この疫病神!あんたのせいで栞奈が怪我をしたのよ。栞奈の手がどれほど大切なものか分かっているの!

どうしてあんたは栞奈から何でも奪おうとするの。どうして怪我をしたのが、あんたの手じゃないのよ!」

その瞬間、陽葵の目頭が赤く染まった。美香を見つめ返すその両目は、真っ赤に血走っていた。

かつて、彼女は数え切れないほど思い描いてきた。もしもいつの日か実の母親に巡り会えたなら、どんな言葉をかけてもらえるのだろうか。

自分を愛してくれるだろうか、と。

佳代は言っていた。迷子になった時、陽葵ちゃんはお姫様のような愛らしいドレスを着ていたから、お母さんはきっと、あなたを深く愛していたはずよ、と。

しかし思いもよらなかった。実の母親がこれほどまでに自分を嫌悪し、自分の手が傷つけばいいとまで呪ってくるなどと。

――でも、お母さんの願いはとうに叶っているわ。私の右手は、ずっと前に失われているのだから。

「何よ、その目は!」

美香は警戒と怨嗟の入り混じった声で陽葵に言い放った。「また何か企んで私たちに復讐しようって魂胆でしょ。うちの栞奈がやられっぱなしになると思ったら大間違いよ。もしこれ以上栞奈に指一本でも触れてみなさい、この命に代えてもただじゃおかないからね!」

栞奈がか弱い仕草で、美香の服の裾を引いた。「お母さん、そんな恐ろしいこと言わないで。私だって、お母さんに何かあるのは嫌よ。陽葵、文句があるなら私に言って。お母さんを傷つけないで」

互いを庇い合う母娘の茶番を目の当たりにし、陽葵は涙を滲ませながら自嘲の笑みを漏らした。

「安心して。私にそんな真似ができるわけないわ。あなたを傷つけたりしないし、あなたのお母さんを傷つけることもないから」

俯いた拍子に、陽葵の首元からネックレスがするりと滑り落ちた。

拾い上げようと陽葵が身をかがめた途端、美香が横から素早くそれを奪い取った。

「このネックレス……」美香は訝しげに声を上げた。「これ、栞奈のじゃない!どうしてあんたが持っているの?」

その三日月型のネックレスは、陽葵が迷子になる前から身につけていたもので、幼い頃からずっと肌身離さず持っていたものだった。

「返して、それは私のよ!」

陽葵はそう言って取り戻そうとしたが、蒼真に力ずくで押さえつけられた。

栞奈がすかさず口を挟む。「それはどう見ても私のものよ。ねえ蒼真、この前私がネックレスをなくしたって言ったの覚えてる?まさにこれのことよ!」

蒼真は陽葵を乱暴に突き飛ばし、怒声を浴びせた。「見つからなかったと言っていなかったか?なぜお前が持っている!お前は金に困って狂ったのか?ネックレス一本すら盗むとはな!」

「あの日、私は栞奈のネックレスなんて見ていないわ。このネックレスは私のものよ」

だが、陽葵がどれほど弁解しようと、彼らが信じてくれるはずもなかった。

「何が『私のもの』よ!これは私が自分の娘のために買ったものよ、見間違えるわけがないでしょう!」

美香は激怒し、陽葵の頬を力任せに張り飛ばした。「あんたって子は、どうしてここまで性根が腐っているの!栞奈の夫を奪い、彼女の手に怪我をさせたうえ、ネックレスまで盗むなんて。一体どんな親なら、あんたみたいな性悪な娘を産み落とせるっていうの!実の親が心底哀れだわ!」

強烈なビンタを食らい、陽葵の脳内でごうと耳鳴りが鳴り響いた。強く握りしめた拳の中で、爪が手のひらの肉に深く食い込んだ。何かを言い返そうと口を開きかけたものの、しばらくの間、何の声も発することができなかった。

自分が何を言ったところで全て無駄なのだと悟り、一瞬にして全身から力が抜け落ちていくのを感じた。

「……じゃあ、彼女に返して。もう要らないわ」

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