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第7話

작가: 結奈々
部屋の中を一通り見渡した彼の視線が、最後に柚香の手にあるスーツケースで止まった。

柔らかい声に真剣さを帯びて尋ねる。「ママ、それ、なんでスーツケース持ってるの?」

柚香は口を開きかけたが、すぐにはうまい言い訳が浮かばなかった。

「それはパパの荷物だよ」遥真が口を開き、息子の前にしゃがみ込む。視線の高さを合わせながら言った。「パパ、数日出張なんだ。その間、ママの言うことをちゃんと聞くんだぞ、わかった?」

陽翔は素直に頷く。「わかった」

「いい子だな」遥真は彼の頭を優しく撫でた。

「このおばさんは?」陽翔の視線が玲奈に向かう。

「パパの秘書だよ」遥真はまるで呼吸するように嘘をついた。「これから一緒に出張に行くんだ」

柚香はスーツケースの取っ手を握る手に力が入ったが、表情は崩さなかった。

遥真は立ち上がり、自然な仕草で彼女の手からスーツケースを受け取る。いつもと同じように、彼女の唇に軽くキスを落とし、穏やかな声で言った。「行ってくる。寂しくなったら電話して」

柚香は胸の奥にこみ上げる不快感を押し殺し、ぎこちなく返す。「うん」

「いい子だ」遥真は彼女の耳もとに手を伸ばし、落ちた髪をそっと耳にかける。その指先が耳の形をなぞるように滑り、最後に耳たぶをやわらかく指で弄んだ。「帰ってくるまで、待ってて」

「もう行きなよ。飛行機、間に合わなくなるよ」柚香は促した。

今の彼女にとって、彼と一秒でも近くにいること自体が耐えがたいほど嫌だ。

とにかく、早く出ていってほしい。

彼女の拒絶を感じ取った遥真は、わざと挑発するように身を屈め、唇に軽くキスを落とした。触れるだけの一瞬で、拒む間すら与えない。柚香が怒りをにじませて顔を上げた時には、もう彼はスーツケースを持って玲奈と一緒に部屋を出ていった。

「ママ」二人が去った後、陽翔がぽつりと声を出した。

柚香は気持ちを抑え、いつもの笑顔で向き合う。「どうしたの?」

陽翔は一度口を開きかけ、言い直した。「お昼の時間だよ。ご飯、食べに行こう」

「うん」柚香は頷いた。

――食事の間中、彼女の頭の中にはさっきのことが渦巻いていた。

あんなに平然とした顔で、息子に嘘をつけるなんて。私が浮気のことを陽翔に話すかもしれないとは思わないのだろうか。

それに、あのキス。他に女がいるくせに、どうしてまだ自分に触れるの。

そう思った瞬間、彼が持っていったスーツケースの中身を思い出した。あれには自分の身分証明書やパスポートなど、重要なものが全部入っている。

柚香はスマホを手に取り、メッセージを送った。【スーツケース、いつ返してくれるの?】

遥真はそれを見たが、返信はしなかった。一時間ほどして、彼のスマホに新しい通知が届く。

また柚香からだろうと思いきや、送ってきたのは陽翔だった。ボイスメッセージ。「パパ、今日のあのおばさん、ほんとは秘書じゃないでしょ?」

遥真は一瞬、動きを止めた。

そんなことを聞かれるとは思わなかった。返事を打とうとしたが、すぐに思い直す。

――出張って言った手前、この時間は飛行機の中のはずだ。今返信したら、嘘がばれる。

陽翔は部屋でじっと待っている。

もしパパから返信が来たら、それは出張が嘘だという証拠になる。

だが、遥真はそんな凡ミスをする男ではない。

一方その頃、柚香は何時間経っても彼からの返信が来ず、しびれを切らして電話をかけた。

通話が繋がった瞬間、彼女が口を開く前に、向こうから別の女の声が聞こえてきた。「遥真、お風呂あがったよ」

「先に部屋で休んでて。電話、出るから」遥真の低く落ち着いた声が、やけに優しく響いた。
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尚美
サブスクに登録して2/12までokなはずなのに続きが読めません、何故?
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