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第4話

مؤلف: 喜々(きき)
凛也の声には、かすかな嘲りが混じっていた。

数秒、視線がぶつかる。

澪はふっと笑って、再びインタビューの状態に戻った。

「神崎社長が答えにくいのでしたら、無理には伺いません。次の話題に移りますね……」

取材は二時間続いた。

事業の中長期計画から私生活まで。澪は丁寧に尋ねている。

終わりの合図が出て、澪が立ち上がった。

「本日はありがとうございました」

手を差し出すと、凛也は視線を下ろし、澪の指先に落とした。

そのまま、無感情に握る。

「……今後とも、よろしく」

澪も微笑みながら無感情の声で感謝を伝えた。

「ご協力ありがとうございました。神崎社長」

凛也を見送り、襟元のピンマイクを外して、そばのアシスタントに渡した。

受け取ったアシスタントは、目をきらきらしながら言った。

「澪さん、神崎社長みたいな人は、いったいどんな女性と結婚するんですかね?お金もあるし、顔もいいし……」

澪は少し考えて、短く答えた。

「親が決めた政略結婚でしょう」

「ですよねえ。このレベルの人って、だいたい政略結婚ですもんね」

澪は笑って、そこで話を切った。

スタジオを出て、数歩行ったところで、ポケットが震えた。

画面にはLINEの通知。澪は指先で開く。

【凛也:今夜、本邸で夕食】

ごく簡単な言葉。

質問ではなくて通知みたいだ。

澪はすぐ返した。

【澪:まだ家に、離婚のこと言ってないの?】

三十秒ほどして返信が来た。

【凛也:おまえもう言った?】

澪は唇を噛む。

自分も言っていない。西園寺家はいま、そんな話をできる空気ではなかった。

返事を考えていると、追い打ちみたいに二通目が来た。

【凛也:運転手を迎えに行かせよう】

断る余地のない言い方。けれど澪は短く返す。

【澪:自分で行くから】

——もともと、この結婚は「そういうもの」だった。

澪と凛也は、典型的な政略結婚。

三歳のころ、両家の祖父たちが勝手に縁談を決めた。世代をまたいだ付き合いがあり、さらに企業同士の利害関係もあるため、結びつくのは自然だ。

この婚姻が終わっても、利益も縁も残る。

離婚したところで、両家の関係がいきなり切れることはない。

退勤後。

澪は車を走らせ、神崎家の本家に着いた。

降りたとたん、庭先で電話をしている凛也が目に入る。

黒いシャツにスラックス。背中を向けたまま、片手はポケット。袖を肘までまくっていて、引き締まった前腕が覗いていた。

凛也は鼻で笑いながら電話の相手に言った。

「離婚するよ。あいつがどうしても離婚したいなら、俺が止められないんだよ」

少し間を置いて、同じ温度で続けた。

「まあ。離婚しても、別に大した話じゃない」

その「あいつ」は澪のことだ。

凛也はいつだって、結婚も離婚も、雲の上の出来事みたいに口にする。

「決めたならそれでいい。後悔するな」

結婚のとき、その言葉は胸を跳ねさせた。

けれど離婚のいま、同じ言葉で胸は凪いでいた。

半年間、胸の奥をざわつかせていた風は、もう吹かない。

電話を切った凛也が振り返る。

澪が立っているのを見て、視線が止まった。

数秒。

澪が先に、よそ行きの一礼。

「神崎……社長」

その呼び方は、あまりにも他人行儀だった。

凛也の眉が、ほんのわずかに寄る。けれどすぐ口角を上げた。

「入ろう」

「ええ」

肩を並べて、大広間へ向かう。

足音が近づくと、襖の向こうから話し声が漏れてきた。

「澪ちゃんのところ、なにかあったの?」

「西園寺の会長が、外に女を囲ってるって。しかも、その相手に二人の子どもまで……息子と娘だってさ」

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  • 払拭できない、婚姻の色   第10話

    今度は、朱里からの返事がしばらく来なかった。たぶん、こっちの気持ちを察したんだろう。 もう少し間を置いて、一つのスタンプが飛んできた。【朱里:(ぎゅー)】【澪:大丈夫】【朱里:昨日さ、凛也と本邸に戻ったんでしょ。なにもなかった?】【澪:もう離婚した。なにが起きるっていうの】【朱里:男ってさ、愛と体はべつで動くものだから。とにかく、損だけはしないで】【澪:平気】短く返して、澪は画面を閉じた。次の瞬間、内線が鳴った。受話器を取ったとたん、早川編集長の声が耳に突き刺さる。「西園寺。ちょっと来い」「はい、編集長」電話を切って、澪は椅子を押し出す。編集長室のドアをノックして入ると、デスク前に誰かが立っていた。編集長は、その相手と話している。「ようこそ。入社おめでとう」編集長の顔つきは、いつもの冷えたそれとは別人みたいだ。営業スマイルを貼りつけ、まるで福の神でも迎え入れるみたいに。相手は上品に笑った。「これから、よろしくお願いいたします。編集長にも、いろいろご指導いただけると嬉しいです」「いやいや。神崎社長がいるんだ、俺がどうこう言える立場じゃない。むしろ、こっちが頼りたいくらいだよ」そんなやり取りの途中で、早川編集長が澪に気づいた。手で呼んで、笑いながら声を上げる。「西園寺。紹介する。こちら、新しく来たチーフ記者の牧野晴香(まきの はるか)さん」続けて、晴香に視線を移し、澪のほうへ手を向けた。「で、こっちは西園寺澪。これまでチーフを張ってきた。これからは二人で、週刊ルミナスを回してもらう。看板だからな。頼むぞ」二枚の看板、二本の腕。言い方は立派でも、空気は正直だった。「左腕」扱いの自分より、「右腕」扱いの晴香のほうが優先されているらしい。編集長が目で促す。先に挨拶しろ、と。晴香が振り向いて、二人の視線が絡んだ。澪は口元だけで、薄く笑う。「お久しぶりです」「澪ちゃん。ひさしぶり」仲良さげに聞こえるのに、どちらも手を差し出さない。さっき同窓グループをざわつかせていたあの「主役」、凛也の初恋相手はまさにこの晴香だ。椅子に座ったままの編集長が、今さら気づいたように目を丸くして、笑みを浮かべた。「……まさか、知り合いなのか?」「同窓です」澪はさらっ

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