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第3話

Author: サボらないにしちゃん
翌朝目を覚ました時、私の体温は39度まで上がっていた。

母が朝食に呼ぼうと部屋へ入ってきて、私の額に触れた途端、顔色をサッと変えた。

「どうしてこんなに熱いの!?」

クルーザーには専属の船医が同乗していたため、すぐに診察を受けた。

船医は体温を測り、喉を診て、解熱剤を処方してくれた。

「昨夜、潮風で冷えたのでしょう。安静にしていてください」

父が私に薬を飲むためのぬるま湯を一杯注いで手渡した。

「聞いたか?余計なことは考えず、おとなしく横になっていなさい」

私は小さく頷き、薬を飲んで再び眠りについた。

次に目を覚ました時、部屋の中はひどく息苦しく、喉はまるで刃物で切り裂かれたかのように痛んだ。

私はマスクをつけて、気分転換に外の空気を吸おうと部屋を出た。

廊下へ出た途端、豪が上層デッキからブランドもののギフトバッグを抱えて下りてくるのが見えた。

両親の足元には、綺麗にラッピングされた箱が二つ置かれている。

それどころか、研吾の両親までもが使用人に命じて、デッキへ次々とプレゼントを運ばせているところだった。

私は一瞬呆然とし、数秒経ってからようやく思い出した。

今日は茉白の誕生日だったのだ。

実は、私自身も彼女へのプレゼントをとっくに用意していた。

ヴィンテージの腕時計だ。

先月一緒にショッピングへ行った際、彼女がショーウィンドウ越しに熱心に見つめていた品だった。

彼女が欲しがっていたからこそ、私はそれを覚えていて、密かに買い求めていたのだ。

私は部屋へ引き返し、スーツケースを開けた。

その化粧箱は、畳んだ服の奥底に大切にしまってあった。

それを取り出し、長いこと見つめた末、私は再びケースの奥へと押し戻した。

もう、渡す気など失せていた。

スーツケースを閉めて再び部屋を出ようとした瞬間、廊下の向こうから研吾が歩いてくるのが見えた。

その手には、白桃の缶詰が一つ握られていた。

私の足が、その場にピタリと止まった。

このクルーザーには、何不自由なく高級品が揃っている。

輸入フルーツに極上のスイーツ、軽食から専属シェフに至るまで、両家がわざわざ手配した最高級のものばかりだ。

スーパーで売っているようなごくありふれた白桃の缶詰など、わざわざ船内に積み込む者などいるはずがなかった。

だからこそ一目見ただけで、それが乗船前に研吾が買い求めたものだと分かった。

子どもの頃、私は熱を出すと途端に食欲がなくなる体質だった。

お粥も喉を通らず、食事も一切受け付けないのに、冷やした白桃の缶詰だけは数口食べることができた。

幼い頃の研吾は、よく私をからかったものだ。

「みんな風邪の時はお粥なのに、お前は甘い桃缶じゃなきゃダメなんだからな」

それ以来、私が体調を崩すたび、言わなくても彼は必ず桃缶を買ってきてくれていた。

昨夜、氷のように冷え切ったはずの心が、その白桃の缶詰を目にした瞬間、情けなくもわずかに揺らぎ、温もりを求めてしまった。

出航する前から、彼は私が船上で体調を崩すことを心配してくれていたのだろうか、と。

研吾も私に気づいた。

「どうして出てきたんだ?医者から寝ていろと言われただろう」

「部屋が息苦しくて」

喉が痛くて、声はかすれていた。

「あまり外に長くいるなよ。薬はちゃんと時間通りに飲め」

そう言い残すと、彼は缶詰を手にしたまま階段を下りていった。

その白桃の缶詰を、私に差し出すことはなかった。

昼時になっても、私の喉の痛みは水一口すら飲み込めないほど悪化していた。

ベッドに横たわりながら、私は研吾とのトーク画面を見つめ続けた。

迷った末、桃缶をどこに置いたのかメッセージで聞こうとしたその時、階下から突如として陽気なバースデーソングが響き渡った。

「ハッピーバースデー・トゥー・ユー……」

部屋のドアを開けて階下を見下ろすと、サロンのテーブルには豪華な料理やケーキが所狭しと並べられていた。

主役の席に茉白が座り、全員が彼女を囲んでいる。

そして、私が先ほど自分のためのものだと思い込んでいたあの白桃の缶詰が、彼女の目の前にちょこんと置かれていたのだ。

茉白の瞳がじわりと潤んだ。

「研吾……どうして覚えていてくれたの?」

彼女の隣に腰掛けた研吾が、優しく微笑みかけた。

「大学の頃、話してくれただろう?実家の暮らしが苦しくて、子どもの頃は毎年の誕生日に、お母さんが桃の缶詰を一つだけ買ってくれたって。

大人になって何でも手に入るようになったら、かえって昔のあの味が恋しいって言ってたじゃないか」

今日のあの白桃の缶詰は、最初から私のためのものなどではなかったのだ。

続いて、誰もが競うようにプレゼントを渡し始めた。

豪は最新の一眼レフカメラを贈った。

研吾の母は上品な小箱を差し出し、微笑んだ。

「これからフォーマルな社交界に出る機会が増えるでしょうから、使ってちょうだい」

母も自分の選んだ贈り物を手渡した。

父も満足げに目を細めて言った。

「噂に聞いたよ、最近のプロジェクトを大成功させたそうじゃないか。若手なのに実に優秀だ!」

研吾の父も頷いた。

「この子は実家が一般家庭なのが惜しいくらいだ。環境さえ整えば、どこまで出世するか分からん器だよ」

茉白は全員の中心で温かい祝福を浴び、誰もが上機嫌で笑い合っていた。

マスクを着けたまま階段の踊り場に立ち尽くす私は、まるでその場に存在してはならない異物だった。

母が真っ先に私に気づき、咎めるように声を上げた。

「寧々、どうしてまた出てきたの?下りてきちゃダメよ。今日は茉白の誕生日なのよ。風邪をうつしたら大変でしょう」

私は何も言わず、踵を返して部屋に戻った。

ちょうどその時、薫からLINEの通知が届いた。

【もう出港したわ。あと1時間でそっちに着く】

あと1時間。あと1時間だけ耐えれば、私はこの悪夢から抜け出せる。

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