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3. 「異世界ほのぼの日記」㉖

작가: 佐行 院
last update 최신 업데이트: 2025-02-04 10:55:48

-㉖豪華な宴会と板前の過去-

 貸切った大宴会場で店の女将が日本でも今まで見たことない位の笑顔を見せていた、肌はとてもつるつるで皺1つない印象で年齢を感じさせない。何か秘密があるんだろうか、接客していた女将とは別に若女将が存在しており2人が笑顔で奥から出てきた。

女将「何かございまして?」

光「あ・・・、いや・・・、女将さんお綺麗な方だなと思いまして。」

女将「あらお上手ですこと、でも何も出ませんわよ。」

 と言いながら片手に持っていた熱燗をテーブルに置く、どうやらかなり嬉しかったみたいで女将がサービスしてくれた様だ、ただどこから出てきたかは分からないが。

若女将「女将、そろそろ・・・。」

女将「あら失礼、ではこの辺で一旦失礼致しますわ。」

若女将「あれ?また行っちゃった・・・、すみません。では鉄板の電源失礼致しますね。」

 知らぬ間に女将は瞬間移動で消えてしまっていた、若女将は気付かなかったらしく首を左右に振っている。一先ず、鉄板の電源を入れ温めだした。

 数分後、宴会場の外から女将、若女将、最後に板前の順番に3人が注文したコースのお肉を運んで来た。

女将「お待たせいたしました、『特上焼き肉松コース』のA5ランクのサーロインでございます。」

板前「1枚ずつお渡しさせて頂きますのでごゆっくりお楽しみください、味付けはシンプルにこちらの岩塩でどうぞ。」

 静かで厳格な風貌ながら落ち着きがあり優しさ溢れる口調で板前が説明する、どうやらこの人はここの板長らしい。

板前「板長、お待たせしました。」

板長「ありがとう、良かったらお客様の前で説明して差し上げて。」

板前「は、はい・・・。こ、こちらは・・・、カルビで・・・、ございます。甘く・・・、豊かな脂が・・・、ビールやご飯に・・・、ピッタリでございます。」

板前「ハハハ・・・、一応合格にしておこうか。すみませんね、こいつ支店からこの本店に配属になったばかりで緊張しているみたいなんです。でも可愛い奴なんですよ。」

 板長は意外と明るい人らしく気軽に声を掛けやすかった。

板長「今から2枚目と3枚目のサーロインを焼いていきます。別の鉄板では、ヤンチってんですが、こいつがカルビを焼いていきますのでお好みの味付けでどうぞ。腕は確かなので美味しく焼いてくれると思いますよ。」

 ヤンチが別の鉄板にカルビを丁寧に焼いて行った、お肉がゆっく
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    -㉗運命の出会いの話- ヤンチは少し抵抗した、いくら板長が勧めたからって自分が納得したものを店の商品として出したいらしい。 ヤンチも板長を信頼していた。店を開く前から、いや女将と出会う前からの話だという。板長は唐突に語り始めた。板長「ちょっと昔話にお付き合い頂けますかい。昔、王国軍で料理番と防衛の一部を任されていた一兵卒がいたんです。そいつは仕事と日常に疲れ刺激を求めていましたので定年間近で軍を辞めて冒険者になりました、最初は軍の時に作った貯金で買った装備でゆっくりと採集等の簡単なクエストを進めていたんです。 そんなある日、岩山の上で1人孤独に暮らしていた獣人(ウェアタイガー)がいたんです。そいつは生まれてから孤独の身で親のぬくもりも言葉も知らなかったらしく、ただただ空腹だったみたいなのでそいつに元一兵卒はクエストで捕った魔物の肉を採集で余ったハーブと一緒に焼いて食べさせました。 その味に感動を覚えたらしく獣人はちょこちょこ一兵卒について行くようになり、次第に料理に目覚めていきました。 ただこのままでは一兵卒から料理を学び辛かったからか、獣人はまず言葉を勉強するようになり次第に一兵卒の事を『親父』と呼ぶように・・・。」ヤンチ「親父、やめろよ・・・、照れるだろ!」板長「まぁ、良いじゃないか・・・。おっと失礼、そしてその一兵卒、いや私は獣人のヤンチと小さな屋台を出して暮らして行ったんです、それがこの店の起源でした。 だから私はこいつを信用しているんです。だからこいつの新作、食ってみて頂けませんか、勿論お題は結構ですから。」ヤンチ「でもあれは元々・・・、賄いだし・・・。」板長「良いだろ、それとこれは板長命令だ。」ヤンチ「では・・・、お待ちください・・・。」 ヤンチは調理場へと消えて行った、その間を繋ぐべく板長は焼き肉を続行し光らにビールやお酒を注ぎ続けた。ただその表情は今まで以上に楽しそうに、信頼する息子の成長を楽しみにする父親の様に。 そうこうしている内にヤンチが料理を持って来た、1品目は『黒豚のもみもみ焼き-出汁醤油風味-』。香ばしい香りが光らを楽しませ、薄めの豚肉でご飯を巻くとお代わりが止まらなくなる。隠し味の生姜が手助けしているらしい。 2品目は国産若鶏の混ぜご飯、炙った鶏の切り身を調味料と一緒にふっくらと炊かれた温かなご飯に混ぜて

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    -㉘買い物する魔獣・・・、さん?- 楽しかった宴会から数日が経過し、光は街のパン屋で仕事をしていた。街の中央ではいつも通り噴水が噴き出ている、ただ店前の市場がいつも以上に活気づいていたので街中を歩く人々はルンルンと楽しそうだ。 串焼き屋が数量多く焼いて在庫を大量に作っていたのでこれには光もテンションが爆上がりとなっていた。しかしやけに行列が多い、ランチタイムまで在庫が持ってくれたら良いのだが。 普段光が住む農耕地を中心とした住宅地は街の北側、銭湯は南側、そして先日の『ネフェテルサ王国レース場公園』が西側にある。さて、気になる東側は何なのだろうか。そしてもう1つ気になるのは大人の遊び場は見つけたが子供たちはどこで遊ぶのだろうかという事だ、きっと遊園地的なものがあるんだろうなと想像を膨らませていた。 それにしてもやたらと街中を右往左往するお客さんが多いので光の仕事もいつも以上に忙しくなっていた。 光はさり気なくミーシャに聞いてみた。ミーシャ「そりゃそうさね、今日から2週間は東側の出入口が開くからだよ。上級魔獣さん達がお買い物に来てんだ。」 上級魔獣・・・さん?!お買い物?!どういう事?!そう混乱する光を横目にお客さんは絶えない、ただ実際に東側の出入口に見に行く余裕がない。とりあえず光は仕事を終わらせてから改めて詳しく話を聞いてみる事にした。 お昼のピーク時を過ぎた頃には3時が近づいてきていた、ミーシャと休憩時間に入り串焼きを買いに行くついでに東側の出入口を見に行くことにした。ミーシャ「ほらご覧よ、700年以上生きてきた経験を重ねて理性と人語を話せるスキルを持つ上級魔獣さん達が出入口の守衛さんにカードを見せてるだろ?あのカードは人に決して危害を加えません、人間の行動に協力しますって約束の印なんだ。 王都が発行する特殊な書類にサインと拇印をして適性が認められた上級魔獣さん達だけがカードを貰えるって話さね、違反したらすぐに王国軍に連絡が入って討伐されるとかいう仕組みらしいわ。 出入口で身分証になるあのカードを提示して人間の姿に化ける事を条件に街に入れるようになるって訳さね。」 実際に東側の出入口へ見に行く事にした、丁度1体のレッドドラゴンが王国軍の守衛に止められている所だった。守衛「だからカードが無きゃ入れないって言ってるでしょ。」レッドドラゴン

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    -㉙会合の結果- 東側の出入口が開放されて数日、街中の人口密度が一時的に上昇しているこの状況に光がやっと慣れてきた今日この頃、街の掲示板に一際目立つ貼り紙が掲示されていた。『-ネフェテルサ国王・獣人族・鳥獣人族主催 ネフェテルサロックフェス 今年も開催-』 お堅い仕事に就きながらロックが好きな上に全人類平等を日々主張しているこの国の国王が街中に住む獣人族と鳥獣人族と協力して毎年開催しているフェスだそうだ。光の知り合いではパン屋のウェインと、マック・キェルダの双子の兄妹が新聞屋のナルとバンドを組み参加を表明していた。 そんな中、未だ東側の出入口からは上級魔獣や上級鳥魔獣がカードを提示して街に入って来ていた。どうやら今回のロックフェスは彼らの為のイベントらしく、各々に属する者たち同士の交流を主な理由としているものだった。 光がパン屋での仕事を終えると東側の出入口の手前でウェイン、マック、そしてキェルダが誰かを待っている様だった。光「ねぇ、ナルと待ち合わせ?」キェルダ「ああ、光ちゃんか。実はもうすぐあたいら3人の叔父さんが来ることになってんだよ。」光「えっ・・・、3人?!マックとキェルダが双子の兄妹なのは知ってるけど。」ウェイン「俺、こいつらの兄貴なの。そんで俺ら全員鳥獣人族だから。」光「なるほどね・・・、でも鳥獣人族だったら東側の出入口でなくても入れるんじゃない?」マック「俺らの叔父さんはコッカトリス、上級の鳥魔獣なんだ。」 すると、一際煌びやかな翼を羽ばたかせ1匹のコッカトリスが出入口の守衛にカードを提示しスーツ姿の男性に化けて街に入って来た。男性が兄妹に近づいて声を掛けた。男性「皆久しぶりだな、迎えに来てくれたか。」3人「デカルト叔父さん、待ってたよ。」ウェイン「今日はこの後予定あるの?」デカルト「もうそろそろ迎えが来ていると思ったんだが、そう言えばそちらの方は?」光「吉村 光です、3人とは同じパン屋でお仕事頂いております。」デカルト「光さんか、よろしくね。」 すると、街中に真っ黒で長いリムジンが入って来てまさかの国王が隣のバルファイ王国の国王と降りてきてデカルトの元にやって来た。国王「先輩、こちらにいらっしゃいましたか。」デカルト「おう、エラノダ。やっと来たか、早速行こうか。」隣国王「とりあえず早く会合を終わらせましょ

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    -㉚ロックフェスに向けて-エラノダ「いや、先輩私の台詞ですから。」 エラノダの弱めのツッコミでニュースが終わった瞬間に光の電話が鳴った、林田警部だ。林田(電話)「光さん、報告がありまして。」光「急ですね、唐突にどうされたんですか?」林田(電話)「私と利通、そして先日の板前のえっと・・・。」光「ヤンチさんですか?」林田「そうです、ヤンチ君です。私たち3人でバンドを組むことになりまして、今度のロックフェスを見に来て頂けませんか?」光「いいですけど、どうしてそんな組み合わせに?」林田(電話)「元々親子2人で出ようと話していたんですが、ヤンチ君が参加させてほしいと要望してきましてね、板長さんも推薦してきたんですよ。」光「でも3人共楽器なんて出来るんですか?」林田(電話)「まぁ、何とかなるでしょう。」 電話を切り冷蔵庫を開けて牛乳を1口飲んで学生の時自分もバンドを組んでた事を思い出していた、ただあの時のバンドメンバーとはよくある方向性の違いが理由で解散してしまったのだ。 一方その頃、王宮ではエラノダが他の国王達に相談を持ち掛けていた。自分達も出てみないかと。他の2人もノリ気になって早速練習しようとしていたが、物置に楽器やアンプ等を自分達で取りに行こうとしていた時に場内にいる王国軍の小隊長や大隊長、ましてや将軍クラスの者たちに全力で止められてしまった。将軍「国王様方、ご自分でお持ちになるとお怪我をなされる危険がございます、私共がお部屋までお持ち致しますからこちらに置いて下さいませ。そこのー、大隊長、手伝ってくれ!」 金の鎧の大隊長、そして銀の鎧の小隊長が集まって3人のバンド道具を搬入していった。実はこの3人、昔からバンドを組んで毎年フェスに出場していた。ただ場の空気が変わってしまう事を恐れ正体を隠して出場している。将軍「国王様・・・、あの・・・、恐れ入りますが少々よろしいでしょうか?」エラノダ「どうされました?」将軍「毎年疑問に思っていたですがドラムとベースはどうされているのですか?」エラノダ「今年もこの3人だけでやろうと思っていますが。」 毎年国王達のバンドはギターボーカルのみでベースやドラムが居ないので正直言うと他のバンドに比べたら迫力が無い、そこで将軍がある提案をした。将軍「実は先日より我々でメンバーを組んだのですが、皆音痴ばか

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  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」㉛

    -㉛ロックフェス当日- 街の南側、銭湯のある山の麓に特設の野外ステージや音響システムなどがゲオルを中心とした街で働く魔法使いの者たちのよって設置され、街が興奮の渦に巻き込まれて行く中、光はいつも通りパン屋の仕事を夕方までこなしていた。街中の人がロックフェスを楽しめる様にエラノダが『フェスの日、街中の店は必ず夕方6時までに閉店する事』という決まりを作っているので野外ステージ以外の照明は消え、全ての店で『準備中』札がかけられていた。ただそれでも気分を盛り上げようと屋台を出している商人がいたりした、これに関してはエラノダも盛り上げ要因として容認していたので皆喜んでいた。 フェスなので競い合いをするものではないのだがバンド達の気合が故の熱気がムンムンとしていて体感温度が気温を大幅に上回っていた。 このフェスには決まりがあり各組オリジナル1曲、そしてカバー1曲の合計2曲を演奏する事になっていた。それを聞いてか焼き肉店の板長には心配事があった。 先日メンバーを組んだばかりの林田親子とヤンチのバンド、組んで間もないのにオリジナルで作詞作曲と練習を行い無事成功できるかが心配だったそうで光に相談を持ち掛けてきた。板長「私は音楽は全くなのですが、俺はヤンチの親みたいなもんなので楽器の経験があるのは勿論知っているのです、ただ作詞作曲の才があるかどうかは無知でして・・・。それに組んで間もないので練習も間に合ってないのでは・・・。」光「ヤンチさんは今まで沢山の苦悩を乗り越えた方ですよ、今回だって何とかなりますよ。」 板長の心配をよそにロックフェスが始まり、最初はパン屋の鳥獣人兄妹とナルのバンドがステージに出てきた。観客たちの興奮が最高潮に高まって来た所で1曲目の演奏が始まる。皆手に汗を握り涙が出てくる、声援が止まらない。そんな中王様3人と将軍達が変装したバンドがステージに立った。その瞬間大隊長と小隊長、そして将兵達が護衛の為フェス会場を囲もうとしていた、これではせっかくの変装の意味が無くなってしまう。そこでゲオルが全員を普段着の姿に変え一般客と何ら変わらないようにした。ステージ裏にいたエラノダは勿論知らなかったが王国軍は色々苦労したようだ、ただ共にバンドを組む3人の将軍達には伝えられたらしい。将軍「皆・・・、気を遣わせてすまない。」 そんな事もつゆ知らず、エラノダは1曲目

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    -㉜楽しみの最中- 光が5人に加わり、楽しく呑んでいると裏通りの暗がりからコンコンと石畳を杖で突く音が微かにしていた。段々と近づいてくる、音の正体は白い正装を身に纏った髪の長いエルフの女性だった。両足がガクガクと震えている。女性「ハァ・・・、ハァ・・・、すみ・・・、ません・・・。1杯で・・・、構いませんので・・・、水を・・・。」光「とにかく座ってもらおう。」ラリー「この方は・・・、まさか・・・、少々お待ちを!」 ラリー女性の正装を見て驚きグラスに並々と注いだ水を女性に飲ませた。この世界で布教されている『神教』で数人しかいないと言われる『アーク・ビショップ』と呼ばれるうちの1人、メイスだった。メイスは隣のバルファイ王国からこの国の王宮の横にある教会を目指して1人歩いていたのだが食料が底を尽き空腹で死にかけていたのだ。 水を飲んだメイスは正しく水を得た魚の様に復活し、1息ついて感謝を述べた。メイス「ふぅ・・・、助かりました。ここまで歩いて来る折、ある程度の食料は持っていたのですが少しずつ食べていたのにも関わらず無くなってしまった上に財布を隣国の教会に忘れてきたらしく、命からがらこちらまで歩いて来た次第でして。とても良い匂いがして来たので近づいてしまったのです・・・、哀れな私をお許し下さい。」ラリー「アーク・ビショップ様・・・、ただの呑み会なので大した物はございませんがこちらでご一緒にいかがですか?」メイス「宜しいのですか、何とお優しい・・・。皆様に神のご加護があらん事を。」 メイスは祈りを捧げ感謝するように差し出された焼き鳥やピザを食べ始めた。 因みにだが『神教』には個人の自由を尊重するという考えがあり、また『タダより高い物は無い、貰える物は全て貰え』を基本としているらしい。それが故に・・・。メイス「お願いですからぁ~、アーク・ビショップなんて堅い呼び方せずに気軽にメイスって呼んで下さいよぉ~。」 基本に忠実に行動した結果、勧められるがままに差し出された酒を呑みつくし泥酔してしまった。因みに食事の制限も無いので肉食も酒も大丈夫なのだ。 メイスと光はすぐに意気投合して互いに日本酒をお酌しあう仲にまで至っていた、どう見ても聖職者には見えない。メイス「何ぃ?違う世界で熱中症で死んで知らない間にこの世界に転生してきたってぇ?そんな話聞いた事ないわ

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    -㉝聖職者からの感謝と教会- メイスがへべれけの聖職者達と合流してから1時間程経過し、綺麗な月と星が夜空を彩る夜。酒と肴、そして出会った仲間のお陰で光の気分は好調だった。 メイスはグラスを置き、聖職者達を集め端の方でコソコソと話し合いを始めた。結論が出たのだろうか話し合いを終わらせ各々の席へと戻る、その時光に1本の電話が入った。林田達から合流しないかという連絡だ、光はパン屋のメンバーに確認を取り合流すると答えた。 数十分後、林田が団体を連れてパン屋の裏へとやって来た、ラリーは料理が足りるか心配してたがネスタが余ったものをタッパに詰めて持って来たので大丈夫だった。 改まったかのようにメイスが立ち上がり聖職者達に声を掛けた。メイス「そろそろいいかしらね・・・、あんたたちやるよ。」 聖職者達と他のメンバーを集めて街の中心部へと歩いて行った、暗闇と静寂が包み噴水の音だけが聞こえるその場所でメイス達が空に杖の先を向けた。 聖職者達が魔力の玉を空に飛ばすと玉が弾け花の様に綺麗に開いた。それを立て続けに行っていく、そう、花火のスターマインみたいに。メイス「貰ってばっかりじゃ悪いからね、私たちからのお礼だよ。少ないけど楽しんでおくれ。」光「これはビール吞みたくなるわ。」 そう言うとビールを1口呑んで口の周りに泡を付けていた、それを見て皆笑っていた。賑やかな夜が過ぎて行った。 朝、光は王宮の横にある教会へと向かいメイスの体調等を伺う事にした。扉を開けると数人の信者が祈りを捧げている、信者の前に綺麗な正装を着たメイスが出てきた。メイス「祈りなさい、さすれば神はあなた方を必ずお救い下さいます。」 呑んでた時とは全く違う印象のメイスが信者の全員に丁寧に語り掛けていた。信者が涙を流す中、メイスは光に気付くと優しく声を掛けた。メイス「あ、おはようございます、光さん。昨晩は良い時間でしたね。ありがとうございました。光さんに神のご加護があらん事を・・・、では失礼。」光「めっちゃ酒強い上にめっちゃ聖職者してるやん・・・。」 実はこの教会、王族の支援を受け孤児院も兼ねており親に捨てられたり死別した子供達を引き取り寝食を共にして育てていた。 メイスは孤児院の子供達から慕われ人気者となっていた、メイスを見つけると子供たちは声を揃えて言った。子供達「メイスおばちゃん、お

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    -㉞子供の教育と食事- 光はある人に電話をして午後に会う約束を取り付けた、メイスは横にいながらぽかんとしている。 午後になって、光はメイスを連れ教会を出た。15分程歩いただろうか、田園風景が広がる場所に着きそこで約束を取り付けた人、ガイに声を掛けた。光「お久しぶりです、ごめんなさい急にお願いして。」ガイ「光ちゃんの頼みなら聞かない訳には行かないや、俺でよければ何でも言ってよ。」メイス「あの・・・、これから何を?」光「もう分かっているのかと思ってましたが、まぁいいか。子供たちの食育も兼ねて農業体験でもと思ったんです、土に触れ遊びながら自分達で食べる食糧を自分達で作りありがたみや大変さを学びつつ教会の食費を浮かすという作せ・・・、いや提案です。」メイス「なるほど、良い提案ですね。早速教会に持ち帰って聖職者たちに話を持ち掛けてみます。」 光の作せ・・・、いや提案は教会でも絶賛され即採用となった。早速次の日から子供たちがガイの田んぼで米を育て始めた。川から水を引き稲を1本ずつ大切に植え小さな合鴨を離した、これで害虫などによる稲への被害は減るだろう。田んぼを眺めながらメイスは光にお礼を言った。メイス「ありがとう、これからは私もちょこちょこ見に来るわね。」光「私もそうするかな・・・。」 すると光はメイスに微笑みかけ、パン屋の仕事へと向かった。 光が『作成』で作った肥料により米は1週間ほどで実り、早くから収穫の日を迎えた。合鴨のお陰で害虫の被害は無く無事にすくすくと育ち穂を垂れている。 教会で面倒を見ている子供達が嬉しそうに田んぼへとやって来た、メイスも女の子に手を引かれほぼ無理くりの駆け足でやって来た。 光も鎌を手に収穫に参加する事にした、子供達に教えながら1束1束丁寧に刈っていったが人数が多い分短時間で収穫が終わった。肥料のお陰で乾燥もすぐに終わってしまった。光「これを脱穀と精米して炊いたら美味しいご飯の完成だね。」子供達「はーやーくー!」メイス「慌てない慌てない、炊けるまで皆で遊びましょう。」 稲を刈った後の田んぼは子供たちの格好の遊び場となった。「空腹は最高のスパイス」だ、おかずに悩まなくて済みそうだ。シンプルな塩むすびで存分に喜んでくれるだろう。後は白菜の浅漬けでも出してあげるか、あれは日本酒の肴にする用に漬けたものだが米にも合う、

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    -140 部下から先輩へ- 異世界と言っても神によって日本に限りなく近づけられた世界で、同じ様な拉麺屋台なので学生時代にバイト経験があったせいか寄巻部長はお手伝いをそつなくこなしていた。寄巻「拉麺の大盛りと叉焼丼が各々3人前で、ありがとうございます。注文通します!!大3丼3、④番テーブル様です!!」シューゴ「ありがとうございます!!おあと、⑦番テーブルお願いします!!」寄巻「はい、了解です!!」 寄巻の登場により一気に回転率が上がったシューゴの1号車は、今までで1番の売り上げを誇っていた。嬉しい忙しさにシューゴも汗が止まらない、熱くなってきたせいか寄巻はTシャツに着替えている。 数時間後、今いるポイントでの販売を終えシューゴが片付けている横で手伝いのお礼としてもらった冷えたコーラを片手に寄巻が座り込んでいた。シューゴ「寄巻さんだっけ?あんた・・・、初めてでは無さそうだね。」寄巻「数十年も前も話ですが、あっちの世界で拉麵屋のバイトをしていた事があったのでそれでですよ。」 いつも以上に美味く感じる冷えたコーラを一気に煽ると、寄巻はこれからどうしようかと黄昏ながら一息ついた。渚は隣に座り寄巻自身が1番悩んでいる事を聞いた。渚「部長・・・、家とかどうします?」寄巻「吉村・・・、さん・・・。こっちの世界では違うからもう部長と呼ばなくていいんだよ?それに君の方がこの世界での先輩じゃないか、お勉強させて下さい。」 寄巻は久々に再会した部下に深々と頭を下げた、渚は焦った様子で宥めた。渚「よして下さいよ。取り敢えず不動産屋さんに行ってみましょう、即入居可能なアパートか何かがあるかも知れません。」シューゴ「おーい、寄巻さんにまた後で話があるから連れて来て貰えるか?」 シューゴの呼びかけに軽く頷いた渚は寄巻を連れて『瞬間移動』し、ネフェテルサ王国にある不動産屋に到着した。以前渚もお世話になったお店だ。 寄巻は『瞬間移動』に少々驚きながらも目の前のお店に入ろうとした渚を引き止めた。不動産屋で契約出来たとしてもお金が・・・。渚「そうでしょうね、でも安心して下さい。部ちょ・・・、寄巻さんも神様にあったんでしょ?」寄巻「それはどういう事だ?「論より証拠」って言うじゃないか、分かりやすい形で見せて欲しいんだが。」渚「では、場所を移しましょう。」 渚は再び『

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    -139 懐かしき再会- その眩しい光は渚にとって少し懐かしさを感じる物だった、ただ花火か何かかなと気にせずすぐに仕事に戻った。今いるポイントで開店してから2時間以上が経過したが客足の波は落ち着く事を知らない。 2台の屋台で2人が忙しくしている中、渚の目の前に『瞬間移動』で娘の光がやって来た。スキルの仕様に慣れたのか着地は完璧だ。光「お母さん、売れてんじゃん。忙しそうだね。」渚「何言ってんだい、そう思うなら少しは手伝ってちょうだい。」光「いいけど、あたしは高いよ。」渚「もう・・・、分かったから早く早く。」 注文が次々とやって来ている為、調理と皿洗いで忙しそうなのでせめて接客をと配膳とレジを中心とした仕事を手伝う事にした。2号車の2人の汗が半端じゃない位に流れている頃、少し離れた場所から女性の叫び声がしていた。先程眩しく光った方向だ。女性①「大変!!人が倒れているわ!!誰か、誰か!!」 大事だと思った屋台の3人も、そこで食事をしていたお客たちも一斉にそちらの方向へと向かった。一応、火は消してある。男性①「この辺りでは見かけない服装だな、外界のやつか?」女性②「頬や肩を叩いても気付かないわよ、死んでるんじゃないの?」男性②「(日本語)ん・・・、んん・・・。何処だここは、俺は今まで何していたっけ。」 どうやら男性が話しているのは日本語らしいのだが、まだ神による翻訳機能が発動していないらしい。男性①「(異世界語)こいつ・・・、何言ってんだ?やっぱり外界の奴らしいな。」男性②「(日本語)ここは・・・?この人たちは何を言っているんだ?」 しかし光の時と同様にその問題はすぐに解決され、光達が現場に到着した時には雰囲気は少し和やかな物になっていた。すぐに対応した神が翻訳機能を発動させ、男性は皆に今自分がいる場所などを聞いていた。ただ、男性の声に覚えがある光はまさかと思いながら群衆を掻き分け中心にいる男性を見て驚愕した。光「や・・・、やっぱり!!」男性②「その声は吉村か?!何故吉村がここにいるんだ?!」渚「あんた・・・、ウチの娘に偉そうじゃないか?」 光は男性に少し喧嘩腰になっている渚を宥める様に話した。光「母さん、この人は向こうの世界にいた私の上司の寄巻さんっていうの。」渚「え・・・、上司の・・・、方・・・、なのかい?」寄巻「そう、今

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    -137 人事部長の悪事- 夫婦は重い頭を上げヒドゥラにソファを勧めた、先程の入り口前にいた女性にお茶を頼むとゆっくりと話し始めた。夫人「初めまして、普段は学園にいるからお会いするのは初めてですね。私は貝塚結愛、この貝塚財閥の代表取締役社長です。隣は主人で副社長の光明です。」光明「初めまして、これからよろしく。」ヒドゥラ「しゃ・・・、社長・・・。そうとはつい知らずペラペラと、申し訳ありません。」結愛「何を仰いますやら、貴重なお話を頂きありがとうございます。」 実は最近の異動で人事部長が変わってから、やたらと人件費が削減されているので怪しいと思っていたのだ。削減された人件費の割には利益が昨年に比べて悪すぎると思っていた折、ヒドゥラの話を聞いた結愛は人事部長が怪しいと踏み、部の社員数人にスパイを頼み込んで調べていた。光明の作った超小型監視カメラを数台仕掛けて証拠を押さえてある。 調べによると金に困った人事部長が独断でありとあらゆる部署から人員を削り、余分に出た利益を書類を書き換えた上で自らの口座へと横流ししていたのだ。結愛「今回発覚した事件により貴女を含め大多数の社員に迷惑を掛けてしまった事は決して許されない事実です。人事部長は私の権限で以前の者に戻し、迷惑を掛けた皆さんには賠償金を支払った上で私達夫婦からお詫びの温泉旅行をプレゼントさせて頂きます。」光明「そしてヒドゥラさん、貴重なお話を聞かせて下さった事により我々にご協力下さいました。我々からの感謝の気持ちもそうなのですが、業務に対する責任感を感じる態度へと敬意を表し今の部署での管理職の職位を与え、勿論貴女にもお詫びの温泉旅行をプレゼント致します。」 ヒドゥラは今までの苦労が報われたと涙を流すと、全身を震わせ崩れ落ちた。2人に感謝の気持ちを伝えると自らの部署に戻り暫くの間泣いていたという。 問題の人事部長についての調査なのだが、以前から魔学校の入学センター長を兼任しているアーク・ワイズマンのリンガルス警部に結愛が直々にお願いしていた。そしてこういう事もあろうかと様々な魔術をリンガルスから学んでもいたのだ、屋台で使用した『変身』もその1つである。そのお陰でネクロマンサーとなり、多くの魔術が使える様になった結愛は魔法使い特有の念話も使える様になっていた(光は『作成』スキルで作ったが)。結愛(念話

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」136

    -136 優しく頼もしき老夫婦- 先程まで抱えていた悩みなどどうでも良くなってしまったと周りに思わせてしまう位の笑顔で拉麺と銀シャリを楽しむラミア、その表情に安堵したのか渚は屋台の業務に戻る事にした。でもその表情には何処かまだ疲労感がある、そこで冷蔵庫からとあるものを取り出してヒドゥラに渡した。ヒドゥラ「あの・・・、頼んでいませんけど。」渚「いいんですよ、疲れている時は甘い物です。貴女この後も頑張らなきゃなんでしょ。」 ヒドゥラは手渡されたプリンを食後の楽しみにすると、より一層笑みがこぼれた。ヒドゥラ「ありがとうございます。」 その数分前、渚が屋台を構える駐車場の前を1組の男女が通りかかり、その内の女性が小声で男性に一言ぼそっと呟くと、2人は頷き合いその場を離れた。 それから数分後、ヒドゥラがプリンを楽しんでいる時に1組の老夫婦が屋台を訪れ席に座った。老夫人「よっこらしょ・・・、お姉さんここ良いかね?」ヒドゥラ「勿論どうぞ。」ご主人「ありがとうよ、昼間にやってる拉麺屋台なんて珍しいから食べてみたくてね。」ヒドゥラ「美味しいですよ、お2人も是非。」老夫人「嬉しいねぇ。店員さぁ~ん、拉麺2つね。歯が悪いから麺は柔らかめにしてもらえるかい?」渚「はい、少々お待ちを。」 渚が老夫婦の拉麵を作り始めると夫人がヒドゥラを見てお茶を啜り、声を掛けてきた。老夫人「そう言えばこの辺りでラミアを見かけるなんて珍しいね。」ヒドゥラ「あ、これ・・・。普段は魔法で足に変化させて人の姿で働いているんです。」ご主人「それにしてもお姉さんどこか疲れているね、何かあったのかい?」 老夫婦の柔らかで優しい笑顔により安心したのか、先程渚に語った会社における自らの現状をもう1度語った。老夫婦は親身になってヒドゥラの話を聞き、時に涙を流しつつまるでそのラミアが自分達の孫娘であるかの様に優しく手を握り頭を撫でた。 ヒドゥラは涙を流し老夫婦に感謝を告げると、手を振りながらその場を後にして会社へと戻って行った。 老夫人がご主人に向かって頷くと、残った拉麵を完食してすぐお勘定を払ってその場を去っていった。渚「ありがとうございました、またどうぞ!!」 老夫婦が去ってからは昼の2時半頃までお客が絶えず、ずっと皿洗いと調理を繰り返していた。正直こんなに大変とは思わなかったと感

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」135

    -135 大企業の事実- 以前の職場で噂されているとは知らない2号車の渚はシューゴに手渡された地図で指定された販売ポイントの駐車場に到着した、シューゴとは逆回りでこの後渚にとって懐かしきダンラルタ王国の採掘場での販売をも予定している。渚「この辺りだね・・・、よし。」 本来はとある職場の職員が使う駐車場で、管理人とシューゴが特別に月極契約している端の⑮番の白線内にバックで止める。何があってもすぐに対応できる様に「必ず駐車はバックで」と言うのがシューゴとのお約束だった。 渚は運転席から降車し、少し辺りを見てみる事にした。渚「ここはどこの駐車場なのかね・・・。」 駐車場から数十メートル歩いた所に大きな建物が2つ並んでいた、1つは大企業の本社ビルで最低でも20階以上はありそうだ。また、隣接する建物は15階建てのものらしく横に大きく広がっている。2つの建物は数か所の渡り廊下で繋がっていて窓の向こうから行き来する人々がちらほらと見えている。渚「大きいね・・・、何ていう建物なんだい?」 入口らしき門が見えたのでその左側に書かれている文字をじっくりと読んでみた、見覚えのある文字がそこにある。渚「「貝塚学園高等魔学校 貝塚財閥バルファイ王国支社」ね・・・、貝塚財閥ってあの貝塚財閥かい?!確か向こうの世界で教育系統に力を入れているって聞いた事があるけどこっちの世界にお目見えするとはね、こんな所で屋台をするのかい?贅沢だねぇ・・・、ありがたやありがたや。」 渚はハンカチで汗を拭いながら軽バンへと戻り営業の準備を始めた、屋台キットを展開しスープの入った寸胴を火にかける。暫くしてスープの香りが漂い始めると先程の建物から昼休みを知らせるチャイムが聞こえて来た。すると女性が1人、疲れ切った様子で屋台へとやって来た。へとへとになりながら渚が差し出した椅子へと座る、お冷を手渡すと砂漠を彷徨っていたかの様に一気に喉を潤した。目にはクマがあり、酷い寝不足らしい。聞くと人件費の削減でかなりの人数を減らされ毎日酷い残業らしく、今日みたいに昼休みを過ごせない日もあるそうだ。せめて今日の昼休みくらいは美味しい物をとスープの匂いに誘われてやって来た。女性「えっと・・・、拉麺を1杯お願いします。麺は硬めで。」 疲れ切った表情で渚に伝えると懐から手帳を出し、午後からの仕事の確認をし始めた。渚

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」134

    -134 懐かしの味- 常連さんの注文に応じ、新メニューである「特製・渚の辛辛焼きそば」を作り始めた1号車の担当・シューゴ。まずは豚キムチを作っていくのだがここで必ずお客さんに聴いて欲しい事があるそうだ。シューゴ「辛さはどれくらいがお好みですか?」 判断基準の為、ラミネートされた用紙を渚から手渡されていたのでそれをブロキントに見せる。辛さは5段階まで表示されており、それに応じて各々の辛さのキムチを使用する事になる。キムチはこの調理用に全て渚が特製で漬けていたのだが、シューゴには5種類とも試食する度胸が無かった。最高の5辛のキムチは色が尋常じゃない位に黒く、恐怖心をあおる様に唐辛子の匂いがやって来る。5辛以上の辛さを求められた場合は5辛の物に特製ペーストを加えて作る。 因みに最初のお客さんには1辛を勧める様にと伝えられており、1辛のキムチは多めに作られていた。シューゴ「最初は1辛をお勧めさせて頂いているのですが。」ブロキント「せやね・・・、丁度刺激が欲しかったんで敢えて3辛でお願いできまっか?」シューゴ「3辛で・・・、分かりました。お好みで辛さ調節できますのでね。」 3辛用のキムチを加え調理にかかる、後で炒めなおすので最初は軽く火を通す程度に。一度皿にあけ少し硬めに茹でていた麺をソースと辣油で炒め先程の豚キムチを加え一気に煽る。それを見た瞬間、ブロキントが何か思い出したかの様な表情をして聞いた。ブロキント「店主はん・・・、それまさか赤江 渚はんのレシピちゃいますのん?」シューゴ「はい、なので「渚の」が付いているんです。」ブロキント「渚はんって、ホンマにあの渚はんなんですか?」シューゴ「ど・・・、どうされたんです?」ブロキント「いやね、以前ここで事務と調理の仕事をしとった人がおったんですけどね、その人と同じ作り方やなぁと思っとったんです。」 そういうと幸せそうに、そしてどこか懐かしそうに微笑みながら調理を眺めていた。シューゴ「渚さん・・・、多分今日中にこの場に来るはずですよ。実は今日からウチの2号車としてデビューする事になったんで。」ブロキント「ほんまでっか?!ほな夕飯に渚はんの作った拉麺を食べてみます!!」シューゴ「ふふふ・・・、お楽しみに。さぁ、出来ましたよ。」 皿に炒めた麺を盛り付け辛子マヨネーズを振りかけて出来上がり、お客の

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」133

    -133 お仕事開始- 夜明け前、弟・レンカルドの経営する飲食店の調理場を借り、毎日継ぎ足して使っている秘伝の醤油ダレをシューゴが仕込んでいた。 自らの舌で選び抜いた素材と独自に調合したスパイス、そして黄金比をやっとの思いで見つけ出し配合した調味料を沸騰させない様にゆっくりと火入れしていく。 幾度となく納得のいくまで味見を繰り返し、完成しかけたタレに煮込み前の叉焼を入れ肉の脂を混じらせつつ双方を仕上げていった。 シューゴ「これは味見・・・、味のチェック・・・。」 出来たばかりの叉焼を1口、十分納得のいく味付けと全体的にトロトロの食感が織りなす絶妙なハーモニーを口いっぱいに頬張って首を縦に振った。その味に堪らなくなってしまっていたのか数秒後には白飯に手を出していた、こうなると予想していたレンカルドが気を利かせて用意してくれていたのだ。シューゴ「うん・・・、これは仕事終わりにビールだな。」 数切れ程タッパーに残し楽しみに取っておき、屋台2台分の準備をし始めた。そう、これからは屋台が2台だから味付けの責任も2倍だ。 2台分の醬油ダレ、叉焼、そしてその他の具材を用意し終えた頃に裏の勝手口から渚が声を掛けた。渚「おはようございます、良い匂いですね。」シューゴ「おはようございます、宜しければ味の確認も兼ねて出来立てを如何ですか?」 そう言って1口サイズに切った叉焼を小皿に乗せて渡すと渚は目を輝かせながらパクついた、目を閉じてその味を堪能する。シューゴ「その表情だとお口に合ったみたいですね。」渚「これビールの肴としての叉焼単品や叉焼丼でも売れるんじゃないですか?折角辛子マヨネーズも持っていくのでそれをかけて。」シューゴ「そのアイデア・・・、採用しても良いですか?」 シューゴは調理場に渚を残しパソコンのある部屋に向かい、急ぎ電源をつけた。どうやらメニュー表や注文用のメモの改定と魔力計算機(レジ)のボタン設定を即座に行っている様だ、因みに値段は原価等を考慮して即席で決定した。渚「シューゴさん、いくら何でも早すぎないかい?私でも焦りますよ。」シューゴ「いや、折角のアイデアです。是非採用させて下さい、容器はまたいずれ作りますので今日は取り敢えず今ある分でお願いします。」渚「了解しました。」 新メニューが即席で誕生した所で屋台への積み込みだ、忘れ物

  • (改訂版)夜勤族の妄想物語   3. 「異世界ほのぼの日記」132

    -132 出来立ての屋台と焼きそば- 秘伝の醬油ダレとスープ、そして叉焼を含む営業用の商売道具を説明の為に一通り外に止めてあった新しい屋台に積むと一緒に積んでいた丼を1つ取り出し拉麺の作り方説明し始めた。シューゴ「まず最初に注文を取ってメモに書き、丼の底にゆっくりとこの醬油ダレを入れて頂きます。次に箸で溶かしながらスープを入れていくのですが、それと同時並行で別の鍋にて麺を茹でていきます。各硬さに対応する茹で時間はメモしてありますのでこれを見ながらやって見て下さい。」 茹で上がった麺を取り出し上下に振って湯切りする、これがきっちり出来ていないと折角のスープの味がゆで汁で薄くなってしまう。シューゴ「予め切ってある叉焼などの具材を乗せて完成です、提供する時に必ずお箸を一緒にして下さい。」 経費の削減の為、今回の屋台では割り箸ではなく洗って使う塗り箸を用意してある。しかし希望する客がいれば割り箸を提供する。 お箸と割り箸を入れている引き出しの真下にドリンク用の冷蔵庫が設置されていた、中ではグラスも冷やせる様になっており、固定して運ぶ為に移動中割れる心配がない。 この屋台には魔力計算機(レジ)が標準装備されており、各ボタンに値段が登録されているので記憶する必要が無い。トッピングや白飯、またドリンクのオーダーにも対応出来る様にもなっている。 因みに注文用のメモには各商品の名前が記載されていて、「正」の字を書けばいいだけになっているので大助かりである。各席の厨房側にメモを挟めるようにピンが付いていて、すぐに調理にかかれるシステムだ。 渚がメモをじっくり読み込んでいると「特製・辛辛焼きそば」の文字が。渚「シューゴさん、これ・・・。」 渚がメモ用紙の「特製・辛辛焼きそば」の箇所を指差しながら聞くと、シューゴは懐から看板らしき板を取り出した。シューゴ「そうそう・・・、これは私からの開店祝いです。それとこれからは渚さんにお教え頂いたあの焼きそばを新メニューとして取り入れる事にしました。」 シューゴがプレゼントの看板を裏返すと、全体的に黒の背景に赤い文字で「新メニュー 特製・渚の辛辛焼きそば」と書かれていた。右下には唐辛子や辛子マヨネーズの絵が描かれている。渚「いつの間に・・・、それに私の名前入りで・・・、良いんですか?」シューゴ「勿論です、渚さんの拘りのお

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