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5. 「あの日の僕ら」74

Auteur: 佐行 院
last update Dernière mise à jour: 2025-10-19 08:35:26

-74 母親が駆り立てた娘-

 佳代子は久々に会う娘の姿に涙した、まさか大学生になった香奈子の姿を見えるなんて夢にまで見た事だったからだ。

 病院から渡された衣服で全体が上手く見えなかった母親は、娘に近付く様に促した。

佳代子「顔をよく見せて・・・。」

 無菌室の為、マスクを外す訳にはいかなかったのでギリギリ見えていたのが両目だけだったが佳代子は嬉しそうにしていた。

 涙を流しそうになるも佳代子は至って冷静であった。

佳代子「ねぇ、私は良いとしても貴方は香奈子に会っちゃいけなかったんじゃないの?それに両親だって名乗って良かった訳?」

 隆彦は佳代子に、今回香奈子が遭遇した爆破事件について話した。

佳代子「嘘でしょ、あんた大丈夫だったの?!」

香奈子「入院したばかりの時、一時(いっとき)記憶喪失になってたみたいなんだけど今は平気だよ。」

佳代子「そう・・・、あんたが助け出されて本当に嬉しいよ。」

 安堵する佳代子の表情を確認すると、隆彦は話し出した。

隆彦「こんな事態になったんだ、契約もクソもあるか。それに・・・。」

佳代子「それに?」

 隆彦は懐から例の契約書を取り出して破り捨てた。

隆彦「もう・・・、良いんだ・・・。」

 山板家の専属弁護士が夫婦の契約違反と香奈子に対する不当な対応を認めた為、契約の破棄が許諾されたのだった。

隆彦「香奈子、もうお前を無視する人間はいない。安心して帰って来なさい。」

香奈子「お父さん・・・、お母さん・・・。」

 香奈子は吉馬夫婦に、いや本当の両親に抱かれながら泣き崩れた。

 帰り際、香奈子は佳代子に1つ聞きたい事があった。

香奈子「お母さん、また来ても良いかな?」

佳代子「勿論、いつでも大歓迎よ。」

 それから数分後、帰りのエレベーターで隆彦が重い口を開いて語りだした。

隆彦「今のうちに香奈子を母さんに会わせることが出来て良かったよ、母さんは数か月前に急性の白血病を患って今の様になったんだ。本人には言ってないんだが医者の方からもって半年と言われていてね、いつ何が起きてもおかしくないんだよ。」

 改めて父親から聞いた事実に涙ぐむ香奈子、折角の想いで、そしてやっとの想いで出逢えたというのにそれは香奈子でなくても辛すぎるものであった。

裕孝「今は優しく見守ろう、俺達にはそれしか出来ないんじゃないかな。」

 裕孝は香奈子を優しく抱いて囁い
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