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5. 「あの日の僕ら」73

Author: 佐行 院
last update Last Updated: 2025-10-19 08:34:44

-73 余りにも残酷な項目-

 隆彦はペンを握る手を震わせながら契約書に追加項目を書き加えた、あくまでも自分が香奈子の父親だと主張するための物だった。

五、 甲は定期的に乙に香奈子の成長を記録した手紙を送らなければならない。

六、 甲は上記の手紙に必ず香奈子の成長した姿を記録した写真を添付しなければならない。

信三「お・・・、おい。追加項目が2つになっているぞ。」

隆彦「親として娘の成長を見守りたいと思うのは当然だろ、これじゃ足りない位だ。」

 当然の事だ、隆彦があまりにも真剣な目をしていたので信三は少したじろいでしまった。

信三「分かった、約束しよう。お前が言っている事は間違っていないからな。」

 しかしこの契約が交わされてから数年後、隆彦が書き加えた項目だけ守られなくなった。香奈子に関するイベントの度に写した写真を焼き増しして何処かへと送っている事を怪しんだ妻が無理矢理旦那を止めたからであった、実は信三は契約の詳細を妻に上手く話せてはいなかった。

 理由はもう1つあった、香奈子を預かってから数年後、2人の間に男の子が生まれた。夫婦は実の子であるその子ばかりを可愛がり、香奈子の事を蔑ろにしてしまっていた。金銭面での援助は変わらず続けていたし中学高校時代によくある進路相談には乗る様にしていたのだが、やはり香奈子は何処か寂しさを覚えていた様だ。その事が香奈子の脳内に焼き付けられていたらしく、ずっと無視され続けていたという悲しい思い出が植え付けられていた様だ。

 そして現在に至る、長々と昔の話をした様子から隆彦が嘘をついている様には見えなかったので裕孝は信用する事にした。しかし、納得できなかった点があった。

裕孝「店長さん・・・、いや吉馬さん・・・、いや親父さん!!悪かった、あんたの事は信用できる!!でも納得させて欲しい、契約書があったからってどうして香奈子を助けに行かなかったんだ!!」

隆彦「行きたかった、でも行けなかったんだ!!契約を交わした時、隣には専属の弁護士がいた上に信三の家には多数の警備員がいたんだぞ。そりゃ何度か警備をくぐり抜けて山板邸に忍び込んだ事はあったがその度に信三が家を引っ越していたから最終的には行方不明になってしまったんだ。」

裕孝「そう・・・、だったのか・・・。」

 隆彦は常に懐に入れていた例の契約書を取り出して裕孝に見せた、裕孝は食い入る様
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