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第68話:ライバル協定締結③

作者: 花柳響
last update 最終更新日: 2025-12-20 20:00:27

 翌朝。

 小鳥のさえずりと、窓から差し込む眩しい朝日で目を覚ました。けれど、体を起こそうとして異変に気づく。

 重い。物理的に、体が動かない。

「…………え?」

 恐る恐る目を開けると、そこには絶句するような光景が広がっていた。

 右腕を枕にして、天使のような寝顔で眠る輝くん。

 私の肩に頭を乗せ、眼鏡をずらして幼子のように眠る奏くん。

 そして足元では、私の太ももにしがみついて「むにゃ……」と寝言を漏らす陽翔くん。

 (ぎ、逆ハーレム状態!?)

 昨夜、彼らは「寝ずの番」をすると言っていたはずだ。それなのに、なぜ今、私は三人の美青年に密着包囲されているのか。

「……ん……しおり……?」

 輝くんがとろんとした瞳をこちらに向け、ふにゃりと笑った。

「おはよ。……あったかい。抱き枕みたいだ」

「ちょ、輝くん、みんな見てるよ!?」

「んー……関係ない……」

「……うるさい。もう少し寝かせろ」

 反対側で奏くんが不機嫌そうに肩に顔を埋め直し、足元では陽翔くんがモゾモゾと動き始める。

 嬉しい悲鳴を上げそうになるのを必死で堪え、私は天井を仰いだ。

 嵐は去ったけれど、私の人生を揺るがす本物の嵐は、どうやらここからが本番のようだった。

 ◇

「……ん、朝か」

 奏くんがようやく身を起こした。眼鏡を外した素顔は、心臓に悪いほどに美しい。彼は状況を把握すると、弾かれたように飛び退いた。

「ッ!?」

 その衝撃で、陽翔くんが「ふぎゃっ」と変な声を上げ、輝くんもバランスを崩して目を覚ます。

「おい、急に動くなよ……」

「貴様……! なぜ俺の隣にいる!」

「ちげーし
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    「とりあえず、窓際から離れよう。雷が近いし、風が入ってくる」 輝の声に引かれ、別館のさらに奥、資料棚が迷路のように入り組んだスペースへと足を踏み入れた。 頼りなく揺れるスマホのライトが、積み上げられた古文書や民具の影を不気味に長く引き伸ばしていく。外では絶え間なく雷鳴が轟き、建物全体が風に煽られミシミシと悲鳴を上げていた。「うぅ……」 生きた心地がしない。 古びた建物特有の湿った空気と、密室という逃げ場のない圧迫感。喉の奥にへばりつくような恐怖が、胃の腑を冷たく締め上げる。「ここなら少しはマシかな」 輝が足を止めたのは、部屋の隅に鎮座する古びたソファの前だった。 埃よけの大きな布がかけられ、脇には木箱に入った毛布らしき布地が見える。「これ、使えるかな……。ちょっと埃っぽいけど」 輝が毛布を広げ、パンパンと軽く叩く。 長年放置されていた黴臭い匂いが鼻をつくが、贅沢は言っていられない。雨に濡れた浴衣が皮膚に張り付き、体温を容赦なく奪っていく。「座って、栞」 言われるままソファに腰を下ろすと、頭上からふわりと毛布が降ってきた。 直後、当然のように隣へ沈み込む気配。同じ毛布の中に、彼が潜り込んでくる。「……っ!」 狭いソファだ。必然的に肩と肩、太ももと太ももが密着する。 芯まで冷え切っていた肌に、彼の体温が火傷しそうなくらい鮮烈に伝播した。「寒い?」「う、ううん。……大丈夫」「嘘つき。震えてる」 伸びてきた腕が、毛布ごと体を抱き寄せる。 抵抗する間もない。気づけば彼の胸の中にすっぽりと収まり、逃げ場を失っていた。「あ、輝く……」「じっとしてて。暖房もないし、こうしてるのが一番暖かいから」 耳元で囁く声は低く、理性的だ。 だが、肋骨越しに響く鼓動は、トクトクと速いリズムを刻んでいる。抱きしめる腕の強さと、裏腹な心臓の音。同調す

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