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第2話

Author: にゃー
優太は口を開きかけたまま、しばらく言葉を失っていた。

「つまり……二人とも手放したくないってことか?それは無理だろ。紗良は裏切りを許すような女じゃない。知ったら、迷わずお前のもとを去るぞ」

「なら、永遠に知られなければいい。真帆とはもう話をつけてある。これからは俺の秘書として、そばに置く。月・水・金は真帆と過ごして、火・木・土は紗良と過ごす。

そのときは、真帆はがんを患っていて、あとどれくらい生きられるか分からない、死ぬ前の最後の願いが、少しでも長く俺のそばにいることだと紗良に話す。紗良は優しくて情に厚い。反対なんてしない」

優太は呆れたように舌を鳴らした。

「本当に紗良にばれないと思ってるのか?知られたら、あいつは振り返りもせずに出ていくぞ。前に突然消えた3年間を忘れたのか?跡形もなくいなくなって、お前は狂ったように捜してただろ」

奏人は痛いところを突かれたように、さらに眉を寄せた。

「跡形もなく消えるなんて、あるわけないだろ」

苛立ちをにじませながら言った。

「3年後には戻ってきたじゃないか。あの3年間は、山へ写生旅行に行っていたと言ってた。次にまた姿を消すとしても、きっとどこかへ絵を描きに行くだけだ。そのときは……世界中の山を捜せばいい」

動画はそこで終わった。

紗良はスマホを握りしめていた。

指先は氷のように冷え、震えが止まらず、今にも取り落としそうだった。

心臓を見えない手で強くつかまれ、締め上げられた末に引き裂かれていくようだった。

息をするたび、血の味がするほど胸が痛んだ。

そういうことだったのだ。

奏人はとっくに愛を二つに分け、二人の女に与えていた。

紗良をどう欺き、もう一人の女との間をどう行き来するかまで、すでに考えていたのだ。

突然、涙があふれ出した。

大粒の涙が次々と画面に落ち、かつて心の底から愛した奏人の顔をにじませていく。

もう奏人に紗良を見つけることはできない。

今度こそ、永遠に。

紗良は攻略者だったからだ。

7年前、紗良はシステムによってこの世界へ連れてこられた。

与えられた任務は、この世界でやがて一代で巨万の富を築くことになる奏人を救うことだった。

当時の奏人の暮らしは、ひどいものだった。

母親は彼を厄介者扱いし、別の男と出ていった。

父親は酒に溺れ、何かあるたびに奏人へ暴力を振るった。

奏人は傷つきやすく、陰気で、この世界に絶望していた。

紗良は、そんな彼が最も深い闇の中にいた頃に現れた。

同級生の金を盗んだと濡れ衣を着せられ、誰もが奏人を責めたとき、紗良は必死に駆け回り、一つずつ証拠を集めた。

そして、彼を疑った全員に謝らせた。

父親が酔ってまた奏人を殴ろうとしたときは、どこからそんな勇気が出たのか、そばにあったスタンガンをつかみ、彼の前に立ちはだかった。

恐怖で全身を震わせながらも、一歩も退かなかった。

奏人がひどい熱を出し、古びたアパートの一室で倒れたときは、紗良が彼を背負い、数キロ先の診療所まで歩いていった。

母親に捨てられた子だと笑われたときは、奏人の前に立ち、皆に向かって大声で言った。

「奏人は、世界で一番いい人よ!奏人をいじめないで!」

紗良は、暗く閉ざされていた奏人の世界で、たった一つの光になった。

奏人は少しずつ明るさを取り戻し、努力するようになり、その目にも再び光が宿った。

やがて、驚くほどの商才を生かして一から事業を築き上げ、成功を収めた。

高級レストランで片膝をつき、指輪を差し出しながら、目を赤くして紗良に言った。

「紗良、俺と結婚してくれ。お前なしじゃ生きていけない」

紗良も奏人を愛していた。

深く、心の底から。

だが任務が完了すると、システムは強制的に紗良をこの世界から連れ去った。

奏人に別れを告げる時間さえなかった。

その後、紗良はシステムの画面越しに、奏人が狂ったように自分を捜す姿を見た。

酒に溺れ、自分を傷つけ、二人が想いを確かめ合った屋上の縁に立ち、何度も紗良の名を叫ぶ姿を見た。

見る影もないほど苦しみ続ける彼を見た。

胸を引き裂かれた紗良は、3年もの間システムに訴え続けた。

持っていたポイントも報酬もすべて差し出し、ようやくシステムから、この世界へ戻すという許可を得た。

戻りさえすれば、失われた3年間を埋められる。

途中で途切れた二人の幸せを、もう一度続けられる。

そう思っていた。

だが戻ってみると、奏人のそばにはすでに真帆がいた。

あのとき奏人は紗良を抱きしめ、声を詰まらせながら説明した。

「紗良、ごめん……会いたくて、頭がおかしくなりそうだった。それで、お前に似た女をそばに置いてしまったんだ。すぐに出ていかせる。俺が欲しいのはお前だけだ。本当に、お前だけなんだ」

紗良はその言葉を信じた。

彼は奏人だったからだ。

紗良がすべてを懸けて愛し、かつて同じように、全力で紗良を愛してくれた奏人だったから。

だが今は、結婚式への乱入も、バーで撮られた動画も、車に轢かれて砕かれた両脚も――

そのすべてが、一つの残酷な事実を突きつけていた。

奏人は、真帆を愛している。

人を二人同時に愛するなんて、どうしてできるのだろう。

奏人が二つに分けたのなら、紗良はもういらなかった。

紗良は目を閉じ、流れる涙をそのままにして、心の中でそっと呼びかけた。

「システム」

【ここにいます】

冷たい機械音が、頭の中に響いた。

「後悔してる」

紗良の声はかすれ、今にも壊れそうだった。

「私……もう一度、戻ることはできる?」

システムはしばらく沈黙した。

【マスター。今回あなたがこの世界へ戻ったのは、すべてのポイントを消費して得た、ただ一度きりの機会です。今回離脱すれば、あなたは永久に元の世界へ帰還し、この世界とのつながりはすべて断たれます。あなたと朝倉奏人は異なる二つの世界に隔てられ、二度と会うことはできません。それでもよろしいですか?】

二度と会えない。

その言葉に、紗良の胸が強く痛んだ。

だが目を開けると、そこには分厚いギプスで固められ、動かすことさえできない両脚があった。

タイヤに踏みつぶされた瞬間の激痛がよみがえった。

動画の中で、奏人が冷静に自分を欺く計画を語っていた姿も思い出した。

「決めた」

自分の声が聞こえた。

ため息のようにかすかな声だったが、そこには揺るぎない静かな決意があった。

「それなら……もう二度と会わなくていい」

【承認しました。離脱プログラムを起動します。7日後、あなたはこの世界から完全に離脱します。残り時間、167:59:59……】

冷たい数字が、紗良の意識の奥で刻まれ始めた。

それから数日、紗良は病院で療養を続けた。

奏人からは、何通かメッセージが届いた。

【紗良、今、会社で大きな案件を抱えていて忙しいんだ。しばらくそっちには戻れない。落ち着いたら必ず埋め合わせをする。お土産も持っていく】

奏人の言う「忙しい」が、真帆と過ごしているという意味だと、紗良には分かっていた。

かつて紗良に一度も嘘をつかず、心臓さえ差し出しそうなほど一途だった男は、今では優しさに見せかけた罠を、嘘で作り上げるようになっていた。

紗良は一通も返信しなかった。

真心を踏みにじった者は、いつかその報いを受ける。

紗良は、それを見届けるつもりだった。

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