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第23話「LOVE TRACE」

last update publish date: 2026-07-24 05:00:41

――さて、病院へのお見舞い、その帰り道。

サイラスの愛車である真紅の『クラウン クロスオーバー』にて町食堂に戻っている影光とサイラス。午後四時を回っているものの、まだ夏のため外は暑い。いや、むしろ熱い。冷房がガンガンに効いている車の中でなければ正直耐えられない暑さだ。

(フレイヤさん、病院に泊まるのはともかくこの暑さで明日帰って来るの大変じゃないかなあ)

などと影光が考えていた時だった。

「影光、さっきの話の続きだが…。ほら、なぜ私が豆板醤一気食いを条件にしたか、という話だ」

赤信号で車を止めた際、サイラスがふと思い出したかのように影光に告げる。

そう、あの時サイラスは何かを言いかけて、途中で言葉を遮った。二度と来てほしくない、それ以外には何の理由があったのかと影光が尋ねるが…。

サイラスは前を見ながらこう言った。

「やつ…オーディンが言ったことを覚えているか?技術、材料、想い…それはすべて人間の領域。|魔餉気《ま

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  • 料理の時間~Cooking Showdown Begins!~   第24話「SWEETEST[a]SLEEPER」

    さて次の日。リリスが味覚を取り戻し始めている、という報告を聞いたサイラスが、朝のうちに病院に向かった。フレイヤの迎えも兼ねて容態を確認しに行く…と嬉しそうに告げて。そんなわけで今『町食堂 かがやき』では影光、影羅の二人が開店の準備を進めている。TVから流れている『料理法違反で逮捕された男』を見て、これ昨日の原価厨のおじさんじゃない?と談笑しながら。ちなみに影時は今日は…いや今日も寝坊。まあいつものことである。リリスの入院後、現在『町食堂 かがやき』に寝泊まりしている者はいない。影光、影羅、影時、サイラスは花宮町に滞在するようになってから、近隣のビジネスホテルを長期で借りて生活している。フレイヤも十六歳の女の子を一人暮らしさせるのは危険ということで、同じビジネスホテル暮らしだ。まあ、不審者が現れても『料理勝負だ!』と叫べば観客たちが湧いてくるのだが。そして費用は、影光や影羅の実家である闇食倶楽部が全員分(影時を除く)を出している。ともにオーディンおよびG.O.D.に戦いを挑む同志だということで、気前よく出してくれたらしい。影時?影時は自分の給料からである。――――――――――「Ms.リリスとMr.サイラス。どういう関係かは知らないし詮索もしないけど、こんな朝早くから会いに行くなんてずいぶんと情熱的ね。なんだか羨ましいわねえ」二人の間柄がほほえましいのか、影羅は少し楽しそうだ。影光としてはあまり姉の交際遍歴は知らないし立ち入ることもないが、結婚願望はあるようで時折『どっかにいい男いないかしら』とぼやいている。姉はそもそも闇食倶楽部を継ぐつもりはないと明言しているし、内部の人間とそういう関係になるつもりも一切ないようだ。影時でよっぽど懲りたらしい。父の暗黒食王や弟の影光あたりは『影真あたりどうか』と勧めたりしたことはあるものの、姉は『影真とか絶対あり得ない』と断固拒否する有様である。ちなみに後日それを聞いた影真はちょっとショボーンとしていた。自分の知らな

  • 料理の時間~Cooking Showdown Begins!~   第23話「LOVE TRACE」

    ――さて、病院へのお見舞い、その帰り道。サイラスの愛車である真紅の『クラウン クロスオーバー』にて町食堂に戻っている影光とサイラス。午後四時を回っているものの、まだ夏のため外は暑い。いや、むしろ熱い。冷房がガンガンに効いている車の中でなければ正直耐えられない暑さだ。(フレイヤさん、病院に泊まるのはともかくこの暑さで明日帰って来るの大変じゃないかなあ)などと影光が考えていた時だった。「影光、さっきの話の続きだが…。ほら、なぜ私が豆板醤一気食いを条件にしたか、という話だ」赤信号で車を止めた際、サイラスがふと思い出したかのように影光に告げる。そう、あの時サイラスは何かを言いかけて、途中で言葉を遮った。二度と来てほしくない、それ以外には何の理由があったのかと影光が尋ねるが…。サイラスは前を見ながらこう言った。「やつ…オーディンが言ったことを覚えているか?技術、材料、想い…それはすべて人間の領域。魔餉気の前では通用しない…と」「ええ…覚えています。確かにあいつはそんなことを言ってました」「私は、あの原価厨が言っていたことはそれに通じるのではないかと思った。原材料費のみで料理を判断するのは、料理人の存在を無に等しいものとして扱うことになる。いや料理人だけではない。市場の人間や運送業、農家や畜産家、他にも中間に介在する無数の人間の努力や想いを無視しているのではないか。そう思ったら自分でも珍しく腹が立ってしまってな」信号が変わり、サイラスは車を進める。影光が思うに、サイラスの言うことは正しい。彼は原価厨のおじさんに対してではなく、その思想に含まれていたオーディンの影に怒りを感じたのだろう。―だがそれ以外に、もう一つ何かがあるような気がした。おそらくサイラスは、オーディンに敗れ味覚を失ったリリスを思い出し、オーディンの影にさえ怒りを感じたのではないだろうか。まあ二人がどういう関係なのかは知らないし、どう思っているのかは知らないが

  • 料理の時間~Cooking Showdown Begins!~   第22話「血と汗と涙の裏側のハッピー」

    さあサイラスと原価厨おじさんの料理対決も終盤、あとは握るだけである。丁寧に悪魔のおにぎりを握るサイラスに対し、分量も考えず、大量のイクラと雑に切ったマツタケを混ぜ合わせて握る原価厨おじさん。もう勝負は見えたようなものではあるが、両者最後の瞬間まで料理を作っている。その中で影光は、一つの疑問を持っていた。「サイラスさん、なんで豆板醤一気食いなんて敗北条件を突きつけたんだろう?」そう、影光にはそこが疑問だったのだ。サイラスとは一度戦ったことがあるからわかるが、技術では影光やフレイヤを圧倒的に凌駕していた。勝てたのが不思議なくらい…というか、サイラスが意図的に負けたとしか思えない勝負だった。彼ほどの人間ならば相手の力量を見抜くことなど造作もないだろうし、多少のことならば笑って済ませそうな優しい人間だ。なんせ無給で『町食堂 かがやき』を手伝っているわけだし。それほどの人間がなぜ豆板醤一気食いを提案したのか、やはりお坊ちゃまである影光には理解できなかったのだ。「やっぱ原価厨が気に入らなかったんじゃない?料理人の腕なんて無価値って言ってるようなものだから」「単純に性格悪いだけじゃないっすか?そーゆー顔じゃないっすかあの人」などとフレイヤや影時は言うが…影光には、その裏に何か隠された意図があるような気がしてならなかったのである。――――――――――さあ、両者の料理が完成する。サイラスの『Onigiri des Teufels』。対するは原価厨おじさんの『会社で横領した俺が異世界転生して超豪華おにぎり作っちゃいました』。(最悪)まずはサイラス側から…審査員、実食開始!審査員A曰く:「おおおっ!美味い!天かすの歯応えが活きてめんつゆの旨味とマッチしている!さらに白ごまの風味が…うう~む、香る!これほど濃厚な旨味なのに後味がサッパリしているのだ!

  • 料理の時間~Cooking Showdown Begins!~   第21話「DEVI」

    さてさて、新体制で経営をスタートさせた『町食堂 かがやき』。役割分担も決まり、リリス復帰まで五人でやっていこうと励んでいたのであるが、うっかり繁盛してしまったせいか、また厄介な客が訪れたのである。…いや、地上げ屋のおじさんじゃなくて。――――――――――「ちょっとこの料金はおかしくない?この麻婆豆腐定食、なんで800円も取るの?原価でいえば200円もしないでしょうが」昼の忙しい時間帯、テーブル席の方からそんな声が聞こえてくる。影光とフレイヤがそちらを覗いてみると、どうやら中年のおじさんが影羅に文句をつけているようだ。内容から察するに、材料費に比べて値段が高い…そんなところだろうか。同じく様子を見ていた丸坊主の影時が呆れたように呟く。「ああ~原価厨ですねありゃ。初めて見ましたよ、いるんだ本当に」原価厨…俗な言い方ではあるが、簡単に言えば料理やサービスの値段に対して材料費や仕入れ値だけを見て『値段が高すぎる』という人たちである。もちろん料理の値段には材料費以外にも人件費や設備費に光熱費、その他もろもろの諸経費に利益を含めての値段なのだ。あのリリスがそこまで考えて値段設定をしたかはちょっと怪しいが、その主張は的外れにもかかわらずこの手の人間は独善的な考えで動くものである。やれやれといった一同だが、その中でサイラスだけは含み笑いをしてそれを見ていた。「これは面白い。この世界であんなことを言い出すとは。さてはあのおじさん、別世界から異世界転生でもしてきたな?…どれ、ここは大人に任せておきなさい」――――――――――さて、影羅に文句をつけ続けているおじさんだが…サイラスが近寄ると今度は彼に文句をつけ始めた。やれ値段が高すぎるだのボッタクリだの、その割に建物がボロいだの。一通り文句を聞き終わった後、サイラスは腕組みをして静かに笑いながら彼に言う。「建物がボロいのは否定しない。だがそれ以外の発言は見過ごすには余りある。…では私と君で勝負をしよう。料理勝負だ」「は、はあ!?なんでそうなるんだよ!?俺はただ値段

  • 料理の時間~Cooking Showdown Begins!~   第20話「STAY GREEN ~未熟な旅はとまらない~」

    さあ、影光&フレイヤと影時のチーズ料理対決、両者最後の一手である。影光はチーズドリア、そして影時はやはりチーズタッカルビ。フレイヤがちぎったパセリをパラパラと乗せ、影時が細かく切った大葉と刻み海苔を乗せ…両者、料理完成である!さあ、審査員実食!――――――――――まずは影光のチーズドリア、命名して『白銀の海』から、審査員たちが食べ始める。審査員A曰く:「…うん!美味い!その一言だ!下層のバターライス、中層の海老と帆立のホワイトソース、上層のチーズが見事な調和を醸し出している!それぞれが主張しすぎず、しかし存在感をしっかりと示し、味を作り出しているのだ!見事というしかない!」審査員B曰く:「うほー!スプーンを入れるとチーズとソースがトロリ!そして各層だけでも美味いのに、合わさったこの味はたまらん美味さだ!チーズ、海鮮ソース、そしてライス!まさに白銀の三角形!私は今、白く輝く砂浜と熱く迎えてくれる海を感じている!」審査員C曰く:「ふふふ、かつて高級料亭に勤めていた私だが実はドリアが大好物でね。そしてこのドリア…これは美味い!濃厚かつ芳醇、この味わい深いバランス…見事と言うしかない!ぜひあとで作り方を確認させてくれたまえ!」審査員D曰く:「ラーメンじゃないので0点」審査員たちの反応は上々だ。影光もグッと手を握るが…すぐに気を取り直す。相手は影時。問題行動はあるにせよかなりの腕の持ち主だ。さて、その影時の料理…影時流チーズタッカルビ、命名して『The "OVERDRIVE"』。どうも影時はこの手の命名方法らしい。…とにかく、審査員実食!審査員A曰く:「う、うわっ!熱い!辛い!だが美味い!先ほどの『白銀の海』と違い鶏肉、タレ、チーズがそれぞれ主張しすぎて喧嘩している!だがそれが旨味をより高みまで持っていっているのだ

  • 料理の時間~Cooking Showdown Begins!~   第19話「JEALOUSYを眠らせて」

    さあ始まった影光と影時の料理対決、当然いつものように審査員と観客が湧いて出てきている。明らかに異常な風景ながらも、もう何も気にしなくなった影光と欠伸をしている影時に審査員が料理のテーマを告げる。今回は…『チーズを使った料理』!「おおっ、チーズとは!煮て良し焼いて良しそのまま食べても良し!」「これは面白くなりそうだぞ!どう作っても美味いもんな!」「終わったら俺にも食わせてくれー!」と、いつものように叫ぶ観客。相変わらず楽しそうである。さあ、調理タイム開始!――――――――――さっそく完成形が思い浮かんだのか、両者即座に動き始める。まず影光はいつものように生米を鍋に投入、影時はタレ漬けの鶏肉とキャベツなどの野菜を炒め始める。「ふむ、影光はチーズドリア、影時氏はチーズタッカルビか?チーズハンバーグなどが来るかと思ったが…だが悪くない。ましてや影光にとって鍋と米を使う料理ならば得意分野だろう」したり顔で解説を始めるサイラスだが、やはりフレイヤとしては気になってしまうことがあった。それは、影光がなぜあそこまで影時を敵視しているのか…ということ。世間知らずなところはあれど比較的穏やかで優しい影光が、あそこまで他人に厳しい言葉を吐くのは、少なくとも出会ってからは記憶にない。過去に何かあったのは間違いないだろう。それとなく影羅にも聞いてはみるが、彼女も詳しくは知らないようだ。ただきっかけとなるような事柄には思い当たりがあるらしく、確実じゃないけど、という前置きをしながら語りだした。「一、二年前かな。私と影時がお付き合いしていたことがあってね。それで影時が調子に乗って影光のことを弟とかマイブラザーとか茶化して呼んでた時期があったのよ。もしかしたらそれもあるのかもね」「あ、たぶんソレだ」得心がいったようにフレイヤがうなずく。言葉遣いや態度にも問題はあるだろうが、影光としては優しい姉が変なやつの彼女となったうえ、言わば臣下であるその変なやつが『弟

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