料理の時間~Cooking Showdown Begins!~

料理の時間~Cooking Showdown Begins!~

last update最後更新 : 2026-07-10
作者:  笹上パン工房剛剛更新
語言: Japanese
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故事簡介

コメディ

現代

ラブコメ

賢い子ども

財閥

バディ

超能力

パラレルワールド

初恋

これは、遠い未来か遥かな過去かはたまたこの現代か、地球にとってもよく似た宇宙のどこかの星のお話。もしかしたら地球かもしれない。 主人公の少年『影光』は父を超えるべく家出した先で、様々な料理バトルに巻き込まれる。そして彼はいつしか大きな陰謀に巻き込まれ始め、それは料理界を揺るがす大きな渦に…。 お粥を正拳突きで米に戻し、急にどこかから幻のトンデモ食材を取り出し、音速の包丁で空を切る料理人たちのバトル!料理バトルというか少年漫画バトルかもしれない。 「いくらなんでもそれはないだろう」と言われたいハイパー料理人たちの常識を投げ捨てた荒唐無稽な料理バトルが今始まる!

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第 1 章

第1話「GALAXY」前編

「はあ、お腹すいたなあ。どこかに食べるところないかなあ…」

時は七月ある夏の日。

腹を空かせた一人の少年が、寂れた町のこれまた寂れた商店街を歩いている。

見た目からするに十代中盤ほどであろうか、顔つきにまだ幼さを残したその少年は空腹を抱えて見知らぬ街を歩いていた。

どこかの飯屋で定食でも食べたいと思っているのだが、どこもシャッターが下り営業していないようだ。

まだ昼下がりなのに、この辺りではよっぽど商売にならないのだろうか。

…彼は言わば『家出少年』だった。

色々あって家を出て、縁もゆかりもないこの都内S区の『花宮町はなのみやちょう』に来たのだが、まったく知らない場所で右も左もわからない。今夜泊まる場所もない始末である。

――それでも、腹は減る。こればっかりはどうしようもない。そんなわけで冒頭のつぶやきを発し、歩きながらなんとか開いている食堂を探す彼だが…。

(う~ん、どこかに…あ!開いてるお店があった!)

路地の隅っこの方に、これまただいぶボロボロの建物が見える。一見廃屋かと思ったが、きちんと食堂の看板を掲げているのが見えた。入り口も開いているようで、ちゃんとやっている店のようだ。

もしかすると入り口さえぶっ壊れた廃屋なのかもしれないが…。

ともかくお腹と背中がくっつきそうな少年には、もうワガママを言ってる余裕はない。少し…いやとても不安はあるが、その店に入ることに決めたのである。

(…え~い、ここでいいや、もう入ろう。いざとなれば、食材を使って僕が作ればいいだけだし)

と意を決して、ただの飯屋に入るのに無駄に勇気を使いながら少年はその店…『町食堂 かがやき』に入った。

――――――――――

店に入った少年だが…内装は普通のようで、ちゃんと清掃や整理が行き届いている。

もっと建物をちゃんとすればいいのに、と思いながら席に座る少年だが…店の奥から店主とおぼしき若い女性がのんびりとした笑顔で話しかけてきた。

「こ~んにちは~。珍しいわねえ、一見いちげんさんなんて。旅行客かしら?あんな建物の外観でよく入ってこれたわね~」

いわゆる『ゆるふわ系』の店主のようだ。見た感じ、二十代中盤ほどの綺麗で穏やかそうな女性といったところか。なんだか感性がちょっとズレた人のようだな…と少年は考えるが、まあそれはともかく腹が減ったと彼はメニューを眺めた。

…品ぞろえも値段も普通の食堂のようだ。どうやらアブない店ではないらしい。

「あっ、えっと…じゃあ、この天丼をお願いします。あとお味噌汁とお新香」

「は~い。フレイヤちゃん、天、汁、漬いっちょ~」

と店主は厨房の方に声を掛けて奥に消えていく。先の発言から、調理は別の人間がするらしい。

しばらく待ち…少年の前に天丼と味噌汁、お新香が運ばれてくる。

味噌汁は赤だしに豆腐と三つ葉、お新香は白菜の漬物。しかし、やはり主役は天丼だろう。

少年がふたを開けると、ふわっという香りが漂い…腹ペコの少年の食欲を誘う。天ぷらは大きな海老が一つに、かき揚げ、茄子、蓮根、ししとう…まさに天丼のド定番といった天ぷらオールスターズである。

いただきますと少年はまず海老をかじるが…これは実に見事だ。食感、風味、油切れ…かなりのレベルでタレと調和している。タレも店のオリジナルであろうか独自の甘辛さで、天ぷらを支える白米との親和性も申し分ない。

まさかこれほどまでの味とは、あの店の外観からはとても想像がつかなかった。なぜこれでほかに客がいないんだろう…とも。

「これは美味しい!天ぷら、白米、そしてタレのバランスが取れている。かつお昆布出汁をベースに、少し酢橘すだちも混ざっているのかな?気づくか気づかないか…この量の見極めは凄いな。市井しせいの料理人にもここまでできる人がいたんだ」

美味いと言いながら食べ続ける少年だが…。

厨房の中にもその発言が聞こえたようで、料理した者がそこから少年を興味深そうに見つめていた。

――――――――――

完食し満足した少年は、ゆるふわ系店主にお会計をお願いする。御馳走様でした、とても美味しかったです、と。

店主も満足そうに、そうでしょう、うちの子は世界一なのよと笑顔で会計するが…その時、少年は財布がないことに気づく。

(さ、財布がない!いつ!?どこで落としたんだ!?駅を降りた時はあったのに…!?)

財布の中にはお金はもちろん、身分証や亡き母の形見も入っている。絶対に探し出さなければいけないが、まずは目の前のこのお会計だ。

家出したその日に家族に頼るというのもみっともないが、そんなことを言っている場合じゃない。お金を持ってきてもらわないといけない。

少年は冷や汗を流しつつ店主にその旨を説明した。

「あら~財布落としちゃったの?大変ね、じゃあいいわよお代は」

「いやっ、よくないですよ、それは。今家族に連絡しますので」

そんなことを言いながら少年は自らのスマホを取り出し姉に電話しようとするが…その前に、厨房から先ほどの天丼の料理人であろう人物が姿を出してきた。

年の頃は自分と同じくらい…十五、六歳の、ポニーテールで後ろ髪を縛った、可愛いながらも気の強そうな女の子だ。

その子が興味深そうに少年を見ながら言う。

「何?食い逃げ?それはちょっと困るんだけど?ほら、建物見てわかる通りただでさえウチ潰れそうだし。経営的にも物理的にも」

「いや食い逃げじゃないです。本当に財布落としちゃって」

どうやら女の子も本気で責めているわけではなさそうだが、それでも少年にとっては死活問題である。取り急ぎ電話しようとするが、厨房の女の子は少年を興味深そうに見つめながら言う。

「ところで…さっきの天丼の評価、なかなか的確だったじゃない。酢橘を使ってるのを見極めた人間はなかなかいないわよ。あなたもけっこう、調理る側の人間みたいね」

「え?ええ、家がそういう系の家だったので」

「よし!じゃあ決まり!私と料理勝負よ!あなたが勝ったら料理の代金はタダでいいわ!そのかわり、私が勝ったらあなたは一週間ここでタダ働き!」

その言葉に少年は絶句する。天丼ほか合わせた料金はせいぜい1,300円程度だが…いくら暇そうな店とはいえ、それで一週間タダ働きはあんまりだ。

店主も少し心配そうに、いくらなんでもそれは条件がひどいのではないかとその女の子に言うが…女の子は引かないようである。

「で、調理るの?調理らないの?やらないんなら警察に突き出すだけだけど?」

ああ、こういう店だったのか。どうりで味のわりに客がいないわけだ…と少年はため息をつき、女の子を睨み返し言う。

「いいでしょう、調理ってやりますよ」

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8 章節
第1話「GALAXY」前編
「はあ、お腹すいたなあ。どこかに食べるところないかなあ…」時は七月ある夏の日。腹を空かせた一人の少年が、寂れた町のこれまた寂れた商店街を歩いている。見た目からするに十代中盤ほどであろうか、顔つきにまだ幼さを残したその少年は空腹を抱えて見知らぬ街を歩いていた。どこかの飯屋で定食でも食べたいと思っているのだが、どこもシャッターが下り営業していないようだ。 まだ昼下がりなのに、この辺りではよっぽど商売にならないのだろうか。…彼は言わば『家出少年』だった。色々あって家を出て、縁もゆかりもないこの都内S区の『花宮町』に来たのだが、まったく知らない場所で右も左もわからない。今夜泊まる場所もない始末である。――それでも、腹は減る。こればっかりはどうしようもない。そんなわけで冒頭のつぶやきを発し、歩きながらなんとか開いている食堂を探す彼だが…。(う~ん、どこかに…あ!開いてるお店があった!)路地の隅っこの方に、これまただいぶボロボロの建物が見える。一見廃屋かと思ったが、きちんと食堂の看板を掲げているのが見えた。入り口も開いているようで、ちゃんとやっている店のようだ。もしかすると入り口さえぶっ壊れた廃屋なのかもしれないが…。ともかくお腹と背中がくっつきそうな少年には、もうワガママを言ってる余裕はない。少し…いやとても不安はあるが、その店に入ることに決めたのである。(…え~い、ここでいいや、もう入ろう。いざとなれば、食材を使って僕が作ればいいだけだし)と意を決して、ただの飯屋に入るのに無駄に勇気を使いながら少年はその店…『町食堂 かがやき』に入った。――――――――――店に入った少年だが…内装は普通のようで、ちゃんと清掃や整理が行き届いている。もっと建物をちゃんとすればいいのに、と思いながら席に座る少年だが…店の奥から店主と思しき若い女性がのんびりとした笑顔で話しかけてきた。「こ~んにちは~。珍しいわねえ、一見さんなんて。旅行客かしら?あんな建物の外観でよく入ってこれたわね~」いわゆる『ゆるふわ系』の店主のようだ。見た感じ、二十代中盤ほどの綺麗で穏やかそうな女性といったところか。なんだか感性がちょっとズレた人のようだな…と少年は考えるが、まあそれはともかく腹が減ったと彼はメニューを眺めた。…品ぞろえ
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第1話「GALAXY」後編
さて、料理勝負を受ける少年のその発言を受けて、店員少女が笑って外に出た時…。そこには、寂れた通りにもかかわらず一瞬で人だかりができていた。「えっ、なにこれ」熱狂している人だかりを見て少年が面喰らったようにそう言う。何やら、『審査員席』と書かれた机に偉そうに座っている四人の男もいる。観客も審査員もいったいどこから湧いて出たというのか。そして、いつのまにこんな準備をしたというのか。温室育ちの少年には…いや普通の感性を持っている人間にもまったく理解ができない状況だ。そんな彼を見てゆるふわ系の店主が心配そうに言う。「あなた、さてはかなりのお坊ちゃまなのね。これがこの世界のルールなのよ」店主が言うにはこうだった。この世界では料理勝負が最大の娯楽で、野球、バスケ、格闘技等その他の競技をぶっちぎりで超える人気を誇っていること。公式大会のみならず料理対決は私人同士でも可能であり、調理ると決めたらどこからともなく観客と審査員が湧いてくること。料理勝負を持ち掛けられた場合は正当な理由なくして断ることはできず、最初に決めた敗北時の取り決めを絶対に遵守しなければいけないこと…。「滅茶苦茶じゃないですか…」料理勝負というものがあることぐらいは家で聞いていた少年だが、そのあまりに大げさで過激なルールにこれまた閉口する。…しかし、もう退くわけにはいかない。少年にも家で叩きこまれた調理技術がある。またそれほどまでにこの世を支配しているルールならば、家出してしばらく一人で生きていくためにも避けて通れまい。ここまで来たら調理るしかない、と少年も気合を入れた。――――――――――さて、外に設けられた調理場を前にして、審査員が料理のテーマを決める。テーマは…『海老天丼』!「天丼ね!得意中の得意だわ!」テーマ発表を受けた少女、その名も『フレイヤ』が勇んで準備に入る。まずは米を炊く用意、そして海老の選別…どうやら先ほど作った天丼から海老のみを主役にするようだ。ちなみにテーマを決めるのは審査員で、材料や調理器具も審査員が用意するらしい。しかしながら材料や器具の持ち込みも認められるとか。「ううっ、さすが『花宮町の闘神』フレイヤ!準備があまりにも早い!」「食べ終わった後にいきなり勝負を吹っ掛けられ
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第2話「ideologue」
さてさて、影光とフレイヤの天丼対決から一夜明け、次の日の朝。朝の支度を済ませたフレイヤが、店を開ける準備を始める。店主である母は朝早くに出かけて行った。『ちょっと雲の流れでも見てくるわね』と相変わらずよくわからないことを言いながら。(まあ、どうせお客さんは来ないんだけどね)テーブルを綺麗に拭きながら、フレイヤがそんなことを考える。この町食堂、料理の味は絶品そのものながら、来る客すべてに片っ端から料理勝負を仕掛けたせいか、いつしか客は来なくなってしまった。噂を聞きつけ勝負を挑みに来る者もいたが、フレイヤはそのことごとくを返り討ちにし、いつしか店は『修羅が集う町食堂 かがやき』という異名まで付けられている。口コミサイトでも『料理は絶品。ただし決して気軽には行くな』『何が起きても責任は取れない』『廃墟には鬼が住む』『Eat & Die』という心霊スポットのようなレビューさえ書かれる始末である。フレイヤとしては自業自得とはいえ不本意であったが、母である店主は特に気にしていないようでその行動を咎めることはなかった。今日もどうせ客は来ないだろうな、と思い店の椅子に座っていたところ…。「おはようございます!」――と、元気に挨拶してくる少年がいた。見ると、昨日料理勝負をした影光である。「あれ?どうかした?忘れ物?」「えっ?いえ、昨日店主の方からここでしばらく働いたら?って言われたので」「えっ?」不思議に思ったフレイヤが影光から事情を聞くと…。どうやら、影光はしばらくこの花宮町にいることにしたらしい。一か月ほどビジネスホテルの部屋を借りたということだ。家出中にもかかわらず親の金で。とはいえ何もしないわけにもいかずどうしようか考えていたところ、ゆるふわ店主から『しばらくウチで働いたら?変な奴ばっかり来るからいい特訓になるわよ』と言われたとのことだ。フレイヤとしてはそんな話は一切聞いていないし、母はいま出かけているので聞きようもないが…まあ、あの母なら言いかねないな、と考える。どうにも昔からあの母は言うべきことを言うべき時に言わず、なんで今それを言うの?ということを不意に言い出すタイプの人間なのだ。それに、フレイヤとしても負けた悔しさはあるものの、店の手伝いが増えるならそれはありがたいことだ。「まあ、ママなら言いかね
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第3話「Gift」
さあ、卵料理バトル、調理開始!まずはサイラスが鶏卵を一つ手に取るが…。「教えてやろう。このサイラス、料理において一切の不得手はない。中でも卵料理は、食材に敬意を持って我が腕を振るうにふさわしい。卵こそ料理の基礎基本にして最重要とも言うべき食材だからだ!」そう言うと、彼は手にした鶏卵を一つ空中に放り投げ、人差し指で軽く突く。すると卵が勝手に割れ…黄身と白身が一瞬のうちに分離し、別々のボウルに流れ落ちた。それを見た影光とフレイヤも、目を見合わせながら驚愕し大声を出してしまう。「うえええええ!?何あれ!?」「あ、あれほどの技術…というか超能力?そんな人が、なんで地上げ屋の専属シェフなんかやってるんだ?」「あと、卵放り投げるのって食材に敬意持ってるのかな…」驚く二人をよそにサイラスはさらに次々と卵を割り、ボウルに中身を注いでいく。驚いている影光とフレイヤだが…ハッと我に返り、自分たちの調理の準備を始める。調理タイム終了までに料理が完成しなければ不戦敗…その時点で敗北が決定するのだ。何はともあれまずは動かなければならない。(しかし卵料理と言っても広範だ…何を作ればいい?あのサイラスという人、生半可な相手じゃなさそうだぞ。そんな人に対抗できる卵料理と言えば…なにがある?)オムレツ、キッシュ、目玉焼きに卵焼き、スクランブルエッグ…卵料理はあまりにも多種多様だ。解釈によってはベーコンエッグトーストやマカロン、スポンジケーキ、T.K.G.も含まれるかもしれない。創作料理まで含めればその数はもはや膨大だ。サイラスが言った『卵こそ料理の基礎基本にして最重要』というのは、決して言い過ぎではないだろう。影光が思案している中…彼のアシスタントとして入っているフレイヤは卵を割っている。どのみち卵を使うのだから今から割っておいても問題はない。だが、それを見た地上げ屋のおじさんは審査員にクレームをつける。「コラァ!審査員ども!目ン玉ついとんのかワレコラァ!!二対一でこっちが不利になっとるやろがい!!」しかし審査員はすぐにその意見を却下する。アシスタントは二名まで認められるのがルールだからだ。特に料理勝負に詳しくなかった地上げ屋のおじさんは、悔しそうに地団太を踏むが…。「ええい、ならばわしがサイラスの助っ人に入ってやる!」「なっ!?…バ
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第4話「BALANCE」
さあ、影光&フレイヤとサイラスの料理が出揃った。いよいよ、審査員の実食開始!まずは影光側から料理を出す。皿の中央には、三日月のように弧を描く半熟オムレツ。その下には、赤く艶めくチキンライスが大地のように広がっている。影光曰く…名付けて『黄金の三日月』!審査員A曰く:「ふおおっ…溶ける!フォークを入れただけで卵が溶けるぞ!黄金に輝く半熟のオムレツに色鮮やかなチキンライス…なんと鮮やかな色彩のバランスだ!」審査員B曰く:「味も申し分ない!味の強いチキンライスを卵の優しき甘さが包む!力強くも大地を踏みしめる勇者と、それを優しく見守る姫のようだ!世界を救う僕たちの旅はここから始まる、と言っているようだ!!」審査員C曰く:「かつて高級料亭で勤めていた私だが、これほどまでに調和の取れたオムライスはなかなかお目にかかれん…味、色彩、温度…全てにおいて非のつけようがない!」審査員D曰く:「ラーメンじゃないので0点」最後の評価に少しため息を吐く影光だが、審査員の反応は上々のようだ。その分、なんで審査員Dのラーメンおじさんは許されているんだろうと考え込んでしまう。(でも…誰も文句を言わないのなら、仕方ないのかもしれない。何か凄い人なのかもしれないし…)ともかく、影光は相手のサイラスの反応を見るが…。なんと、サイラスはまったく動じず静かに笑っている。まるですべて予想済み、こちらは掌の上だとでも言いたげな余裕だ。(あの人、まったく動じていない…なぜだ?自分の料理にそれほど自信があるのか?)フレイヤもまた別の意味でサイラスのことが気になっていたようで、彼の方を見る。「あれほどの人が、なんで地上げ屋の専属シェフなんてやってるんだろうね?お金で動くような人でもなさそうだし」と、やっぱりそこは疑問に思っているようである。おそらく、会場の人間みんながそれを思っているのではないだろうか。――次に、サイラスが前に出る。「では、私の番だな。ご覧いただこう。これがこのサイラスの卵料理…その名も『卵貫全席』だ」そこに出された皿は五品…それを見て観客がうおおおっ!?と声を上げる。第一の品はまるで小籠包…しかし、卵白を皮のように薄く焼き、中には卵黄の餡。第二の品は黄身の低温固め…まるで黄身漬けのようだ。第三の品
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第5話「冒険は日常の中に」
さて、影光が『町食堂 かがやき』に来てから一週間後…。店は、今まで閑古鳥が鳴いていたのが嘘のようにお客さんであふれ返り、大繁盛していた。近所の住民はもちろん、ちょっと離れた隣町や隣県からも来ている様子である。影光やフレイヤも今までとは打って変わって朝から夕方まで大忙しの様子だ。母のリリスはあんまりいつもと変わらない様子であるが。――ここまで急に客が押し寄せるきっかけになったのは、影光のたった一つのアイデア。『お客さんには喧嘩を売られない限り、無意味に勝負を吹っ掛けない』それだけである。それをわざわざ店の前に張り紙までして周知したところ…敬遠していた客が押し寄せたのだ。もともと味は絶品で値段もわりと安く、実年齢より十歳から十五歳は若く見えるゆるふわ系美人店主(三十五歳)が適当に接客してくれるので、そりゃ来るわ来るわの大騒ぎであった。「とほほ~こんなに忙しくなるなんて思わなかったよ」などとフレイヤもこぼすほどである。また、たまに喧嘩を吹っ掛けてくる腕自慢の修羅がいても、以下のように正当な理由を付けて断っていた。『他のお客さんの対応で忙しいから今は無理。どうしてもやるならまず食べて待ってて』客も修羅も優先度は同じ、先着順というわけである。さらに地上げ屋のおじさんも来たが『帰れ』の一言でショボーンとして帰っていった。さてそんな中、影光はというと…実は少し困っていた。店が繁盛するのは良いことだ。文句を言いながらもイキイキとしているフレイヤやその母リリスを見ると嬉しいのは事実である。だが、せっかくだからやはり料理勝負をして腕を磨きたい気持ちもある。腕自慢の修羅が勝負を断られてショボーンとして帰っていくのは、やっぱりちょっと成長の機会が失われてもったいない気がした。もっともその修羅たちも店で影光やフレイヤの料理を食べて『うう、負けた…』と諦め帰っていくので、そもそも勝負をするまでもないのかもしれないが。…そんな影光を見てフレイヤも何か思うところがあったのか、昼休憩中に影光に話しかけてきた。「勝ち負けの条件はなしで、料理勝負しようか?ほら、私もお客さんに勝負を吹っ掛けられなくてつまらないし」フレイヤが影光に気をつかっているのか、それともとにかく喧嘩をしたいバーサーカーなのかは知らないが…フレイヤなら相手に不足はない、とその申し出をありがたく承諾す
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第6話「Upstream Children」
調理タイム終了!まずは影光の冷やしうどん。キリリと冷えたうどんに、いりこ出汁と醤油ベースの冷たいつゆ、薄切りの酢橘と白髪ねぎ、最後の仕上げに乗せたミニトマトという清涼を感じるうどんである。影光曰く、名付けて『香徳』。讃岐うどんの『香川』と酢橘の『徳島』を合わせた、ちょっとした言葉遊びである。さて、審査員実食!審査員A曰く:「うむむっ!コシが強く、うどんの茹で方シメ方ともに不足なし!うどんの旨味を十二分に引き出している!なんと見事な見極めだ!」審査員B曰く:「むふう、このツユも見事だ!醤油といりこ出汁をベースに酢橘の爽やかさが駆け抜ける!梅肉の酸味がほのかに香り、そこにミニトマトのアクセント!これは夏にはたまらない爽快感の贈り物だ!」審査員C曰く:「かつて高級料亭で勤めていた私だが、私の店では出ないタイプの料理だ。だが、味は申し分ない!毎日食べたい料理と言えるだろう!」審査員D曰く:「ラーメンじゃないので0点」「うどんでもダメなんだ。同じ麺料理なのに。妥協しないなあ、あのラーメンおじさん」そんな審査員Dに対する影光の皮肉を流して、フレイヤの料理が出される。熱いうどんにほのかに赤いツユ、その上には堂々と座るかしわ天と、それに寄り添う温玉と大根おろし。名付けて『 C . F . H . 』!「何その名前」「え?昔漫画で見たから」そんな影光とフレイヤの会話を横目に、さあ審査員実食!審査員A曰く:「むほー!熱い!辛い!しかしこれはどうしたことだ!箸が、箸が止まらない!旨味が!辛いだけではないツユの旨味がコシの強いうどんと見事に調和している!夏でも辛さはやっぱり欲しい!」審査員B曰く:「むむむ、ただの麺とつゆの調和ではないぞ!まるで両者が宿命のライバルの如く高め合い上昇気流に乗り、より高みへ上っているのだ!そこにこのかしわ天が両者を助け、大根おろしと温玉が辛みを優しく包み、味全体をまろやかにまとめている!ま、まさにうどんの三種の神器!!」審査員C曰く:「かつて高級料亭で勤めていた私だが、このバランスは見事!一つでも味が強く、また弱ければすべてブチ壊しになる!うむむ、この若さで恐ろしいバランス感覚だ…!」審査員D曰く:「ラーメンじゃないので0点」さて、両者の料理
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第7話「THE FATAL HOUR HAS COME」
さて、影光がこの町『花宮町』に来てから二週間が経った。かつてとは変わり、多くの客が訪れている『町食堂 かがやき』でのアルバイトは忙しくも楽しく、研鑽の日々でもあった。一応アルバイトの期間は影光が花宮町に留まる一か月間と決めていたが、延長してもいいかな…と考え始めてもいた。そんなある日…店に、ある因縁の人物が現れる。ギラギラとした下品なスーツ、禿げあがった頭、妙に整えたヒゲに似合わないサングラス…そんなファッションをした小柄な五十代ほどの男性。そう、いつもの地上げ屋のおじさんだ。「お~う、フレイヤちゃん。お母さんおるか~?」「いない。帰ったら?」その姿を見るなりフレイヤがそう発言するが、地上げ屋のおじさんは今日は客として来たと言い張る。それでも帰れと言うフレイヤに対し、影光がなだめるように言う。「まあまあ、お客さんとして来たんだから。で、ご注文は?」「おう、カレーじゃ。普通のカレー。坊主、ワレが作ったカレーを食わせてもらおうかい」まるで何かを企んでいるかのようにニヤニヤと笑うおじさんだが…。まあそのくらいなら別にいいやとカレーを作る影光と、なんか変なことを言い出したら代金を百倍、いや五百倍にしてやるからねと思うフレイヤであった。当然ながら、この時はまだほとんど誰も気づいていなかった。闇の料理組織『G.O.D.』の魔の手は静かに伸びており、それが『町食堂 かがやき』の面々を大きな陰謀の渦に巻き込んでいくことを。――――――――――目の前に運ばれた『普通のカレー』600円を一口食べる地上げ屋のおじさん。だが…彼はその一口で食べるのを止め、店員の影光を呼んだ。「ふん、お勘定や。もう食う価値もないわ。これならワシが新たに雇った専属シェフのカレーの方が圧倒的に美味いわ。坊主、才能無いのう?ワレ」「えっ…」唐突にされたダメ出しに思わず声が出る影光。しかしすかさずフレイヤが…。「はいどうも。お勘定、迷惑料込みで300万円になりまーす」「えっ」地上げ屋のおじさんに対し、何の脈絡も
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