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第7話

ผู้เขียน: 平坂果音
その言葉を耳にした瞬間、翔真の目に淡い哀しみがにじんだ。

「枝里……ただの物じゃないか。壊れたなら、俺が美羽の代わりに弁償する。そんなに怒ることないだろ?」

枝里は、涙に潤んだ目で叫んだ。

「だったら……その『ただの物』を、ちゃんと見て!」

彼は戸惑いながら視線を落とし、そして動きを止めた。

それが何であるか——翔真はすぐに理解した。

それは、枝里の両親が遺した唯一の形見、翡翠のブレスレットだった。事故で両親が倒れたあの頃、彼女は毎日のようにそれを手に取り、手入れをしていた。

翔真の声は、やわらぎを帯び、優しくなった。

「枝里……わかってるよ。でも、美羽は悪気があってやったわけじゃない。修理できるように手を尽くすよ。だから、もう少しだけ冷静になって……な?」

そう言いながら、彼は美羽の方へ振り返り、表情を一変させた。

「まだここにいるのか?悪いことをしたなら、さっさと出て行け!」

その一言に、美羽は唇を震わせ、目に涙を浮かべて顔を覆い、そのまま泣きながら部屋を飛び出していった。

彼女の姿を見届けてから、翔真はそっと枝里に近づいた。

「枝里、見ただろ?ちゃんと美羽を叱った。もう、そんなに怒らないでくれよ……」

叱った?あの一言だけで?

それで、両親が残してくれた大切なものが戻ってくるとでも?

枝里は小さく冷笑し、無言で彼の腕を振り払った。

黙々と床に散らばった翡翠の破片を拾い集め、そっと布に包む。翔真が手を貸そうとしたのも、無言で拒んだ。

「関わらないで。あれは、わざとだった。絶対に許さない」

その声は、氷のように冷たく硬かった。

彼女は書斎の監視カメラの映像をコピーし、翡翠の破片を携えて警察署へ向かった。

「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」

「東雲枝里です」

対応した警官は、何度も彼女の顔と資料を見比べた末、静かに首を横に振った。

「申し訳ありませんが、本件については対応できかねます。お引き取りください」

思いもよらない言葉に、枝里は無意識に拳を握りしめた。胸の奥に、じわじわと不安が広がっていく。

その後、二軒目、三軒目……と警察署を回ったが、返ってくるのはどこも同じ返答だった。

誰一人として、彼女の訴えに耳を傾けようとはしかなった。

五軒目、ついに枝里は、カウンターに証拠映像のデータを叩きつけた。

「証拠なら揃ってる。損害額だって、立件に十分値するはず。なのに、どうして、誰も動こうとしないの!?」

警官たちは視線を逸らし、無言を貫いた。

その時、一人の女性警官がそっと近づき、申し訳なさそうに小さな声で告げた。

「東雲さん……本当にごめんなさい。私たちの判断ではないんです。あなたの婚約者が、京市のすべての警察署に『一之瀬美羽には手を出すな』と根回ししていて……

これは家族同士の問題で、東雲さんがちょっと感情的になっているだけだと……」

その言葉を聞いた瞬間、枝里の体から全ての力が抜けていった。

冬の冷たい風の中で、頭から氷水を浴びせられたようだった。足の先から、心の奥まで、すべてが凍りついた。

翔真は、そこまでして美羽を守るのか。

彼は、あの翡翠の意味を知っていた。それが彼女にとって、どれほど大切な物であるかも。壊された時、どれほど絶望したかも。

すべてわかっていながら、守ったのは彼女ではなく——美羽だった。

抜け殻のようになった枝里は、警察署をあとにした。

まるで魂を失った人形のように、重い足取りで外に出る。

そのとき——

夜空に、ドンと響く音と共に、花火が咲いた。

ただ目の前だけでなく、京市全体の空が光に包まれていく。

夜空に浮かび上がった、燃え尽きそうな文字。

【美羽、ごめん】

一発、また一発。花火が打ち上がるたびに、文字が少しずつ重なっていく。

その光景を見つめながら、枝里はふっと笑った。そして、涙がこぼれ落ちた。

枝里、これが、あなたが七年愛した男の「答え」。

あの時、必死に口説いてきた男。

「一生守る」と誓った、あの男。

そして今——

あなたが、地獄の底にいるこの瞬間、彼はその「地獄」を作り出した張本人を優しく慰めている。

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