LOGIN部屋の中へと引きずり込まれるや否や、道真は古びた小上がりの上へと倒れ込むように崩れ落ちた。額やこめかみから噴き出す脂汗が絹の襟元をぐっしょりと濡らし、酸えた匂いを漂わせていた。蓮花は軋む板戸をぴたりと閉め、かんぬきを差すと、呆れたように舌打ちをしながら歩み寄ってきた。
「百両も投げつけていかれたから、少なくとも半月は保つかと思えば、一日と保たずに這い戻っていらっしゃいましたね」
「か、からかう暇があるなら……っ! 早く紐を……頼む……っ!」
道真は戸口の方へ顔を向けた。かんぬきが掛かっているのを確認してようやく、長く息を吐き出した。蓮花はその視線を追って一度戸を振り返った後、男が小上がりの端から転がり落ちぬよう、脇にあった布団を引き寄せてあてがった。
「ここまで来られたのですから、外を気にするのはおやめなさい」
道真は自身の胸元を掻きむしりながら、詰まった声で喘いでいた。蓮花はこれ以上無駄口を叩くこともせず、手慣れた手つきで道真の羽織をはだけ、袴の紐を荒っぽく引きほどいた。
スルリ……。
袴が床へと滑り落ち、空気に晒された魔物の姿に、蓮花は我知らずごくりと喉を鳴らした。昨晩よりもさらに太く、赤黒い血管を怒張させた怪物が、猛獣の顎のように煮えたぎる熱気を吐き出していた。
拳ほどもある亀頭は血の色に張りつめ、息を乱すたびに透明な先走りの蜜が、大粒の涙のように板間へとぽたぽたと滴り落ちていた。昼のあいだ装束の内側で圧迫されていた生々しい跡が、表皮に残っていた。
「やれやれ。昼のあいだこれを無理やり押し込めていらしたのですから、腹の中は真っ黒な消し炭のようになっていることでしょう」
蓮花は真鍮の桶に張られた氷のように冷たい清め水に、両手をざぶりと浸した。水滴がしたたる冷え切った掌が、ついに燃え盛る魔物の根元を隙間なく包み込んだ。冷たい水が熱い表皮に触れた瞬間、ジュウと白い湯気が立ち上った。
「ひあぁあああ――ッ!」
道真の喉の奥から、武士の威厳とは程遠い泣き声混じりの嬌声がほとばしり出た。氷水に焼きごてを突き刺したかのような激しい感覚とともに、骨の髄まで突き抜ける極陰の冷気が道真の脳内を吹き荒れた。道真は小上がりの敷布を爪が白く反り返るほど握り締め、腰を猛烈に跳ね上げた。掌の中で、柱が一寸ほども太さを増すかのようだった。
「あ、あんっ……! 蓮花……て、手が冷たすぎる……っ、あぁっ!」
「冷たくなくては毒気が抜けませぬ。大人しく力を抜きなさい、若様」
蓮花は親指と人差し指で敏感に膨れ上がった亀頭の縁をじっと揉みしだき、残りの指で巨大な柱を一定の速度で撫で上げた。一度上げるごとに、浮き出た血管を一本ずつ押し潰すように通り過ぎる。下ろす時は、掌全体で搾り取るように圧力を加えた。
ぬちり、じゅぷ、じゅるる……。
先端から溢れ出た粘りつく先走りの蜜が、冷たい水と混ざり合い、湿った淫らな摩擦音を狭い一室に響かせた。道真は舌を噛み切って自害したいほど恥ずかしかったが、下半身を支配する快楽の濁流は、彼の理性を無慈悲に引き裂いていく。涙でぐしゃぐしゃになった道真の涼やかだった目元は、赤く濡れそぼってだらしなく蕩けていた。
鼻水まで啜り上げながら、男の赤い唇の隙間から熱い吐息がフーフーと漏れ出る。腰が勝手に蓮花の手を追いかけ、彼女の手首を蜜で濡らした。
「くっ……うぅ……頼む、優しくしてくれ……早すぎる……あぁっ、ひぃん!」
「優しく弄ったところで陽気は抜けませぬ。お奉行様、口では立派な武士のふりをなさって、寝床の上では何故このように淫らに啼かれるのです?」
蓮花の容赦のない手つきは、さらに激しさを増していった。親指で怒張した柱の血管をじっと押し込みながら扱き下ろすたび、道真の背筋を戦慄が滝のように流れ落ちた。亀頭の先端のスリットを親指でぎゅっと押し塞ぎ、一瞬ののちに一気に跳ね上げるように扱き抜くと、道真の背が弓なりに反り返り、悲鳴が上がった。塞き止められていた先走りの蜜が一気に弾け、蓮花の手の甲を濡らした。
「だ、駄目だ……出る……破裂してしまう……っ、あぁあああっ!」
道真が両足をガタガタと震わせ、腰を激しく突き上げた。蓮花が根元を両手で握り込み、最後の一滴を搾り取るように一気に扱き上げた。
ビュルルッ! ドクドクドクッ――!
昨晩の倍はあるかという量の、熱い白濁した精液が、蓮花の着物の胸元と指の間へと立て続けに爆ぜ散った。最初の太い一筋が彼女の顎にまで跳ね、続く奔流が壁紙と床を白く汚していく。腰が虚空で激しく痙攣するあいだも、噴出は止まらなかった。蓮花が手を離さずにいると、最後に残った陽気までもが掌の中でどくりどくりと脈打ちながら吐き出された。
「はぁ……あぁ……くっ……」
ついに射精が治まると、丹田の地獄のような高熱は嘘のように引き、道真は気を失うように蓮花の膝の上へと倒れ伏した。男のすすり泣き混じりの荒い息遣いだけが、静寂の中に痛々しく響き渡っていた。蓮花の膝は、精液と汗でぐっしょりと濡れそぼっていた。
ブスッ――!ついに巨大な魔物の丸い亀頭が、蓮花の狭い秘谷の入り口を引き裂かんばかりに押し入った。「あぁあああっ――ッ!」蓮花の口から、引き裂かれるような悲鳴がほとばしり出た。純潔の赤い血が、白く強張った太ももを伝ってツゥと流れ落ち、絹の敷布を赤く染めた。真っ赤に焼けた鉄の杭で下腹部を貫かれたかのような、殺人的な激痛。蓮花の全身が弓なりに反り返り、小刻みに痙攣した。「蓮花――ッ!」道真の目から血の涙がこぼれ落ちた。男は蓮花の華奢な肩を砕けんばかりに抱きしめ、己の唇を強く噛み締めた。己の罪と呪いが、この何の罪もない若い娘を傷つけているという罪悪感に、胸が張り裂けそうだった。「もうやめよう……抜け……私が死ぬ! 私が死ねば済むことだ……っ!」「動……かないでくださいまし……っ! はぁっ……あぁっ……!」道真は蓮花の言葉を聞こうと首を垂れた。普段ならどんな小さな物音にも一喝していた男が、今はひとつの返事を聞き逃すまいと息すら殺していた。「聞いておる……そなたの言うことは、すべて聞いておるぞ」蓮花は彼の肩に置いた手を離さなかった。道真はその手を払いのけも急かしもせず、彼女が顔を上げるのをじっと待った。蓮花は道真の肩に爪を食い込ませながら涙を流した。しかし退きはしなかった。女は震える腰をゆっくりと、ほんの少しずつ、さらに下へと沈め続けた。ミシミシ……。蓮花の狭く冷たい内壁の粘膜が、凶暴な巨根の太い柱を一寸、また一寸と呑み込み始めた。想像すらしたことのなかった、巨大で圧倒的な大きさ。まるで鍛え上げられた鉄の杭が、狭い隙間を力づくで押し広げて入ってくるかのような圧迫感に、蓮花の額にびっしりと脂汗が浮かんだ。しかし肉壁が押し広げられる激痛の合間から、道真の剛直から放たれる熱い脈動が、女の子宮口をドクンドクンと激しく叩き、言葉にできぬ戦慄を呼び覚ました。その瞬間、奇跡が起こった。ジュウウッ――!道真の巨根から噴き出していた黒魔術の殺人的な火魔が、蓮花の体内深くに眠っていた純粋な極陰の霊気と、正面からぶつかり合ったのだ。氷のような女の内壁が煮えたぎる巨根を締め上げ、丹田を焼き尽くしていた呪いの魔気を猛烈に吸い込み始めた。「ひあぁあああ――ッ!」道真の背筋が虚空へと跳ね上がった。男は白目を剥いた。外治や接治とは次元の異なる、魂の底まで溶かしてしまうよ
道真の熱い愛撫に、蓮花の全身が気だるく火照っていった。生涯、冷たい極陰の体質として生きてきて、一度たりとも感じたことのなかった凄まじい熱気だった。蓮花の秘めやかな秘谷(ひこく)の隙間から、澄んだ透明な愛液が露のように滲み出始めていた。冷たい極陰の霊気が凝縮されたその神秘的な露は、猛烈に燃え盛る道真の火魔を吸い取るための、自然な本能の現れであった。部屋の中にはほのかな艾の香りと共に、咲き初めの花蕾から漂うような、甘く湿った陰気の匂いが濃密に立ち込めていた。蓮花は太ももの内側を伝い落ちる熱く冷たい感触に、下腹部を小刻みに震わせた。「はぁ……あぁ……若様、もう……」蓮花は荒い息を吐きながら、道真の広い胸板に手をついてゆっくりと身を起こした。月明かりの下に晒された蓮花の裸身は、聖なる巫女のように神秘的な光を放っていた。道真は夜具の上に仰向けに横たわったまま、血走った目で蓮花を見上げていた。男の股間から黒々とそそり立つ魔物は、もはや人間の限界を遥かに超越して煮えたぎる脈動で部屋の空気すら震わせていた。拳ほどもある亀頭の先のスリットがヒクヒクと蠢き、赤黒い熱液を虚空へとポタポタと滴らせていた。「れ、蓮花……本当に……耐えきれるのか……?」道真の声が羞恥と恐怖で震えていた。道真は答えを急かさなかった。蓮花が顔を上げるのを待ち、唇を固く引き結んだ。普段なら何であれ自分が先に口を開かねば気が済まなかったが、今は彼女の言葉を聞かねばならなかった。蓮花もまた、彼から視線を逸らさなかった。あの狭くか細い生娘の肉体の中へ、このおぞましい凶器をねじ込まねばならぬという罪悪感に、男の目頭が再び赤くなった。蓮花は答える代わりに、華奢な手を伸ばし、煮えたぎる巨根の根元をがっしりと鷲掴みにした。女の冷たい手のひらが触れただけで、道真の全身を雷が貫いた。「く、うぅっ……蓮花……触るな……破裂してしまう……っ!」男は両手で敷布を爪が砕けんばかりに握り締め、腰をガタガタと震わせた。武士の体面も威厳もすべて溶け落ち、ただ蓮花の手つきに救いを乞う無様な姿だった。蓮花は道真の逞しい太ももの上に、慎重に足を押し広げて跨がった。武家の体面と厳格な掟が支配していたこの国で、一介の裏長屋の鍼医が、高貴な奉行の腰の上に全裸で跨がるという奇天烈な光景。しかし二人の瞳の奥には、体面などすでに存在しな
奥座敷の奥、冷たい夜風が障子を揺らす中、二人の男女は夜具の上に向かい合って座っていた。道真の荒く熱い息遣いと、蓮花の静かな心臓の鼓動が、狭い部屋を満たしていた。道真は蓮花の白玉のような鎖骨と豊かな乳房を目の前にしながらも、恐れ多くて触れることもできず、拳を握っては開き、ガタガタと震えていた。部屋いっぱいに漂う洗い清めた肌のほのかな香りと、女の甘い匂いが男の鼻腔をくすぐった。潔癖症で他人の手に触れることすら嫌っていた堅物だったが、今、目の前に広がる女の純潔な体は、目が眩むほどに美しかった。男の涼やかだった目元は、血走りと涙で濡れそぼっていった。「蓮花……」男の声は湿り気を帯び、黒曜石のような瞳には切ない悲しみが満ちていた。「痛むであろう……骨を削るように、痛むはずだ……」道真は震える指先を持ち上げ、蓮花の頬にかかった後れ毛を、そっと耳の裏へと撫で流してやった。武士の手つきとは思えぬほど、限りなく優しく、切ない手つきだった。「生涯、遊郭の敷居すら跨がなかった私が、初めての女であるそなたに、このようなおぞましい苦痛を与えることになるとは……己がたまらなく憎い」「若様も、くだらぬ心配をなさいますね」蓮花は赤くなった顔を隠そうとわざと鼻を鳴らしたが、男の心からの思いやりに目頭がツンと熱くなった。「これも若様が生涯、操を守り抜かれたからではありませんか。無頼漢のように女遊びをなさっていたら、こんな換陽の術の呪いになどかかりませんでしたよ」「この期に及んで、軽口を叩くか……」道真がフッと湿った笑みをこぼした。笑いは長く続かなかった。道真は再び引き締まった蓮花の表情を見て、言葉を呑み込んだ。「怖くないなどとは言わなくてよい」蓮花が顔を上げた。「なら若様も、平気なふりなどなさらないでください。私の問うことには、ちゃんとお答えくださいね」道真が短く頷いた。その刹那、道真の胸元の心臓のあたりから、再び赤黒い炎が閃き、巨根が暴れ狂った。「くっ……!」道真が呻きを呑み込んで腰を折ると、蓮花は迷うことなく道真のうなじを抱き寄せた。「我慢なさらないで、若様」蓮花の赤く湿った唇が、道真の渇ききった唇へと重ね合わされた。んむっ、じゅるり……。冷たく甘い女の唾液が、道真の焼け焦げそうだった舌と喉の奥へと流れ込んだ。道真は蓮花の細い腰を抱きしめながら、女の口
奥座敷の奥、行灯の炎が消えゆく薄暗がりの中で、張り詰めた静寂が流れていた。床に脱ぎ捨てられた蓮花の着物の向こうに、月明かりを吸い込んだ女の白い肢体が眩いばかりに浮かび上がっていた。豊かな乳房と引き締まった腰、そして白い太ももの間からかすかに立ち上る、極陰の冷たい霊気。その純潔で神聖な姿を前に、血の涙を流して喘いでいた久世道真の心臓が、止まりそうなほど激しく跳ねた。「れ、蓮花……そなた、何を……!」道真は張り裂けそうな下腹部の激痛の中にあっても、ガタガタと震える手を伸ばし、床に落ちていた己の羽織を引き寄せて蓮花の身体を覆い隠そうとした。男の白玉のようだった手の甲は血管が破れて血泡で汚れ、唇は血まみれになって激しく震えていた。「ならぬ……着物を着ろ……早く着るのだ……!」「若様、状況をよくお考えなさい」蓮花は道真が差し出した羽織を容赦なく払い退け、男の太ももの間に膝をついて擦り寄った。女の冷たい膝が、道真の煮えたぎる太ももの生肌に触れた瞬間、ジュウと音を立てて白い湯気が立ち上った。氷河と溶岩が正面から衝突したかのような凄まじい気の激突に、道真の背筋が総毛立った。男は目の前がグルグルと回るめまいの中でも、蓮花の白くか細い肌から視線を逸らすことができなかった。武家の規範の中で生涯、罪深いものと見なしてきた女の裸身が、今この瞬間には、己の命を救い出してくれる唯一の神聖な菩薩のように輝いて見えた。「若様の胸に刻まれた、あの腐った斑点をごらんなさい。『血火の呪殺』の魔気は、すでに心臓のすぐそばまで入り込んでおります。手で揉みしだいたり、唇を重ねる接治ごときでは、あの凶暴な火魔をほんのひとときも鎮められませぬ」蓮花の澄んだ揺るぎなき瞳が、道真の血走った目を真っ直ぐに見据えた。「体内に溢れ返るあの恐るべき淫魔の陽気を、私の体の一番深い場所へと丸ごと受け入れ、溶かし去るしかありませぬ。ただ『合治(ごうち)』だけが、若様を生かすことができるのです」「ならぬ……それだけは、断じてならぬ!」道真が血の涙を流しながら首を横に振った。自害をも覚悟した、凄絶な絶叫だった。「私の股間に埋め込まれたこの化け物を見よ! これが本当に、人の体に入るような代物か!」道真は自らの股間を指差し、大粒の涙をポロポロとこぼした。黒鉄のように黒々と変色した魔物は大人の男の腕よりも太く、凶
息が喉元まで詰まった。道真の強靭な握力が、蓮花の首をへし折らんばかりに締め上げていた。男の瞳は血の色に染まって焦点を失い、唇の間からは獣のような唸り声とともに、黒い血泡が垂れ流されていた。「グルルル……引き裂け……殺せ……焼き尽くせ……!」人間の言葉ではなかった。黒魔術の殺気に魂を呑み込まれた、淫魔の咆哮だった。道真の黒々と燃え盛る巨大な魔物が、蓮花の小袖の裾を容赦なく踏み荒らし、太ももの間へとめり込もうとしていた。このままでは蓮花の首がへし折られるか、あるいは化け物のような剛直に下腹部を貫かれて無残に命を落とす、絶体絶命の瞬間。しかし蓮花は暴れる代わりに、震える手を持ち上げ、道真の血に汚れた頬を優しく包み込んだ。「若様……」涙をいっぱいに湛えた蓮花の澄んだ声が、静寂を切り裂いた。「久世道真様……正気を取り戻してくださいまし。私の父の無実を明らかにし、私を守り抜くと誓ってくださった、あの気高い若様はどこへ行かれたのです……!」その切なる呼びかけが、道真の魂の底へと届いたのだろうか。一瞬、殺気にギラついていた道真の血走った瞳が、大きく激しく揺らめいた。「れ……れん……か……?」道真の喉の奥から、絞り出すように掠れた声が漏れ出た。首を締め上げていた男の指先が小刻みに震え、力なくほどけて落ちていった。その一瞬、奇跡のように道真の理性が水面へと浮上したのだ。道真は自らの血まみれの手を見下ろし、生まれたての小鹿のように震えながら声を上げて泣いた。「わ、私が……何という真似を……ごほっ! ぐあああっ!」道真は自らの頭を掻きむしり、畳に額を打ちつけた。男の鼻と唇から、赤黒い血が噴水のように噴き出した。五臓六腑を焼き尽くす黒魔術の火魔が、心臓を丸ごと呑み込もうとしていた。「に、逃げろ……蓮花……頼む……っ!」道真は血の涙を流しながら、蓮花を戸の外へと押し出そうとした。「私がそなたを……殺してしまう……! 獣となって、そなたの体を八つ裂きにしてしまうのだ……早く逃げろ……頼むから、私を見捨ててくれ……っ!」己が激痛に苛まれ死に瀕しているその瞬間すら、ただ蓮花が傷つきはしないかと恐れ、血を吐きながら逃げろと絶叫する男。その凄絶な叫びを耳にしながら、蓮花の目から熱い涙がボロボロとこぼれ落ちた。もはや退く場所など、どこにも残されていなかった。外治で手を
江戸・山の手、久世家の屋敷の奥座敷。部屋の空気が一段と冷え込んだかと思うと、行灯の炎が一斉に青白い光を放ってプルプルと震え出した。「ぐあああっ――ッ!」苦しげに身悶えていた道真の口から、引き裂かれるような断末魔が迸り出た。男は寝床の上を転がり回り、自らの胸元を爪で狂ったように掻きむしった。「わ、若様?! いかがなされたのです!」驚いた蓮花が道真の肩を必死に掴もうとしたが、道真の肌から噴き出す殺人的な高熱に掌が火傷しそうになり、悲鳴を上げて手を引いた。男の全身は、まるで真っ赤に焼けた鉄の塊のように白い湯気を噴き上げていた。道真の白玉のようだった肌は血の色に染まり、額やこめかみには張り裂けんばかりの太い血管が異様に浮き上がってドクンドクンと脈打っていた。「あ、熱い……! 胸が……内臓が焼け焦げていく……っ、ぐあああっ!」道真の顔色は土気色を通り越して灰白色へと変わり、切れ長の瞳は血走るどころか目玉が飛び出さんばかりに充血していた。さらに恐ろしい異変が、男の生肌の上に巻き起こっていた。左の鎖骨の下の古傷のあたりから、腐った血を思わせる黒赤い斑点が、まるで生きた百足のようにうなじと顎の下へ向けて、凄まじい勢いで這い上がっていたのだ。ジュウッ、パチパチッ――!斑点が触れる肌が黒く焦げつき、肉の焼ける異様な悪臭が立ち込めた。かつて名医であった父・江田泰秀が厳重に警告していた宮中最高の禁忌の邪術、人の気血を黒魔術で汚染し、自らの肉を腐らせて死に至らしめる「血火の呪殺」の凄惨な兆候だった。単なる陰陽の乱れではない。命を奪うための純粋な呪詛の猛毒だった。蓮花は斑点が広がる部位を確かめた。以前も熱が上がれば肌が赤くなったが、今の色合いはまるで違っていた。さっきまで眠る顔を拭っていた手拭いが、手のひらの中でぐしゃりと握り潰された。その短い合間に何が変わったのかを見極めねばならなかった。蓮花は道真の名を呼び、瞳の動きを確かめた。それと同時に、道真の羽織と下着の内側で、魔物が制御不能となって暴れ狂い始めた。バキッ、バリリッ――!丈夫な絹の肌着が悲鳴を上げ、粉々に引き裂かれた。露わになった巨根の姿に、蓮花は息を呑んで後ずさりした。昼間までは赤く硬かった代物が、今や黒鉄(くろがね)のように黒々と変色していたのだ。太さは大人の男のふくらはぎほどに肥大化し、青黒い血管