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第5話

작가: ハッピーハンター
佳奈が目を覚ますと、ツンッとする消毒液の匂いが鼻をついた。

「お目覚めになりましたか?」看護師がトレイを持って入ってきた。その口調はどこか呆れている。「あなたの彼氏さん、どうなってるんですか?診断書を取りに来てって3回も呼び出したのに、全然来てくれないんですよ」

佳奈は言葉を発そうとしたが、喉がひどく渇いて痛み、声を出せなかった。

看護師は体温計を彼女の脇に挟みながら、ため息をつく。「それで何してるのかなって思ったら、結局はお隣の病室でかいがいしくお世話してたんですよ。

指をちょっと擦りむいただけの女の人のために、あなたを放ったらかしにするなんて。本当にひどい話ですよ」

「あの人は彼氏じゃありません」

佳奈は、かすれた喉でなんとか声を絞り出した。

看護師はきょとんとしていたが、それ以上は何も言わずに薬を置くと、部屋を出て行った。

病室が再び静かになると、隣の声がやけにはっきりと聞こえてくる。

若葉が甘ったるい声で甘えているようだ。「ねえ、仁。苺が食べたいな。苺のへた、取ってくれる?」

「ああ、しょうがないな」仁の優しい声が聞こえる。「大人しく寝てまっとけよ」

その溺愛ぶりは、かつて自分に向けられていたものと全く同じだった。

若葉が媚びるように笑って言う。「ふふ、やっぱり仁は私に優しいのね。ちゃんと私のこと、想ってくれてるんだもの」

仁の軽い笑い声も聞こえた。

そのかすかな声が、針のように佳奈の耳に突き刺ささる。

彼女はぎゅっと目を閉じた。涙がこめかみを伝って枕に染み込んでゆく。

脇腹の傷からはまだ血が滲み、少し動くだけで引き裂かれそうな痛みが走るし、心は氷水に浸されたみたいに、どんどん冷たく、硬くなって沈んでいった。

佳奈は枕の下に隠したスマホを取り出し、秘密の連絡アプリを開く。

純一からのメッセージが表示された。【作戦が漏れていたようだ。君のお兄さんは敵に場所を変えられてしまった。現在、追跡不能。発見は絶望的】

佳奈は手の震えが止まらず、スマホを落としそうになってしまった。

発見は絶望的。

その言葉が、彼女を支えていた最後の何かを完全に奪い去っていく。

兄は、自分にとってたった一人の家族だったのに。

射撃場で若葉に邪魔されなければ……もし仁が彼女の味方をしなければ、自分は約束の場所に行けた。そうしたら、兄が連れ去られることもなかったのに!

佳奈は布団をはねのけ、傷の激痛もかまわず、裸足で部屋を飛び出した。

隣のわずかに開いていた病室のドアを、佳奈は思い切り蹴り開ける。

「あら!」若葉は驚いたようだったが、すぐに口の端を吊り上げた。「どうしたの?うらやましくて邪魔したくなっちゃったのかしら?」

しかし、佳奈は特に相手にすることもなく、足早にベッドに駆け寄る。

仁が反応するよりも早く、彼女は若葉の腕を掴み、ベッドから引きずり下ろした。

「きゃあ!」若葉は悲鳴を上げた。床に激しく押さえつけられ、腕を背中にねじ上げられた若葉は、痛みで涙を浮かべている。

「仁、助けて!」彼女は泣き叫ぶ。

仁が助けようとしたその瞬間、佳奈が鋭く叫んだ。「来ないで!邪魔するなら……この女がどうなっても、知らないから!」

そして氷のように冷え切った視線で、若葉を睨みつける。「岩崎。私たち、何の因縁もなかったはずでしょ。それなのに、どうしてそこまで私に執着するの?」一拍置いて、低く言い放つ。「覚悟しておいて。必ず代償は払わせるから」

若葉の腕がみるみる腫れ上がったと思った次の瞬間、部屋にゴキッと鈍い音が響いた。

「あああああ――」

悲鳴とともに、彼女の両腕はありえない角度に折れ曲がり、ぐったりと床に垂れる。

そして、佳奈はポケットから小さなUSBメモリを取り出し、若葉の目の前に突きつけた。「これは、あなたが銃を違法に使った証拠。すぐに警察が来るから、覚悟しなさい!」

若葉は一瞬きょとんとしたが、すぐに顔を歪めて笑い出した。

「警察?あなた頭でも打ったの?

この街の警察に、私をどうこうできる人なんていないわよ?

人を的にして遊んだからって、何だって言うの?殺人を犯したって、どうもならないのに。あなたたちなんて私のおもちゃでしかないのよ?ねえ、私を殺すなら今しかないわよ。もし、今日ここで私を殺さなかったら、次はあなたが死ぬ番になるわ!」

その狂ったような姿を目の当たりにして、佳奈は拳を、固く、固く握りしめた。今すぐにでも、この女の顔に叩きつけてやりたい……

必死に理性を保っていた佳奈だったが、若葉の止まらない挑発に、ついに限界を迎える。振り抜かれた拳が風を切り、若葉の顔に叩き込まれようとしたその瞬間、温かい手のひらが、佳奈の拳をがっしりと受け止めた。

仁だった。

「邪魔しないで!」佳奈は目を血走らせながらも、一言一句はっきりと言う。

仁は眉をひそめると、佳奈を強く抱きしめた。

「ここで暴れるな!」

しかし、佳奈には彼の言葉が全く届かない。ただ、その腕から逃れようともがくだけ。

「若葉に手を出すべきじゃなかった」仁は少し間を置いてから、部下に指示を出す。

「おい!こいつを地下の部屋に閉じ込めておけ」その声からは、一切感情が感じられない。

「誰も近づけるなよ!」

松尾家の地下室。極悪非道の悪人を閉じ込めるには、これ以上ないほどお似合いの場所だった。

その場にいたボディーガードたちは、背筋が凍るのを感じた。

「仁!」佳奈は信じられないという顔で仁を見つめる。「放して!あいつを殺してやる!」

しかし、仁に迷いはなかった。彼女の体をそばにいたボディーガードに突き飛ばす。「連れて行け!」
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