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第370話

作者: フカモリ
エントランスの従業員たちは、信行が真琴を強引に引き留め、彼女が助けを求めているのを間違いなく見ていた。だが、信行の鋭い眼光とぶつかるや否や、慌てて目を逸らした。

光雅か、浜野市の随行員を呼んでほしいと声を張り上げても、彼らはまるで耳が聞こえなくなったかのように、真琴の方を一切見ようとしなかった。

まるで、彼女と信行がただの空気であるかのように。

眉根をきつく寄せ、真琴は凄んだ。

「片桐社長。これ以上続けるなら、警察を呼びますよ」

信行は引き下がらない。

「十分でいい。いくつか確かめたいことがあるだけだ」

そう言い捨てるなり、真琴の返事も待たずに彼女の腕を引き、強引に二階の茶室へと連れ込んだ。

茶室は上品な設えだった。給仕が茶を淹れようとするのを取りやめさせて部屋から追い出すと、信行は自らの手で真琴に茶を淹れた。

必死に酔いを醒まそうとしながら、淹れたての茶を真琴に差し出し、彼女の隣に腰を下ろす。

差し出された茶には一切口をつけず、卓に置いたまま、真琴は冷ややかに言った。

「用件があるなら、手短にお願いします」

彼女を見上げる。その瞳には、かつての自分の姿など微塵
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