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第19話

Author: 小林
瑠夏はわけがわからず弘樹を見つめた。なんだか今日の彼は少し様子がおかしい気がする。

「ここには友達がたくさんいるのに、どうして急に引っ越さなきゃいけないの?」

弘樹は少し黙ったあと、悠斗のことはまだ話さないでおこうと決めた。そして、わざと明るく笑ってみせる。

「わかった。引っ越したくないなら、まだしばらくはこの町に住んでいよう」

自分なら瑠夏を守れる、と彼は思った。

花屋にはまだ束ねるべき花がたくさんあった。弘樹も見よう見まねで手伝い、二人は楽しそうに笑いあう。そんな和やかな雰囲気のなか、花屋の外をさっと人影がよぎった。

弘樹は、キャップを目深にかぶり黒い服に身を包んだ男に、冷たい視線を向けた。

深夜、外では木々の影がゆらめいている。悠斗は、明かりのついた窓をじっと見つめ、なかなかその場を離れられずにいた。

数時間前、弘樹と瑠夏が手をつないでマンションに入っていくのを、彼はこの目で見た。もうすぐ夜11時になるというのに、あの男はまだ出てこない。

激しい嫉妬と不安で、悠斗の目は充血していた。足元の石を拾い上げ、手の中で重さを確かめるように弄ぶ。

瑠夏は、本当に遥なのだろうか?

周りの人間はみんな、遥はもう死んだと言う。生きていると頑なに信じているのは、自分だけだった。

この手で彼女を葬ったというのに、それでも死んだという事実を受け入れられなかった。

もし瑠夏に出会わず、彼女と遥の間にあんなにたくさんの共通点を見つけなければ、時が経つにつれて、あの女を忘れられたのかもしれない。

でも、こんなに偶然が重なるものだろうか?

先日、児童養護施設で瑠夏が子供たちに絵を教えていたけど、その絵のタッチも色使いも遥と瓜二つだった。

あのS国銀行の口座の持ち主が落札したダイヤの髪飾りも、ちょうど瑠夏がつけていた。

ここ数日の様々な出来事が、悠斗の確信を強めていく。瑠夏こそが、遥なのだと。

喜びが胸から張り裂けそうで、自分の遥がまだ生きていると、世界中に叫びたいほどだった。

彼女が許してくれて、もう一度やり直せる可能性があるなら、どんな代償だって払うつもりだ。

悠斗がその石を投げつけようとした、ちょうどその時。目の前に大きな人影が立ちはだかった。

逆光のなか、浩は腕時計を外すと、彼の顔面に拳を叩き込んだ。

「いつまで狂った真似を続ける気だ?!

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