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第6話

Penulis: ちびネジ
純佳が再び目を覚ました時、信じられないことに、ベッドの傍らには慎一の姿があった。

「目が覚めたか。気分はどうだ」

静かな声が響く。

桃香は!あの子はどうなったの!?

純佳はそう口に出そうとしたが、喉から空気が漏れるだけで、声が全く出ないことに気がついた。

慎一が重々しい口調で説明する。

「無理に喋るな。喉の粘膜が腫れて声帯を傷つけている。腫れが引くまで声は出ないそうだ」

純佳は慌ててスマートフォンを探し出し、猛スピードで文字を打ち込み、画面を彼に突きつけた。

【桃香はどうなったの!】

その画面を見て、慎一の無機質な顔にようやく変化が現れた。瞳の奥に一瞬だけ申し訳なさそうな色がよぎり、数秒の沈黙の後、口を開いた。

「桃香はまだ集中治療室にいる。医者の話では、今夜が峠だそうだ」

言葉を切り、彼はさらに続けた。

「今回は俺の不注意だった。桃香の世話をしていたシッターはすでにクビにした。あの子は必ず助かる、安心しろ」

取って付けたような後悔の言葉を聞かされ、純佳は桃香が哀れでならなかった。

この男は、ただの一度だって桃香を我が子として慈しんだことなどない。今見せている後悔も、所詮は「父親としての体裁」を取り繕うためのポーズでしかないのだ。

純佳はいたたまれずにシーツを握りしめ、痛む体を押して桃香の様子を見に行こうとした。

折悪く、佑紀子が保温ジャーを手に病室へ入ってきた。純佳が目を覚ましているのを見ると、彼女の顔に一瞬だけ異様な光がよぎったが、すぐにわざとらしい安堵の笑みを浮かべた。

「純佳さん、よかった、無事だったのね。もしあなたに何かあったら、私、自分のこと責め続けちゃうところだったわ……これ、私がじっくり時間をかけて煮込んだ特製の薬膳スープよ。体力回復にすごくいいから、飲んで早く元気になってね」

そう言いながら、蓋を開けて差し出してくる。

瞬く間に、病室にいかにも栄養のありそうな香りが立ち込めた。

純佳は氷のように冷たい視線を向け、顔を背けてその好意を突き返した。そしてドアを指差し、出ていくように促す。

佑紀子はたちまち被害者ぶった顔を作り、目に涙を浮かべて慎一を見つめた。

「慎一、純佳さんにお酒を飲ませたのは私のせいだわ。反省してる。でも、このスープ、いろんな素材を半日以上つきっきりで煮込んで、一生懸命作ったのに……」

慎一は純佳に冷ややかな視線を向け、彼女を庇うように言った。

「佑紀子のせっかくの気遣いだ。少しは大人の対応をしろ。無下にするな」

何がせっかくの気遣いだ!

純佳は冷然とスマートフォンに文字を打ち込み、画面を見せた。

【出て行って!】

慎一の顔色が一変し、何か怒鳴ろうとしたその時、不意に鳴り響いた着信音に遮られた。

「社長、大変です。大奥様が、お寺の参拝中に急に持病の頭痛を起こして倒れられまして……」

慎一は表情を強張らせ、踵を返して病室のドアへと向かいながら電話越しに答えた。

「慌てるな、すぐに向かう」

ドアのところで立ち止まり、不安げに振り返って佑紀子を見た。

相手は優しく微笑んで彼を促す。

「大丈夫よ、純佳さんがいじめたりしないわ」

それを見て、慎一は足早に病室を出て行った。歩きながら部下に次々と連絡を入れ、母親が倒れた現場へと急行する手配を急いでいた。

慎一の足音が廊下の奥へ遠ざかるなり、佑紀子の口元からあの甘ったるい笑みがスッと消え失せた。

純佳は痛む体を押してベッドを降り、桃香のいる集中治療室へ向かおうとドアへ歩み寄る。

佑紀子はすれ違いざまに立ち止まり、純佳を嘲笑うように見下ろして言った。

「桃香のところへ行くつもり?……本当に哀れね。いいわ、そんな可哀想なあんたのために、案内してあげる。ついてきなさい」

そう言って、佑紀子は先に病室を出ると、すぐ横にある低層階の屋上テラスへの扉を押し開けた。

娘の安否を確認したい一心で、純佳が彼女を追って人気のない屋上へ足を踏み入れた。

冷たい風が吹く隔離された屋上の空間で、振り返って純佳を見下ろす佑紀子の顔には、先ほどの可憐さなど微塵もなく、ただ生々しい嫌悪だけがべっとりと張り付いていた。

「本当なら、あんたが妊娠三ヶ月の時に会うはずだったのよ。でも慎一が私を束縛して、あんたがショックを受けるんじゃないかって、ずっと隠してたの。

でもね、彼は知らないの。あの飛行機事故……実は私、彼から逃げたくて、直前でこっそり搭乗便を変更していたのよ。そうしたら、本来私が乗るはずだった飛行機が墜落した。だからそれを利用して、事故に巻き込まれたふりをして彼の前から姿を消したの。

なのに、よりによってあのタイミングであんたが早川家に嫁いできた。しかも、私と同じように両親を亡くして、他人の家に引き取られたような女が。それなのに、あんたは早川家でみんなに褒め称えられて、チヤホヤされてる。

納得いかないわ!どうして私だけが孤児だって後ろ指を指されて、厄介者だって罵られなきゃならないの。こんなの不公平よ!!」

彼女は感情を高ぶらせて振り向いた。純佳が驚愕しているのを見ても少しも動じず、言葉を続ける。

「だから、もう一度慎一の元へ戻ってきたの。私と同じように、誰からも見下される苦痛を味わせてやるためにね……慎一があんたのためにわざわざ作った家訓、どうだった?毎日蔵に閉じ込められて、陰で無能だって罵られる気分は最高でしょ?」

佑紀子は毒々しい目を向けながら、思い通りになったとばかりに得意げな笑みを浮かべた。

憎んでいる女が早川家で苦しめられ、陰口を叩かれていると聞くたび、彼女の胸はすっとした。

純佳は急いでスマートフォンに打ち込んだ。

【頭がおかしいんじゃないの!?早川家に逆らえない腹いせを私にぶつけるなんて、一体どういうつもり!】

「どういうつもり?嫉妬に決まってるじゃない。私と同じ苦しみを味わえばいいのよ。もう早川家であんたを褒める人はいない。あんたが早川家で築き上げたものすべてを奪い取ってやるわ。あんたが宝物のように大事にしている娘も含めてね!」

隠そうともしないその悪意に、純佳は思わず眉をひそめ、さらに文字を打った。

【狂ってるわ!夢でも見ているの!】

「狂ってる?まだまだこれからよ。もっと狂ったことを見せてあげようか?」

佑紀子は屋上の手すり越しに下を見下ろして、ふふっと嗤った。

嫌な予感がして、純佳は急いで文字を打ち込もうとした。しかし、文字を打ち終える前に、佑紀子が底冷えするような声でこう言い残した。

「慎一に、心の底からあんたを憎ませてあげる」

そう言い残すや否や、彼女は自ら手すりに背を向け、虚空へと倒れ込んだ。

重力に引かれ、糸の切れた人形のように、地面へと真っ逆さまに墜落していく。

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