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第3話

作者: 柳雲間
私がシュレッダーの電源を抜いたとき、拓也はすでにスマホを握りしめてゲストルームへ向かっていた。

ドアがきちんと閉まっていなかったせいで、彼の声が漏れ聞こえてきた。「可奈、変なこと書くなよ。祐那が見たら余計なことを考えるだろう」

翌日は、私たちの交際7周年記念日だった。

拓也は朝出かける前、レストランの予約カードをテーブルの上に置いていった。「夜7時、展望レストランだ。昨日までの埋め合わせに、ちゃんとしたデートをしよう。昨日のことは水に流そう」

そのカードを見つめながら、私はふと、心が揺らいでしまう自分が滑稽に思えた。

夜7時、私は彼のお気に入りの白いワンピースを着て、レストランの窓際の席で彼を待った。

7時半、電話が鳴った。

拓也の声の背後は騒がしく、医療機器の電子音や足音が混じっていた。「可奈が急に動悸を起こして、俺は今病院にいる。飯は先に食っておけ、待たなくていい」

私はフォークを握りしめたまま尋ねた。「……重いの?」

拓也は一瞬黙り、それから声を冷たくした。「今それを聞くのは、あいつを心配してるのか、それとも俺がまたお前の記念日をすっぽかしたのが不満なのか、どっちだ」

私はそれ以上何も言わず、電話を切った。そして、一口も手をつけていない料理を持ち帰り用に包んでもらい、病院へ向かった。

病室のドアは半分開いていた。

可奈はすでに目を覚まし、枕にもたれていた。その顔色は、私が思ったよりもずっと血色が良かった。

拓也はベッドの傍らに座り、手にビロード張りの小箱を持っていた。

中から取り出したのは、留め具の裏側に「KN」とイニシャルが刻まれたルビーのブレスレットだった。

それは可奈の名前の頭文字だった。

1ヶ月前、拓也は私を連れて特注しに行き、ルビーは私の肌によく映えるから、結婚式の前日にプレゼントすると言っていた。

それが今、可奈の手首にはめられている。拓也は低い声で言った。「やっぱりこの色は、お前のほうが似合うな。手首が白いから、誰よりも映える」

私はドアの外に立ち尽くしていた。手の中の持ち帰り箱が、ゆっくりと冷めていく。

廊下の向こうから母がやって来て、私を見るなり顔を険しくした。

「可奈は生死の境をさまよったばかりだっていうのに、そんなに着飾って誰に見せるつもり?頭の中は自分の記念日のことばっかり、本当に冷たい子ね」

父も眉をひそめた。「可奈は病人なんだ、あまり刺激するな」

拓也も病室から出てきた。

彼の視線が私の何も着けていない手首に落ちた。ようやく何かを思い出したかのように言った。「ブレスレットは、また今度別のを買ってやる」

私が黙っているのを見て、彼は眉をひそめた。「祐那、意固地になるな。ブレスレット一つくらいで」

私は彼の顔を見つめた。この7年間、私は彼のことを、ただ情に厚く、病弱な姉の世話を焼いてくれているだけだと思っていた。まさか本当にここまで私をないがしろにするとは思ってもみなかった。

どうやら、私が勝手に買い被っていただけだったようだ。

私はただ静かに頷いた。「もういいわ」

新居に戻り、私は引き出しからあのモクレン材の絵筆を取り出した。

その下には分厚い思い出のアルバムが重ねられていて、7年分の映画の半券や絵葉書、切符、それに彼が書いてくれた何通かのラブレターが貼られていた。

私はそれらを黒いゴミ袋に詰め込み、彼からもらった贈り物とともに、階下へ運んで行った。

ゴミストッカーの蓋を開けると、すえたような臭いが鼻を突いた。

私は迷わなかった。

袋が落ちて、鈍い音が響いた。

そのときスマホが震えた。プランナーから、最終リハーサルの流れが送られてきていた。

添付には会場レイアウトもあり、受付の隣に新しく展示パネルが一つ増えていた。

パネルの見出しには、【芳賀可奈 闘病仲間からの祝福メッセージ】と書かれていた。

スマホを握りしめながら、私はふと、可奈が抱えていたあの招待状の束を思い出した。

彼女は、自分の友人たちを私の結婚式に連れてくるつもりだったのだ。

翌日ホテルへ行くと、ウェディングプランナーがちょうど作業員に展示パネルを運ばせているところだった。

パネルには可奈の闘病仲間たちの写真とお祝いの言葉がびっしりと貼られ、その真ん中には、彼女がウェディングドレス姿で振り返っているあの写真が飾られていた。

プランナーは私が来たのに気づき、気まずそうに言った。「芳賀様……近藤様が、これはサプライズ企画だと。昨夜急遽追加されたそうです」

私はその写真を指差した。「受付用の写真は、どこ?」

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