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第2話

Auteur: 柳雲間
拓也はその画面を消し、まるで何事もなかったかのように、落ち着いた声で言った。「可奈は冗談好きなんだ。あいつのちょっとした悪ふざけをいちいち気にするな」

私は「差し入れ」をゴミ箱に全部捨てた。

拓也の顔が険しくなった。「お前は食べ物にまで俺に八つ当たりするのか」

私は答えなかった。ちょうどそのとき、玄関のチャイムが鳴った。

プランナーの若い女性が招待状の箱を2つ抱えて入ってきて、にこやかに言った。

「芳賀様、ご自身でお描きになったモクレンの招待状が届きましたよ。うちの人みんな、とても綺麗に仕上がっていると申しておりました」

私はしゃがんで箱を開けた。紙面に指先が触れた瞬間、動きが止まった。

招待状が半分足りない。

どの招待状にも、封の部分に私が描いたモクレンの小枝の絵がある。花びらに透かし模様をあしらった図案で、2ヶ月以上かけて何度も描き直したものだった。

私は顔を上げ、拓也を見た。「残りは?」

拓也はカフスボタンを緩めながら、当然のように言った。「可奈が気に入ったみたいだったから、半分やったんだ。闘病仲間の名前を書いて配らせてやれば、それも賑やかでいいだろう」

「これは私の結婚式の招待状よ」

拓也は眉をひそめた。「お前は元々友達が多くないだろう。残りで十分だ。足りなければWeb招待状でも同じことだ」

ドアの向こうから可奈が顔を覗かせた。手にはすでに書き込んだ招待状を数枚持っている。「祐那、拓也を責めないで。私が羨ましがりすぎたのよ。私は一生、招待状を配る機会なんてないかもしれないから」

拓也は彼女の手から招待状を受け取り、低い声でなだめた。「お前は気にせず書いてればいい。あいつは怒りっぽいだけで、すぐ機嫌を直すから」

プランナーはその場で固まり、苦笑いを浮かべたまま反応に困っていた。

私は残った招待状を1枚ずつきれいに揃えながら、彼女に尋ねた。「式のリハーサル、今日の午後よね?」

彼女は慌てて頷いた。「はい、全て準備済みです。近藤様が、まだ確認していただきたい流れがひとつあると仰っていました」

午後、拓也は車で可奈と一緒に両親を迎えに行き、私はひとりでタクシーに乗ってホテルへ向かった。

ホテルに着いて、ようやくその「確認事項」が何なのかを知った。

チャペルには白いバラが敷き詰められ、司会者が進行表を手に、ためらいがちに私を見た。「芳賀様、近藤様は、挙式前にまず芳賀可奈様とバージンロードを歩いていただき、そのあとで芳賀様にご入場いただきたいとのことです。この順番でよろしいでしょうか」

私は拓也を見た。

拓也は淡々と説明した。「可奈は体が弱くて、長く立ってると息が上がるんだ。俺が車椅子を押して歩かせてやれば、あいつにも結婚式の雰囲気を味わわせてやれるだろう」

「それで、私は?」

拓也が目を上げた。

「お前はその後に出てくればいい。別に支障はないだろう。あいつにはこの一度きりの機会しかないが、お前にはこの先、いくらでも機会があるんだから」

傍にいたウェディングプランナーが小声で言った。「ですが、入場は普通、新婦様のお父様がエスコートされるものです。先にお姉様が入場されると、少し……」

母がその言葉を遮った。「少し何なの?うちの可奈は小さい頃からずっと苦労してきたのよ。妹の結婚式にあやかって夢を叶えるくらい、何が悪いの?」

父も頷いた。「祐那、そんなに心の狭いこと言うな。可奈は別にお前の晴れ舞台を奪おうってわけじゃないんだから」

可奈は目を伏せ、目の縁を少し赤くした。「祐那、やっぱりやめておこうか。誤解されるのが怖いもの」

拓也が彼女のドレスの裾を整えてやりながら言った。「大丈夫だ、誰かが誤解したら俺が説明する。お前はただ綺麗に着飾っていればいい」

私は照明の届かない片隅に立ちながら、ふと、もう争う気になれないことに気づいた。

争って手に入れたところで、どうせまたすぐに奪われるのだ。

司会者が進行表を私の前に差し出した。「芳賀様、こちらにご署名いただけますか」

私はペンを受け取ったが、サインはせず、ただその進行表を折りたたんでバッグにしまった。

夜、拓也はゲストルームへ行った。

可奈は眠りが浅く、最近は結婚式前の緊張を口実に、私たちの新居に泊まり込んでいた。

拓也はドア越しに、彼女が眠りにつくまで優しく語りかけていた。声は驚くほど優しく抑えられている。「怖がるな、式の日はずっとお前のそばにいるから」

私はリビングに座り、モルディブ行きの新婚旅行の航空券をキャンセルし、代わりに7日後に安川市へ向かう新幹線の切符を買い直した。

予約完了の通知が届いたちょうどそのとき、ゲストルームから可奈のやわらかな笑い声が漏れ聞こえてきた。

私はシュレッダーを起動し、残った半箱分の招待状を一枚ずつ差し込んでいった。

拓也がドアを開けて出てきて、床一面に散らばった紙屑を見た瞬間、顔色が変わった。「祐那、お前、正気か!」

私は最後の1枚をシュレッダーに押し込みながら、静かに彼を見返した。

拓也が口を開きかけたとき、またスマホが光った。

可奈から写真が届いていた。

写真には、受付用の写真の裏に「あなたの花嫁」という文字が書き添えられ、赤いハートマークまで描かれていた。

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