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第4話

Author: 局所宇宙
「お母さん、お母さんお願いしますっ、電話に出てください!もうととを迎えに来なくていい、家に連れて帰らなくていい、ただ電話に出て一言話してくれるだけでいいですから!」

「お、奥様……やはり……」

私の泣き叫ぶような声と田中のただならぬ様子に、母がわずかに動揺したのが、息遣いで分かった。長い間を置いて、観念したようにゆっくりと手が伸びてくる。

あと少しで届くというその瞬間、絵梨子が現れた。後ろには、満面の笑みを浮かべた父と聖司を連れて。

「お母さん、早く来て!家族写真を撮るの!」

絵梨子は嬉しそうに手を振り、弾むような声で呼んだ。

母がためらった。

「奈緒子が電話してるから、先に出てあげないと……みんなは少しだけ待って……」

絵梨子の目が、みるみるうちに赤く潤んだ。ひどく傷ついたような目で三人を見回してから、くるりと背を向けて泣きながら走り去っていく。

聖司がすぐさまその後を追った。

父の顔色がさっと変わった。田中から携帯をひったくるように奪い取ると、力任せに床に叩きつけた。

「奈緒子のやつ、わざとだに決まってる!今日が絵梨子の誕生日だって分かってて、こんな時にわざと面倒を起こしやがって!

お前もお前だ、またあの子の安い芝居に乗りやがって!長年、絵梨子が奈緒子のせいでどれほど辛い思いをしたか、忘れたのか!」

母が弱々しく反論した。

「忘れてないわよ。でも……でも今日は、奈緒子の誕生日でもあるの……」

父は忌々しそうに顔を背けた。

「別に今日死ぬわけじゃあるまいし、来年にでもケーキを買ってやればいいだろう。いいから、早く絵梨子のところへ行け。あの子を待たせるな」

母は小さくため息をつき、高いヒールの先で容赦なく携帯の画面を踏み砕いてから、父の後を追って部屋を出ていった。

薄暗い監禁部屋に、もうすがりつくような泣き声は響かなかった。

ただ犯人だけが、心の底から気の毒そうに私を見下ろしていた。

「一体何がしたかったんだ?結末なんてとっくに分かってただろうに、なんで三度も四度も惨めにあがき続けた?

冥途の土産に正直に言うとな、俺を雇ったのはお前の大切な妹だ。しかも手付金は、妹がその場でお前の親に借りた金だ」

私は何も言わなかった。ただ黙って身をかがめ、震えるととの頬にそっと口づけをした。

「縛りを解いてもらえますか。遺言を送りたいんです」

犯人は少し驚いた顔をして、無言のままうなずいた。

私は自分の携帯を手に取り、家族のグループチャットにふたつのメッセージを送った。

全身血まみれになった私の写真、一枚。

そして、残りの命を振り絞るような、精一杯の思いを込めた短い言葉。

【本当に死ぬんです。来世では、どうか私を連れて帰らないでください】

メッセージを送信すると、私はととに向かってそっと、この世で一番優しい微笑みを向けた。

そして――残る全ての力を振り絞り、犯人に体当たりして地面に押し倒した。

「とと、逃げて!早く、逃げてッ!」

「てめえ、やりやがったな!」

「ぷつ……」

鋭いナイフが下腹部に深々と刺さり、乱暴に引き抜かれた。何度も、何度も。

痛みはもう、少しも感じなかった。ただ力の限り、犯人の体にすがりつき、執念で組み付いていた。

「とと、逃げて!」

息子はまるで瞬時に大人になったかのように、血の滲むほど唇を噛みしめて、外へ向かって全力で走り出した。

小さな足が、冷たい床に不揃いな赤い足跡を残していく。

犯人が怒鳴り声を上げながら追おうとした。私は死に物狂いでその足にしがみついた。

男は苛立ち交じりに冷ややかに笑い、向き直って、私の傷口めがけて何度も容赦なく蹴りを入れた。

下腹部から、生温かい血がどっと溢れ出した。

でも彼は知らないのだ。死に際には、人はもう痛みなど感じなくなるということを。

意識が完全に真っ暗闇へと遠ざかる直前、かつての足の悪い男の言葉が、また頭の中にぼんやりと浮かんだ。

「トメ、諦めろ。これがお前の運命だ」

あの男は間違っていた。

私はまた、自分で運命を変えてみせた。

ととは、きっと生き延びられる。

でも、あの男は正しくもあった。

足りない福は、やはり最後まで戻ってこなかったのだ。

一方その頃、華やかなパーティー会場では、両親と聖司が絵梨子を囲み、口々に優しい言葉をかけてご機嫌を取っていた。

父のポケットの中で、携帯が二回震えた。

彼は面倒くさそうに携帯を取り出した。

「どうせまた奈緒子だ。絵梨子、ちょっと待ってなさい。お父さんが代わりにきつく怒鳴ってやるから……」

言葉が、喉の奥で不自然に詰まった。

震える手で画面の写真を拡大すると、彼の頬の筋肉が小刻みに痙攣し始めた。

母が不思議そうに横へ来て画面を覗き込み、空気を引き裂くような悲鳴を上げた。

同時刻、聖司の携帯にも見知らぬ番号から着信が入った。

「もしもし、荻野聖司さんでいらっしゃいますか?こちら警察署です。血まみれの小さなお子さんを保護しまして――」

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