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第1354話

Penulis: 夏目八月
入城後、別の商隊が到着したため、山田はそちらの検査に向かった。問題がないことを確認して通行を許可する。

ふと振り返ると、商隊が先ほどの数人と連れ立って歩いているのが目に入った。その中の一つの後ろ姿が妙に馴染み深い——万華宗のあの師叔に似ている。

確か皆無幹心という名だったか。だが後ろ姿だけの話で、顔つきは……記憶を辿ってみると、全く似ていない。まるで別人だった。

それでもこの商隊には注意が必要だ。山田は数名に尾行を命じ、異常がないか見張ることにした。

半時間ほど経って報告が入る。彼らは東蘭通りの屋敷に入ったという。あの一帯は権門勢家の邸宅が立ち並ぶ場所で、富商といえどもいかに財があろうと、容易には手に入らない土地だった。

山田が調べさせたところ、彼らが入った屋敷はかつての異姓王の邸で、長らく空き家となり、住人もとうに他所へ移り住んだと聞く。

何かあるような気がするのだが、考えを巡らせても頭の中は空っぽで、何も浮かんでこない。

最近の疲労が祟っているのだろう。日々こうした調べ物ばかりで、頭が糸のように絡まり、あらゆる人の情報を詰め込みすぎて回らなくなっている。

「あの邸は湛輝親王邸と隣り合わせです」

部下の一言に、山田の瞳が鋭く細められた。「監視を続けろ。いや、直接出向いて詮索してみろ」

上原殿の言葉——湛輝親王邸に関わるものは何であれ注意を怠るなと。

夜になって調査結果が報告された。確かにあの異姓王の後裔で、世襲王爵を失ってからは各地で商いに従事し、昨今の戦乱を避けて一時的に都へ戻ってきたのだという。

山田は彼らの商隊の積み荷を調べた時のことを思い出した。絹織物や宝石類ばかりで、身の回りの品を持参して都に避難してきたのだろう。

小さくため息をつく。都の外は戦乱に明け暮れ、この都にしても平穏とは言い難い。ただ、外の者には知れていないだけのことだ。

大した重要性もない件なので、山田は上原さくらに報告しなかった。

一方、菅原親王邸では荷車から荷物が降ろされていた。宝石や絹織物の山の下には隠し箱があり、どの箱にも仕込まれている。中に潜ませてあるのは、すべて彼らの武器だった。

長らく人の手が入らなかった邸内は雑草が生い茂り、家具には埃が山と積もっている。

彼らは変装を解かずにいた。入城時の扮装は山田を欺くためではなく、寧世王の手の者から身を隠
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