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第1297話

Author: かんもく
彼の言葉に、とわこは一瞬だけ動きを止めた。

やはり当たっていた。

「やっぱり真帆さんに言われて、私を追い出しに来たんだね。もうすぐ昼食会が始まるのに、私にご飯を一口も食べさせないつもり?」彼女の声は冷え切っていた。「昼食を食べてから行くわ」

「なぜその食事にこだわる」奏が問い返す。

その目と声が告げていた。今すぐ消えろと。

「お腹が空いたの。食べてから帰りたいだけ」とわこは指を握りしめ、頑なに言う。「私がどうしても食べるって言ったら、力づくで追い出すつもり?」

たしかに彼女は空腹だった。だが、絶対にこの船上で食べなきゃいけないわけじゃない。

ただ、飲み込めないものがある。

彼は彼女を抱いておきながら、真帆の夫として振る舞っている。

記憶を失っただけで、人格が変わったわけじゃない。なのにどうして、こうなるの。

昔だって直美がそばにいたのに、あの時はこんな泥沼みたいな関係にはならなかった。

本当に環境は人を変えるのか。

いや、奏はずっと前から彼らを知っていた。じゃあ、彼は昔からこういう人だったのか。

胸の中も、頭の中も、ぐちゃぐちゃに乱れていく。

「とわこ、昼食会に君の席はない」奏の声は冷たかった。「船を降りたら、好きな物を食べればいい」

「私は帰らない」彼女は眉を寄せ、真正面から言い返す。「どうするの、私を海に投げ落とす?」

奏のこめかみの血管が浮き、目の底には凍るような光が走る。

彼の忍耐が急速に削られていくのを、とわこは感じた。

もしかしたら、本当に彼はやるかもしれない。

今の彼は高橋家の婿。そして高橋家の親族は全員、この船にいる。

元妻が居座り、妻を怒らせたなら、彼は行動で示さなければならない。そうしなければ高橋家に立場がない。

そう思った次の瞬間、とわこの身体が宙に浮いた。

奏が彼女を抱え上げた。

叫ぶ間もなく、彼は無情に腕を離した。とわこの身体は小石のように、海へと落ちていく。

水面を叩いた大きな音。白い飛沫。

絶望と痛みが、一気に身体中を飲み込んだ。

もし腕で押されて出口から降ろされただけなら、ここまで心は壊れなかっただろう。

哀しみの極みは、心が死ぬこと。彼女の心は完全に折れた。

海に沈んでいく中、とわこの身体は魔法がかかったように動かない。

泳げるはずなのに、浮かぶ気力がない。

極度の失望は、
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Comments (2)
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ウサコッツ
とわこ警察に被害届出して こいつの過去の人殺しも告発しましょう
goodnovel comment avatar
ウサコッツ
奏クソすぎ これがこいつの本性だよ 人を海に投げ込んで 人殺しは所詮人殺し変わらない
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