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第150話:借りた車

Penulis: 花柳響
last update Tanggal publikasi: 2026-03-09 06:01:36
 胸の奥で、張り詰めていた糸が少しだけ緩むのを感じた。

「乗って。助手席、倒すから」

 千隼を助手席側に回り込ませ、ドアを開ける。

 シートを限界まで後ろに倒し、彼を押し込むようにして座らせた。

 巨体が狭いシートに沈み込むと、古いスプリングがギイッと悲鳴を上げる。千隼はそのまま、力なく窓ガラスに頭を預けた。

 急いで運転席に回り込み、泥だらけの軍手を外してキーを回す。

 キュルキュルという頼りないセルの音の後、車体全体を激しく揺らすような振動とともに、古いエンジンが目を覚ました。

 燃料メーターの針は、半分より少し下を指している。

 遠くへ逃げるには十分だ。

 私はシフトレバーをドライブに入れ、アクセルを踏み込んだ。

 タイヤが泥を跳ね上げ、軽バンは舗装された県道へと躍り出た。

 ルームミラーには、遠ざかっていく果樹園と、私たちが転がり出てきた暗い森の輪郭が映っている。

 パトカーの赤色灯も、追手の黒いセダンも見えない。

 フロントガラスに、再び細かい水滴が当たり始めた。

 ワイパーのスイッチを入れると、劣化したゴムがガラスを擦るギュガッ、ギュガッという不
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